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株式会社 Jコスト研究所

J-Cost Research Center 代表:田中正知 元東京大学大学院経済学研究科MMRC 特任研究員 ものつくり大学 名誉教授 元トヨタ自動車物流管理部長

連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムを月に一度の頻度で更新していきます。

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季節のご挨拶NEW 2017年8月1日更新

『現地現物』の私的『原体験』

今回は『現地現物』の私が経験した『原体験』をお話しします。

今年は2017年、私がトヨタに入社したのが1967年ですので正に50年過ぎたことになりますが、トヨタで過ごした33年間、ものつくり大学での7年間、その後コンサル会社を興しての10年間の活動を支えてくれた一つの柱は、今からお話しします『現地現物』『原体験』によるものでした。

『原体験』その1
入社教育後行われた2ヶ月間の『現場応援』

新入社員教育でも2週間×4職場の『現場実習』がありましたが、それはあくまでも現場作業の体験が狙いで、作業量は1人工分の一部に過ぎませんでした。

しかし、『現場応援』は1人工としてカウントされた要員ですから、その本質は全く違っていて、一刻も早く一人前にして仕事をしてもらわなければなりません。それは正に『期間工』として採用された人がトヨタの現場でどう扱われて、どう一人前に育てられるかの『体験コース』でもあったわけです。この時の体験が、私のライン作業に対す考え方の基礎になりました。

その時に学んだことの幾つかを紹介しましょう。

  1. 『コンベア作業』は下りのエスカレーターで2階に上がろうとしているようなもので、昇っても、昇っても、階段は降りてくる繰り返しで、変化が欲しくなります。
    部品箱が空になり、入れ替えるのが楽しみになります。
    単一車種生産より『多車種混流生産』の方が変化があって楽しいのです。
  2. 部品とボデーの精度が合わず、調整しながら取り付けなければならない時、リズムが乱されるので腹が立ちます。
  3. 作業の中に課題を見つけ、工夫しながら作業をするとゲームのようになり楽しくなります。『KAIZEN』の意味が分かってきます。
  4. 『難しい作業』ほど、やり甲斐が出て来るし、来るのが待ち遠しくなるります。
    他人の出来ない作業が出来る事が何よりのプライドになります。
  5. SPS(部品セット供給)は自由が奪われるので、『ありがた迷惑』、時間をもらって自分でPickingした方が楽しいし、作業姿勢の変化が付けられて身体に優しい。
  6. 作業中にLeaderが廻ってきて声を掛けてくれるのが嬉しかったし、気分転換してこいと言って、5分間ぐらいずつ1日数回作業を代わってくれるのが特に嬉しい。
  7. 締め付け工具の操作に慣れて、ベテランと遜色ない速さで作業が出来るようになった事や、締め付け音を聞いて正否が判別できるようになった事が大きな財産となりました。
    これらが身についたお陰で、私自身が設計と作業性について談判できるようになりましたし、現場の仲間として受け入れられるようもなりました。

私のこの経験から、工科系大学出身者を1人前の技術者に育てるためには、ある期間を限って『一工員として現場体験させること』をお薦めします。

『原体験』その2
『管理能力向上プログラム』の代筆経験

当時のトヨタを社内体制から見ると、1965年デミング賞、1970年デミング賞実施賞を受け、強化を図りましたが、約10年経過した1979年には、受賞当時の部課長が定年を迎え、『管理能力の劣化』が懸念されるようになりました。

その一方でトヨタを取り巻く環境は、
1970年まで1ドル360円でしたが、1971年のニクソンショックを経て1978年には1ドル176円に急騰してしまっていました。

1973年に起きた第1次石油ショックで原油価格は約20倍にも高騰し、その後下がってきたものの1979年には第2次石油ショックが起きます。又1980年からは本格的な排気ガス規制も始まる・・・という極めて厳しい情勢を迎えていました。

これに対処すべく、1979年1月から部次長を対象として『管理能力向上プログラム』が開始されました。

具体的には『工場長方針』を受けて定めた『各部長方針』の中の最重点項目を取り上げ、その具体的な『展開状況』『進捗状況』『A3用紙』1枚に纏め、8分間で理路整然と分かり易く『役員』に説明せよ・・・というものでした。

上司であるM部長は当時係長であった私にこれをマル投げしてくれました。

字が上手な部下と2人で苦心惨憺して手書きで完成させ、レクチャーして発表会場に送り込みました。発表の場でM部長が受けた『御指導』は増幅してお叱りの言葉としてM部長から告げられ『出来の悪い部下を持つと苦労する』と嫌みまで言われましたが、係長の分際で部長教育をして頂いた事は、私にとっては大変貴重な体験でした。

『現場応援』『管理能力向上プログラム』『原体験』『現地現物』即ち『現場』に出掛け『現物』を観察し、何故?何故?・・・としつこく追求し『真因』を探り当て対策するという『行動規範』を作る基になったと考えています。

改善のお手伝いをしている中国企業の話

ここからは毎月1週間ほど改善のお手伝いをしている中国企業の話です。

現場は最新の設備が設置してあり、欧米Makerの基幹システムが導入され、Officeでは事務職員がDisplayとKeyboardを前に黙々と働いていました。ところが現場には在庫の山があり、一方では欠品があり、とても有名な基幹システムの成果とは思えないので、得意の何故?何故?を中国人にぶつけました。

その結果、驚くべき事に、誰も基幹システムのLogicを知らず、部品が納入されてもその日のうちに入力すれば良いと考え、帰り間際に纏めて入力していました。Supplierへの納入指示は、設計変更があって生産計画から全て再計算して手入力する製品群があり、2~3日遅れて発注している部品もありました。

中には経営者の親戚だと言って、Keyboardもろくに打てないような人がおり、仕事が遅いどころか、遅れても平気で帰ってしまう始末・・・・でした。

ところで、皆さまの会社は上記の中国の例を他山の石としてご確認をお勧めします。

8月と言えば、本年度の新入社員が入社教育を終え職場配属になる時期でもあります。

製造現場に作業員として配属になる場合の職場教育は、適性検査や、工具取扱の基礎訓練、作業訓練、作業要領書による『やらねばならない事』『やってはならない事』等を叩き込まれて仕事に就きます。

私の知るかぎり、製造工場ではあるレベルで実施されています。

Desktop PC

その一方で、殆どの大卒者は事務所にいて、DisplayとKeyboardを相手にしての作業になりますが、御社の大卒新入社員の場合はどんな基礎教育がなされるのでしょうか。

Keyboard操作の基礎訓練は・・・、Computer Literacy はどう把握していますか?基幹システムのLogicは教え込んでいますか・・・・

Displayに表示されているデータは何処でどのようにして計測し、どのようにして入力された、いつのデーターなのでしょうか?

新入社教育のみならず、現在各部書でDisplayとKeyboardでやっている仕事の総点検と、業務分掌の見直しをお薦めします。

特にものづくりの基本中に基本『生産計画』はどのような基本データーをもとに、誰が、どのようなLogicで立案して、どんな手続きで決定され、どのような速さで展開しているのか?

幾つかの会社で調査しましたが、多くはノンキャリ社員の勘でやられていました。

2017年8月1日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知