株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center

連載コラム『Jコスト改革の考え方』目次

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

ビジネス情報サイトJBpressにおいて、2008年から2013年までの間に合計104回のコラム 『本流トヨタ方式』 を連載していました。

現在連載中のコラム 『Jコスト改革の考え方』と併せて読んで頂くと、より深くJコストの考え方がご理解頂けるかと思います。是非、下記のリンクにアクセスしてみて下さい。

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

過去の所信表明

2018年4月

トヨタ式の『石の上にも3年』という考え方

毎年4月になると、希望に胸膨らませた新入社員が入社しますし、ベテラン社員も異動があります。この時上司や先輩から 『石の上にも3年』という言葉が掛けられます。多くの場合は『石の上のような堅くて冷たい場所でも、3年も辛抱すれば暖まり、居心地が良くなると言うから、ここの職場で多少気に入らないことがあっても、逆らわず、先輩のいう事を聞いて職場に溶け込みなさい・・・・』と言う意味に使われています。

50年前、トヨタに入社したときの先輩から指導は、真逆の意味でした。

「個人の基本的人権は侵すことお出来ない永久の権利として憲法で保障されているが、 民間会社は社会に貢献し続けなければ存在意味を持たない。組織はとかく易きに流れる。それ故、公正なルールのもと、ライバルと切磋琢磨することで、共に社会に貢献する存在であり続けられるのだ・・・・」

だから「進歩し続ける社会の中で、 半歩でも先を行かねば組織の存在価値はない・・・」と教えられ、現場実習ではトヨタ生産方式の『自働化』とは、「異常があったらラインを停めて直すこと・・・」更に進んで「異常を発見しやすくすること・・見える化」の実態を叩き込まれました。

この文脈で 「石の上にも3年」を解釈すると、「新しい職場に来れば、新しい発見がある。良いことだったらそれを受入、おかしいと思ったら納得できるまで何故?ナゼ?を追求せよ!」「朱に交われば赤くなる、の言葉のように、 時間とともにおかしいと感じなくなってしまう。」 というモノになります。

実際に入社教育で、「今のやり方のままで行くのであれば、高校卒を採用し、4年間会社の実務をしっかり教え込んだ方がスキルの高い人材に育つし、そう言う人財も採用している。会社の外で4年間過ごした大卒生を採用したのは、この会社を客観的に見て、より良い方向に軌道修正していく人財として採用したのだ・・・・」と言われました。

これと対になる言葉で 「3年したらサボれ」と先輩から指導を受けました。

その真意は、「赴任して、その職場の抱えている問題、成すべき課題がハッキリ見えるのは精々2年間だ! 見える2年間でその仕事を片付けよ!3年目からはその仕事は部下に任せて(部下に育成に重きを置く)、自分はもう一つ上の仕事(上司の補佐)に取りかかれ!」というモノでした。

1980年代豊田章一郎社長は 「勇気(College)!創造(Creation)!挑戦(Challenge)!」を掲げ、

1990年代奥田碩社長は 「トヨタの敵は(昨日の)トヨタ」「変わらない奴が一番悪い!」を掲げていました。

トヨタ在籍中は歴代の社長は社員一人一人が、自分の感性で自分のまわりを見直しておかしいと思ったら行動を起こせと呼びかけているのです。

この「変える」とか「挑戦」と言うことをトヨタ生産方式の中の『改善』と言う手法で説明しましょう。

先ず今やりかたはどうなって居るのか、しっかりと見直しことから始めます。調べてみると、現場だけでなく事務所の作業でも、人によってやり方はまちまちですし、同じ人をとっても、その時の気分で変わってきます。こんな状態ではその「出来映え」も、「所要時間」も出たとこ勝負で、とてもお金を貰ってやっているプロの仕事とは言え無いような現場にも出くわすことがあります。その中で一番良いと思われる作業方法を選び出し、それを『今のやり方』として固定します。

現状のやり方の中で、一番マシなものを選び、これをありのままを表したものとして『表準(おもて標準)作業』と言います。このやり方がベースになります。

この『表標準』をやり続けながら、更にやり易く、確実に仕上がるように新しい作業方法に挑戦して行くことを『改善』とか『変える』と言っているのです。

さて、新しい会社、新しい職場に来られて皆さま、 『石の上にも3年』と言う言葉をどう受け止めますか?

ミイラ取りがミイラになら無いように、御活躍を期待します。

2018年4月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知

2018年3月

所長 季節のご挨拶

先月の平昌冬季オリンピックは、日本として始めて14個のメダルを取り、沸きました。唯々感激してテレビの前にクギ付けになって、見入っていました。TVでの解説などを見ているうち、『ものづくり現場』として学ばなければならない幾つかの事柄が見えてきました。その中で

『個々人の実力とチームとしての総力を如何に両立させるかの課題』

について皆さまと考えてみたいと思います。

オリンピックから離れて、読者の皆さまが日々気に掛けている作業現場の話に移りますが、私がこのテーマに最初に直面したのは、1980年、トヨタの製造課長に就任し、600人余の部下を束ねて成果を上げて行く重責を負ったときでした。と言うのは、『個人の能力向上』と、『チームとしての総力』とが、高いレベルを狙うほど融合が難しくなっていくという現象があるからなのです。

ここで、トヨタ自動車では、会社としてこれに関してどのような取り組みをしてきたのか紹介しましょう。『個々人の実力向上』(以下記号【P】)と、『チームとしての総力』(以下記号【T】)で表しますと、以下のような施策が打たれてきました。

【P】1950年代;『創意工夫提案制度』を現場に導入しました。

当時は現場には徒弟制度が残っていて、上司が部下の指導をして居て技能は伝わっていましたが、個人としての Identity を発揮してもらうために導入

【T】1960年代;乗用車の生産が本格化し、従業員数が急増し始めました。

上司に対して部下が急増したことになり、個々の問題に上司が関われ無くなる。この事から現場の部下同士がチームを作って、問題解決に当たると共に、部下同士のの連携すなわちチームワークが重要視視され現場での小集団活動として『QCサークル活動』を会社を挙げて活発化させたのでした。

【T】1970年代;大衆車ブームで、更なる急拡大が起きました。

新入社員や異動者が孤立しないように、話し合いの場を少しでももたせようと、『PT(Personal Touch)活動』を展開。会社の仲間と話し合うと申請すれば、チケットで構内の売店で菓子やパンが購入できるようになる。

このような状況下で、1980年、新天地に新工場を建設し、新型車を生産する製造課の課長として赴任し、既存の工場からの人材集めから始めたのでした。関係者の好意で人材は集まりましたが、どうやってチームワークを醸し出すのかが課長としての一番重要な仕事でした。

そしてこれは、オリンピック選手団の編成に重なるところがあります。

トヨタでの『個々人の実力とチームワーク』の話を続けます。

【P】1991年、海外進出が急増し、技能の教育訓練が手薄になって来ていることが顕在化、そこで『専門技能習得制度』が導入されました。

そこでは、初歩的なC級から超ベテランのS級まで、習得すべき技能と知識が整備されていて、現場で日常業務をこなしながら習得した技能と知識が、会社の期待値に到達しているか、各工場にある『訓練道場』で実技試験をし、不足分はその場で習得させる。知識は筆記試験をし、不足分は教育する・・・・これを全員に徹底することで、職場での技能レベルを維持しようとするモノでした。

当然のことながらこの仕組みは全世界に点在する工場に展開されますが、トヨタとしてのレベル合わせが必要となります。

【P】2003年海外事業体の監督者研修、技能訓練のための機関として、『グローバル生産推進センター(GPL)』を設置しました。

このようにして『個々人の能力向上』と『チームワークの醸成』の双方に施策が打たれてきたのでした。

会社方針としても、1992年に制定された『トヨタ基本理念』の第5章で

『労使相互信頼・責任を基本に個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる』

と謳っています。

その後、2001年に制定された『TOYOTAWAY 2001』では

『トヨタウェイの2つの柱は、「知恵と改善」と「人間性尊重」である。「知恵と改善」は、常に現状に満足することなく、より高い付加価値を求めて知恵を絞り続けること。そして「人間性尊重」は、あらゆるステークホルダーを尊重し、従業員の成長を会社の成果に結びつけることを意味している。』とあります。(トヨタHPより)

これを、職場内に展開すれば、 『従業員1人ひとりに対するRespect』と『Team-Workへの評価』になります。

ここまではトヨタのことを書きましたが、皆さまの会社でもほぼ同じ事をされていることと思います。そしてどの職場でも、部下を預かって実務を担当する管理者・監督者にとっては、日々の活動の中で、

  • 『部下1人ひとりの能力を如何にして向上させていくか』
  • 『組織としての成果を如何にして向上させるか』

の相性の良くない二つのテーマを追い求めていくことが課せられているのです。

管理者の皆さまは、そんな立場でスポーツ観戦をする事をお勧めします。そうすると監督や、選手の動きから、得点のありなしとは違った監督者のManagementのドラマを垣間見る事が出来ます。

さて、話を冬季オリンピックに戻して、一緒に考えてみましょう。

オリンピック選手団の団体競技の各競技の監督は、選手個人能力向上と、チームチームとしての成果が与えられたテーマとなります。

個人個人の実力を付けさえるには、個人の力を顕在化させ、 『徹底的に競わせれば良い…』と言うのは、誰でも考えつく方策です。そうするとどうなるか・・・・の典型例を見せてくれたのが『韓国女子』のパシュートでした。

実力のある選手は先頭を走り、力の弱い選手を置いてきぼりにする…。そして勝てないのは弱い選手がメンバーにいるからであると発言をする・・・・と言う絵に描いたような恥ずかしい結果がTVに映し出されてしまったのでした。

次のレースでは案の定、全員が遅い選手の速さで滑る・・・・これも、 『チームワークを大切にせよと』上司が怒鳴った時の典型例を『韓国チーム』が見せてくれたのでした。

チームワークとして完璧な試合展開したのは『日本団体女子パシュート』でした。世界のTopアスリートを並べ、 「1週間練習すれば日本に勝てる」と豪語していたオランダを、抜きつ抜かれつの接戦の末、オリンピックレコードを出して勝ったのでした。

TVのインタビューでは、日本の女子選手がレース中に何が起き、どう対処したのかを、自分の言葉で明確に話しています。準決勝のみを走った選手が「私が壁となって決勝戦の体力の温存してもらいたかった」等はその典型でした。それらの言葉の裏にあるのは、選手同士が互いの特性を理解し合っていて、自分が何をすればチームの勝利に結びつくか真剣に考え、そのためには他のメンバーをRespectしながら何をして欲しいか、トコトン話し尽くしてきて得られたという一体感が滲み出ていました。

監督のなすべきことは、客観的な事実(DATA)を与え、明確な目標を与え、どうしたらその目標を達成できるか、選手達に考えさせ、話し合わせて、皆で合意した結論に自信を持たせることだったようです。選手の個性も違うし状態は刻一刻と変化します。そこには一般解は存在しません。その場に合った特別解しかないのです。

チームワークの話ばかりしてきましたが、忘れてはならないのは、中心となった高木姉妹間の互いをライバルと見ての8年余に亘る切磋琢磨でした。その結果種目は違えど、それぞれ、金・銀メダルを授与される実力を身に付けてきたと言うことです。この個人の力あっててこそのチームワークの優勝だったのです。

私が恐れるのは、 『日本にはチームワークがあるから勝てるのだ』と言う早合点が広まらないかということです。全世界が日本のチームワークを研究してきますから、個人としてメダルを取れるレベルの選手を揃えないかぎり、連覇は難しくなることでしょう。

話を再び製造現場に戻しますと、皆さまの工場から生産される部品(商品)は、世界各国の市場で他社製品と競い合っています。言ってみれば、オリンピック競技場と同様に、多国の代表選手と金メダルを懸けて競争しているわけです。

今まで勝ち続けてきた御社の強みは何処にあるのでしょうか?その製品は御社の製造現場から生みだされています。その現場の強みは何処にあるのでしょうか?ズ〜ッと勝ち続けるには、どうすべきでしょうか?

3月9日からパラリンピックが始まります。此処では手の代わりや足の代わりをする機器が登場します。道具や設備を使って物を作る現場により近い競技になります。

『個々人の実力とチームとしての総力』をサブテーマにして観戦することをお薦めします。

2018年3月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知

2018年2月

代表の御挨拶

テレビ番組のNHKスペシャル『人体〜神秘の巨大ネットワーク〜』の既放送分が正月特番として再放送されました。

  • 2017年09月30日(再)『プロローグ;神秘の巨大ネットワーク』
  • 2017年10月01日(再)『“腎臓”が寿命を決める』
  • 2017年11月05日(再)『驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る』
  • 2018年01月07日(新)『“骨”が出す!最高の若返り物質』
  • 2018年01月14日(新)『万病撃退“腸”が免疫の鍵だった』
  • 2018年02月04日(新)『“脳”すごいぞ!ひらめきと記憶の正体』

・・・と続きます。

博学のタモリとノーベル賞医学者山中伸弥教授との軽妙な司会で語られる内容は、従来信じられていた、脳が全身のControlをするという定説を根底から覆すものでした。

要点を言えば、従来の常識は、外界の変化は、視覚、嗅覚、聴覚など、いわゆる五感として捉えられ電気信号に変換され、神経細胞群構成されたネットワークを経由されて『脳』に届きます。届いた数多くの情報を『脳』は総合判断して行動を決め、神経細胞のネットワークを通じて各臓器に指令を出します。その結果、外敵から身を守る行動が出来る・・・・というモノでした。

神経細胞のネットワーク以外にも、血液の循環を使った情報システムがあることは従来から知られていました。その一例が、血液中の炭酸ガス濃度を『情報伝達物質』にしたSystemです。走ったり、重いものを持ち上げたりすると、筋肉がより多くの有酸素運動し、血液中の酸素をより多く消費し、代わりにより多くの炭酸ガスを出します。

その結果として血液中の炭酸ガス濃度が増します。するとこの炭酸ガスが『情報伝達物質』の役割を担い、心臓に働き掛けて脈拍を早くし、血管に働き掛けて内径を太くして血液が通り易くします。そして炭酸ガス濃度が正常に戻ると心拍数も血管の太さも正常に戻ります。この事はよく知られて居て、風呂の湯に炭酸ガスを溶かし込んでおけば、皮膚から体内に炭酸ガスが吸収され、それが情報伝達物質として働き、血行が良くなり、身体が温まり、疲れが取れる事が期待されます。それが温泉の効能であり、その応用が入浴剤となっているのでした。

ここで、人体に於ける血液の働きを考えてみましょう。血液量は体重の1/13と言われていますから、5〜6gとなります。心臓の一拍あたりの吐出量は50〜60ミリg、脈拍数は70〜80回/分と言われていますから、1分余で全血液が一巡りする計算になります。

今回、この番組で紹介されていることは、この1分余で一巡りする血液に各臓器が様々な『情報伝達物質』を放出する事で、臓器同士が連絡を取り合っていると言う新事実でした。

例えば、水分を取り過ぎたときは、血液量が増えていきますが、脈拍を速くさせるための炭酸ガス濃度は増えていませんから、心臓に負荷が掛かります。心臓が「しんどい」と言えば(『情報伝達物質』を放出すれば)、腎臓がその情報を受けて血液中の余分な水分を「尿」として取り除く・・・という具合です。

番組ではタイトルにあるように、脂肪、筋肉、骨、腸等を取り上げ、それぞれが何を検知してどんな情報伝達物質を出し、それをどの臓器が受け止め、どんな処置を始めるのか・・・それを極最近の医学では何処まで解明できているのかを説明しています。

其処で展開されている言わば組織論は、

【A】
外敵から身を守る行動や、獲物を捕まえる行動、国家で言えば外交問題、軍事問題については、『脳』が最上位に立ち、各臓器に神経細胞系の情報網で電気信号で命令を下し、各臓器はその命令に絶対服従する、従来考えられてきた仕組みはある・・・。

その一方で、

【B】
人体内で起きる問題、国家で言えば財務、厚生労働、等々の内政問題については、各臓器は平等の立場で役割分担をしており、血液中にある様々な『情報伝達物質』の濃度を変える事で情報を公開し共有化(見える化)し、その機能を担う臓器が乗り出して問題解決を図ると言う仕組みがある・・・・。

と言う事が分かり始めたと言うことでした。

更に、地球上に生命体が誕生したのは約40億年前で、その後進化を続け、多細胞生命が生まれたのは約14億年前と言われています。それ故生命の基本は個々の細胞に在るのだという事。そして生命進化の頂点にあるとされる人間も、1つの卵細胞が受精し、それが分化し成長して数百億個から数千億個からなる細胞で行き脳や骨などの臓器が作られるので、臓器同志は平等な立場で、役割分担していると見るべき、【B】は当然の姿と考えるべきだとの説明もありました。

この番組で語られた【B】の話に私は膝を打って合点しました。そしてこの仕組みこそが、『トヨタ生産方式』の基本的な考え方であるからです。

個人ベースで見れば、会社に中では役割分担として上司と部下の関係があります。しかし一歩会社から出れば、お互い平等な人間同士としてお付き合いします。この事を従業員に植え付けるためにも、トヨタでは様々なインフォーマルな集まりを奨励しました。その結果、会社では厳しい上司が、趣味の囲碁では、部下が師匠で上司が弟子という立場で厳しく指導されると言った場面はざらにありました。

組織的に見れば、技術部が設計した製品を、製造部門が製作しますが、上位にある技術部の命令を、下位にある製造部門が従うのではありません。各部署は対等で、組織としての役割分担にすぎないという考え方をしており、設計に問題があって歩留まりが悪かったり、不良が多かった場合は、会社を良くするために製造部門はビシビシと設計に情報を上げ、設計変更をさせる事は日常的に行われています。

これを生産管理と言う切り口で見れば、【A】は 中央集中管理型と言うべき方式で、【B】は 自律分散型と言うべき方式です。以下、自動車を例にとって説明します。

【A】では、

  1. 最終組立工場で生産する車両の生産計画
  2. その車両に取り付ける生産に使う部品の調達計画
  3. その車両に搭載する自社製のエンジン、ミッション等の生産計画
  4. そのエンジン、ミッション用の部品調達計画

これら全てを本社で計画し、社内及びサプライヤーに指示します。

しかし上記の(1)〜(4)はそれぞれ数日間の時間差があり、しかも、不良率や設備稼働率は予測しずらいこともあり、欠品にならないように余分に生産したり、時間的に余裕を持たせた計画にせざるを得ません。

何よりの害毒は、各工場の管理者は、本社から命じられる生産計画を何も考えずに実行する事に専念せざるを得ないことです。もし担当する工場の計画に異存があったとしても、その工場の計画を変更する事は、全部の計画に影響する恐れがあるため、言い出す勇気が萎えてしまうからです。その結果、製造課長は会社に来ても、Displayを覗き、本社から来た生産計画を確認して、職長に手渡すだけが自分の仕事と勘違いし、現場の実態に何ら関心を示さず数年間の任期を過ごす・・・・という人が多くなるのです。当然現場の活力は失せ、無為に時間が過ぎ、後継者の育成も覚束なくなっていく・・・・こんな現場になり易いのです。

【B】の場合は、トヨタを例に取れば、生産計画は、前記の(2)(3)(4)にはその月に生産する車種とその1日当たりの生産量が提示されます。日々生産は平準化して行われますが、日毎の変動は±10%の変動はあることを前提にして、1回分の納入数量の在庫を確保しておきます。(図1参照)

図1
図1

具体的な生産計画は(1)のみ立案され、ラインサイドにあるプレス品を使って指示された型式の車体を作ります。塗装工場では指示された色で仕上げ、組立工場ではラインサイドにある部品の中から指示された部品を選んで組み付けていきます。部品を使うとそれに対応した 『引き取りかんばん』が発行され、その分を次回の納入便でサプライヤーの完成品在庫の中からPickingして納入されます。サプライヤー在庫の減った分は 『仕掛かりかんばん』という形で次回納入便が来るまでに後補充生産する種類と量を指示します。

この様子は、先の人体の例で、『各工場』を『各臓器』に、『かんばん』を『情報伝達物質』に置き換え、『納入便』を『血流』に置き換えると、同じ仕組みであるとお分かり頂けると思います。

この仕組みでは、事前の生産計画はなく、使ったものを 『かんばん』と言う 『情報伝達物質』で量とTimingをControlしていますので、ある工場だけ独自の動きをしたいと考えた時は、 『かんばん』を増やし、自由度を増して置けば各工場は独自の動きが出来ます。

この特性を使えば、製造課長は随時自分の意志でラインの生産量を一時的に変更するような改善も出来ます。文字通り『自律分散』で、各課が自分の意志で思い切った改善をに取り組めるの仕組みになって居るのです。ここから自ずと各課の改善競争が始まり、それが原動力になって、職長間の知恵比べが始まり職場が活性化しますし、それらが集大成して工場全体が活気づいてくる事が期待できるのです。

『かんばん』は『情報伝達物質』の一形態に過ぎません。真の目的は『在庫後補充方式』にして、そこで使う『情報伝達物質』は各社の業態似合うものを考え出せば良いのです。

これを機会に、皆さまの会社の生産管理体制は、【A】型か【B】型か見直しして見て下さい。もし【A】型であれば、此処に書いた悪い部分がないかどうかご確認下さい。

2018年2月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知

2018年1月

代表新年の御挨拶

明けまして御目出度うございます。
今年が皆さまにとって幸多き年でありますように!
又、御社益々の御発展をお祈りいたします。

年頭に当たりまして以下私の念じていることを申し述べます。

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『自分の頭で考える年にしましょう』

第1章 覚めた目で日本の今を見回すと・・・

(1-1)日本中が『羊の群れ症候群』を患っているようです

中国の古典論語に 『由らしむべし、知らしむべからず』という言葉があります。 本来は 『民に法律を守れと言うには易しいがその理由を教えるのは難しい』と言う意味だったとのことですが、現在では 『国民に政策を信じさせ遵わせれば良いのであって、その真意を知ってもらう必要はない・・・・』という意味に使われています。

その為政者に呼応して国民に中では 『政府は国民のことを考えて政治をしてくれているから信用して,言うことを聞いていれば良い』『その政府に盾突き、文句を言うのは不届き者だ・・・』と言う風潮があります。

その証拠の一つが、民主主義の根幹の国民主権の行使である国会、地方議会や首長の選挙においては、諸外国に恥じるような投票率になって居ます。

話は飛びますが, 『羊』と言う動物は常に群がる性質があり,隣に羊が居れば此所が安心だと思い込みます。互いにそう思うので,群れている羊は動こうとしません。安心して何も考えずただ眼前の草を食い続けると言います。

それ故羊飼いは,賢い犬の知恵と勇気を使って,羊の群れを飼い主の思うように動かしているのだそうです。

羊の天敵であるオオカミは,リーダーの賢くて強力な指導力と,強いメンバーシップの下で獲物を探して山野を駆け巡り,獲物を見つけると阿吽の呼吸で役割を分担し,獲物を追い込み,餌食にします。

オオカミに比べると,獲物にされる羊の群れの何と愚かしいことか・・・。肉食獣から見れば 『羊の群れ』は獲物ですが,宗教家から見ると救うべき迷える民衆となるようです。とにかく,来し方,行く末を考えず,隣に仲間さえ居れば安心してひたすら眼前の草を食す羊の群れに似た民衆を 『羊の群れ症候群』と言っているようです。

そして今,私には日本国中がこの 『羊の群れ症候群』を患っているように思えてなりません。

(1-2)日本がドンドン追い越されて行く・・・

1978年,私は現地の自動車工場を調査の為に初めて東南アジア諸国を訪問しました。

独立国として戦禍を免れたタイ王国は別として,インドネシア,マレーシア,フィリッピンは太平洋戦争と,その後の独立戦争からの復興途上で,道路用の土地は広く取ってありましたが,いわゆる掘っ立て小屋が多くありました。中にはトヨタのロゴが付いた家があり,聞けば自動車用部品を送るのに使った梱包資材を流用しているのだとか・・・,そんな貧しい状態でした。

写真1 杭州のホテル26階からの景色
写真1 上海のホテル26階からの景色

この写真は,昨年中国浙江省杭州のホテル26階から撮った街並みです。 文化資産としての旧市街地は一部に残すものの,区画整理をやり直し,高層ビル群に建て替えられています。

写真2 東京スカイツリーからの景色
写真2 東京スカイツリーからの景色

写真2は,東京スカイツリーから見た東側の地域です。荒川,中川,江戸川が見渡せる,いわゆる海抜ゼロメーター地域です。1970年代のままの街並みは,道幅は狭く,木造2階建てが多く,関東大震災時,東京大空襲では猛火に襲われ多数の犠牲者を出したと頃と同じ状態にあると言われています。

2011年の東日本大震災を機に,ここ30年以内に50%を越える確率で東海大地震や南海大地震が起きると警鐘が鳴らされ,あちこちに 『此所は海抜○○メートル』と言う表示が目に入るようになりましたが,2020年に東京オリンピック開催されるという決定されると,紙面から消えてしまったような気がしてなりません。

話題を変え,街並みから社会生活に目を向けると, 『報道の自由度ランキング』ではネットで調べると2007年の11位から下降を続け,2017年では何と,世界の主要7カ国(G7)では最下位,世界では72位まで下がっているとあります。

また,女性の社会進出を妨げる見えない障壁を表すと言う 『ガラスの天井指数』では,経済開発機構(OECD)加盟国29カ国中28位で,最下位は韓国となっています。因みに上位は北欧系が占めています。

写真3 中国での表彰式
写真3 中国での表彰式

写真3は昨年パネリストとして招かれた人材育成ホーラムでのショットです。赤い洋服の女性が主催社の社長で(彼女が起業したという・・・),関係する1,000社を集めて功労者を表彰している場面です。彼女の上手(向かって右側)にいる4人は,表彰された会社の経営者です。舞台上の5人の社長のうち,女性が3人いることになります。フロアーに居た参加者の半分は女性でした。これが世界の常識なのです。日本の男ばかりの社会が,如何に異常なモノであるのか・・・をご認識下さい。

(1-3)大学がドンドン途上国に抜かれていく・・・

1995年頃から初歩的ミスが原因で起きた大事故が目立つようになりました。

1999年9月30日東海村JOC臨界事故が,それを代表しています。これに対処すべく,国としては小渕内閣の下で 『ものづくり基本法』が制定され,経団連(豊田会長)も全面協力という形で 『ものづくり大学』を逐次全国に設置する計画でした。2000年12月に裏で政治家が絡んだ収賄事件が発覚し,残念ながら行田市の1校のみの設置に終わって仕舞いました。

私はトヨタからこの『ものつくり大学』に派遣され,開設から 『ものづくりの基礎』を, 『自作艇の競漕』という特異な授業を考え出し、6年間教えてきました。昨年10年ぶりにオープンキャンパスを訪問したら,すっかりアカデミックなたたずまいになり,先生方も入れ替わっていましたが, 『ものづくりに対する熱意と取り組み』の伝統は脈々と生きていました。この事を私は誇らしく思いました。

この時の大学教育への問題意識は,世界トップの技術を持った町工場 『三鷹光機』の中村義一社長(当時)の入社試験にも展開されていました。課題として,紙で飛行機を作らせて,長く飛んだ順に成績を付けたと言うコトです。この試験で 東大の工学博士が[不採用]になったとして有名になりました。社長に直接お話を伺った事がありましたが,「狭い分野の中で研究を重ねてきた人は,プライドだけは高いが他分野の知識がなく, 『ものづくり』には向かない・・・」と言われ,意気投合した記憶があります。

私は,東南アジアにおける国別の工学部の実力の一つの尺度は 『ABUロボコン』の成績に表れると思っています。1991年から始まったテレビでお馴染みのNHK大学ロボコンは,日本の枠からはみ出し,2002年からはアジアー太平洋ロボコン大会となったのですが,今まで16回の優勝大学を国別で表せば残念ながら下記のようになります。

ベトナム
@BDLMO
中国
EFGHJ
日本
CK
タイ
AI
マレーシア
N

10年間も先行して来た日本勢が,開発途上国とされてきた国々に,特にベトナムに歯が立たない惨状を呈しています。20世紀は日本のものづくりは体をなしていたかも知れませんが,21世紀になるとこのありさまで,日本の工学部の実力は,学生だけでなく,教授陣も,支援体制も後れを取っていると考え,抜本対策を練る時期にあると思います。

(1-4)日本のものづくり産業が買い取られていく・・・

新聞紙上で見ると,20世紀日本を支えてきた大企業が21世紀になると力を弱めてしまい,中国や韓国等の軍門に降っていく記事が沢山載っています。

こうなってしまった推定要因は, 先回11月11日付けてお話ししました。

おさらいすれば,各社とも20世紀にはしっかりとした 『業務規定』を作成し,教育してきたはずですが,1995年頃から会社業務の本格的電算化が始まり,ERP化されたことによって,社員が守るべき 『業務規定』の大枠がコンピューターソフトの中に入ってしまい,社員はコンピューターの命じるままにキーボードを操作すれば,一通りのことは出来るようになって,そのことから, 『業務規定』について何も教えることなく,仕事に就かせてきたため,今では肝心の 『業務規定』の中身を語る人が居なくなってしまった・・・と考えるべき会社が多いのでは・・・と言うコトでした。

第2章 今年はどう取り組むべきか・・・

前の章で,一般論として日本国中に漂っている風潮を 『羊の群れ症候群』としてズルズルと世界の流れから取り残されて生きつつある現象を御説明してきました。ここまでお読み頂き,御社が 『羊の群れ症候群』のなっている可能性があるとお感じになったら,今年はどうすべきか?その取り組み方を考えてみましょう。

この典型的な症状は,自分の考えを持たないようにして,まわりに気を遣い,その空気に溶け込むことで,構成員の一員である自分を見いだし,安心することにあります。

かつて, 『サラリーマンの心得』として皮肉たっぷりに言われた言葉に

『遅れず,休まず,仕事せず』

と言うのがあります。組織の中で空気を読んで,目立たないようにして給料だけもらってくる・・・これがサラリーマンの生きる道・・・と信じて疑わない。これが典型的な症状です。

そしてこの考え方そのものが,日本の生産性を低下させている元凶の一つなのです。以下その病状にならないようにする処方箋を考えてみましょう。

(2-1)部下1人ひとりが自分の頭で考えるように仕向ける

そのためには,通称 『トヨタのA3』と呼ばれて居ますが,自分で調べ,考えたことをA3用紙1枚で報告させるようにすることです。その上で,出したと言う成果がただ偶然得られたものでは無く,理路整然とした分析と的確な行動によるモノで無ければ仕事として認めるわけにはいかないのです。

此所で思い出すのはイチローの言葉です。

『記者の皆さんは,ヒットが無いと調子が悪いと言いますが,私自身は@相手の配置を観察しセーフになる打球の軌跡を読むこと,A読んだ軌跡通りに打てる事を目標にしています。@とAが出来れば私の調子は良く,結果としてアウトだったら相手の守備を褒めるべきと考えています。』

と言う趣旨の発言でした。

記者のヒットか否かの管理は, 『結果の管理』と言い, 『運』任せです。一方イチローの管理は,@とAの技量を上げてヒットを増やすという 『プロセスの管理』で,これを続けることで成績の維持向上が期待できるのです。

トヨタ生産方式では 『品質は工程で作られる』とあるように,徹底して 『プロセス管理』を大事にします。そして会社が急成長した1970年代に当時の豊田英二社長の鶴の一声で, 『管理能力向上プログラム』として,部課長に対し,年度方針の展開結果を, 『A3 1枚でまとめ8分間で報告』させることにしたのでした。爾来,会議資料はすべてA3 1枚に纏めることが定着し,2000年に『ものつくり大学』に赴任するまで,私自身も報告書,会議資料はすべてA3で行っていました。

以下に御説明します様な手順を踏んで得た膨大な資料を, 『A3 1枚』に理路整然と纏めようとしてあがいている中から, 『幹と枝葉末端』,『原因と結果』,『目的と結果』を見極める『ちから』が付いてくるのです。この 『ちから』こそが『思考力』であり,『信念』であり,まさに追い求めている『管理能力』なのです。

(2-2)A3の書き方

色々な本が出ていますが,日本科学技術連盟のQCサークルの発表形式が一番手っ取り早く,参考になります。具体的に御説明しますと以下のようになります。

皆様は,PDCAで物事を考えるように指導されていると思いますが,今現在のやり方にどんな問題があって,それをどう変えていくかと言う取り組みでは,先ず CAがあり,その後本対策としてのPDCAと言う順序になります。以下具体的には

C(Check)とは,
『現地・現物・実情・実態』を言います
A(Action)とは,
『応急処置』,『当座の対応』を言います
P(Plan)とは,
System設計を含めた本対策を言います
D(Do)とは,
本対策の計画的な展開を言います。
1(実施結果のチェック)
効果の確認を言います
1
残された課題と今後の展開を言います
(2-3)『現地・現物・実情・実態』の調査の仕方を説明します
現地;
実際に現象が起きた現場に行って,起きた時間の状況を把握
現物;
実際にそのモノを直接観察して真因を探る・・・

上記 『現地現物』は本人自らが自分の五感で確認することを意味します

実情;
自分の五感では感知できない事柄を当事者から聞き出すこと
現地の法律,習慣,宗教的タブー等々
実態;
上記 『現地・現物・実情』を総合判断して,何がどのように定常的に成されているのかを,今の実態を正確に把握すること

今の実態を是認すると, 『ミイラ取りがミイラになってしまう』事になります。今の実態を否定すれば,現場から 『分かってもらえない』と拒否されます。

それ故,ここでは是認でも否定でも無く 『把握』という言葉を使っています。

『把握』した上で,理想(あるべき姿)通りにすることを妨げている要因の内,自分達では変えられない要因と,変え得る要因(真因)を調べ上げます。

トヨタ生産方式では 『真因』と言いますが,TOCでは 『 Constraints』と言って,よく調べてみると『現場の思い込み』や『特定個人(黒幕)からの圧力』であって変更できる場合が多いのです。ですから, 『把握』した実態から合理的な判断でこれが真因では無いかと言う 『仮説』を導き出し,それをひとつ一つ検証していくことが問題解決に繋がるのです。

ここで言っている 『真因』がどんなモノであるかの例え話をします。

写真4 6本の5寸にんじん
写真4 6本の5寸にんじん

社員食堂の,にんじんジュースの味がおかしいと言う事件が起きました。レシピは2個のリンゴに対してにんじん1本の割合でミキサーに掛けて作っていました。担当者は変わったが,レシピ通りにやっていると言います。購買担当は,何時も新鮮なにんじんを仕入れていると言う・・・・何が真因か・・・?

そこで仮説を立てます。ジュースの味はリンゴとにんじんの比率と,ミキサーに掛ける時間が要因と考えられますが,工業製品は大きさは同じなのに,農産物は規格の幅が大きいのが普通です。大きさのバラツキが 『真因』であると仮説を立て,実態の把握に入りました。最初にレシピを作った人は,写真4にある5寸にんじんを使って,リンゴ2個とにんじん1本の比率を決めたと言う事でした。

ジュースを作る現場に行ったら,写真5のように種を蒔きっぱなしで間引きしてない栽培法でわざと小さいにんじんを多くした不揃いの3寸にんじんが準備されていました。

購買担当者に実情を聞くと,小さいにんじんをまるごと入れた洒落たスープ用に仕入れたモノで,大きめのモノはジュースにする言うことで不揃いのにんじんを仕入れて原価低減案を図っていると言う事でした。それで 『真因』はリンゴとにんじんの比率を 『重量比』にしてなかったことと,部署間の連絡不足でした。

写真5 33本の3寸にんじん
写真5 33本の3寸にんじん

このように真因の仮説を立てては検証し,実証されれば対策をして問題の根本解決を図っていくのです。

(2-4)『応急処置』,『当座の対応』とは

取り敢えず発生した不具合による被害を最小限にする処置で,品質不良であれば,人海戦術で不良品をはね出し手直しすることなど言います。あくまでもこのレベルは暫定対策に過ぎないと認識しなければいけません。

(2-5)Plan(本対策計画)とは

このような不具合が再発しないように,徹底的な真因追求と,本対策への道筋を,要員計画から予算計画まで入れた具体的なスケジュールを立て実施することを表します。

(2-6)Do(計画の実現状況)とは

Plan通りに遂行できたか否かを書きます。

(2-7)実施結果のチェック

計画を実施した結果。所定の効果を上げ得たか否かをエビデンスで実証します。

(2-8)残された問題と今後の展開とは

本対策で未だ不十分なところがあれば,その追加対策案を報告し,充分であれば,次に取り組むて課題を明らかにします。

(2-9)A3一枚でまとめる

上記をA3一枚でまとめることで,何が本筋で,何が枝葉末端かを見極める力,いわゆる管理能力を身につけさせて, 『羊の群れ症候群』から部下を快復させる事をお勧めします。

第3章 まず自社から日本再生をお始め下さい・・・

中国の古典大学に 『身修まってのち家ととのう。家ととのいてのち国治まる。』と言う有名な言葉があります。今風に言えば 『出来ることからコツコツと』という事でしょう。

日本国中を一度に変えることは出来ませんが,1社ずつ戦線に復帰していけば,世界最強のものづくり軍団の復興も夢ではありません。

そんな心意気で,2018年の新年を機に御社のご活躍と,飛躍をお祈り致します。


さてここからは余談になりますが,今回ご紹介しましたA3手法のうち 『現地・現物・実情・実態』の威力を, 一度お試し下さい。テーマは,昨年末マスコミを賑わしたいわゆる 『日馬富士暴行事件』が良いと思います。

と言うのは,皆様はほぼ同等にマスコミからの情報を得ているからです。

お試し頂くと,違った実態と真因の 『仮説』が浮かび上がって来ると思います。

これが皆様ご自身で考えて得られた,何人も犯すことにできない皆様の財産なのです。

ここに,マスコミの報道では欠けて居たり,故意に流さなかったと思われるエビデンスがありますので,参考までに加えさせて頂きます。

E1;
相撲という特徴を捉えた,浄瑠璃,後に歌舞伎の定番となった 『双蝶々曲輪日記』の,「堀江角力小屋の場」の要約をネットでお読み下さい。
そこでの登場人物で大関濡れ髪長五郎を白鳳,素人相撲の離れ駒の長吉を貴の岩に当てはめてお読み下さい。
E2;
白鳳から金星を奪った後で,仲間との飲み会で貴の岩が「これからは俺たちの世界だ」と言った耳にした白鳳が,2人のモンゴル系横綱を誘って,横綱3人組での飲み会に乗り出し,「おまえ最近,偉そうなことを言っているじゃないか」と部屋が違う(別の会社)力士に対し1次会で説教し,更に2次会で先輩に対する礼に欠けると言う理由で咎め,モンゴル語を交え延々とネチネチといじめ抜いての後の傷害沙汰と言う事。モンゴル語の分からない同席した日本人に何が起きているのか説明できない状況だったと言う事。
E3;
千代の富士は,本場所では不利になりそうな力士に対しては,出稽古の場を使って,しかも横綱という立場を使い地獄の可愛がりをして,本場所での星を稼いだと言う評判が立っていたとの事。
E4;
約半年前,モンゴル放送で白鳳と朝青龍との対談番組があり,モンゴルの諺,「施しをするなら知らない人より知っている人にやるべきだ」という言葉を確認し合っていたという報道があります。相撲言葉に言い換えれば,困ったときには星のやり取りをしましょうと同意義になる言葉である事。
E5;
貴乃花親方は,横綱時代,大関若乃花と同点決戦を強いられ,実兄弟で優勝争いをするという前代未聞の厳しい場面を乗り越えてきています。それ故,他の部屋の力士との飲み会は厳禁していた事。
E6;
現場に居合わせなかった貴乃花親方に再三再四協会が『事情聴取』を求めると言う事はナンセンス,示談書にサインせよと言う意味か?

以上のエビデンスを 『現地・現物・実情・実態』の手法で解析すると,決して口にすることが出来ないような 『実態』が存在し、それをめぐっての駆け引きであろうと仮説が成立します。実際はそれを検証していくのです。

トレーニングとしてお試し下さい。

最後になりましたが,本年も弊社お引き回しのことをお願い致します。

2018年元日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知

2017年11月

御社の『管理規定』や『業務分掌』はご健在でしょうか

<個人の持つ技能の伝承の危機を2007年問題として取り組んだが、会社組織の管理規定の伝承が手薄だったのではないか?>

このところ立て続けに、日本を代表する製造業で不祥事が報道されています。その主なモノは以下のようになります。

2017年
@ 富士重工・日産自動車の検査員問題
A 神戸製鋼の品質データー改ざん
2016年
B 三菱自動車Catalog燃費詐称事件
2015年
C 東芝-長期に亘る不適切会計
D 東洋ゴム試験データー詐称
E タカタ-エアバック不具合

多くの製造業関係者は、この報道を聞いて眉をひそめますが,内心では「我が社は大丈夫」とお思いのことでしょう。

ところが、トヨタでの現場歴30年その後コンサルタント歴20年の私には、俗に言う「50歩・100歩」で、上記企業は病状が急変し救急車の御世話になっただけで、日本国中が同じ病気に罹って居るように思えてなりません。そうでないことを祈りつつ、私の抱いている懸念を以下お話しします。

それは、2007年問題は、実は会社組織の規定類の伝承に影響しているのではと言う懸念です。

私の会社組織の規定類に関する原体験は約50年前のトヨタのデミング賞の審査時にありました。

当時、審査の先生方から上司が厳しい指導があり、それを受けて、上司は思い悩みながら、その指摘の意味することを理解し、具体的に何をどう直すべきか判断し、現場の管理体制をテキパキと再構築して行きました。

上司のお手伝いをしながら私が学んだのは、 『根拠を明らかにせよ』ということでした。

国家には、その国家の目指す方向を明確にした憲法があり、その下に民法、刑法、等々の法律があります。国家のあらゆるコトは、その法律に従って成されているわけです。そしてこれらの法律には必ず 『改正の手続き』が明記されているのです。

これを会社に置き換えれば、憲法に相当する 『創業の精神』とか 『社是』と言った経営哲学があり、従業員には 『就業規則』があります。会社を具体的に運営する為の 『組織図』があり、各組織の活動内容を規定した 『管理規定』と、組織でどのような分担で遂行するかを記した 『業務分掌』が整備されていなくてはならない事になります。

もう一つの側面は、今は何処の会社でもやられていると思いますが、 『方針管理』があります。これは、

会社方針 ⇒ 部門方針 ⇒ 工場方針 ⇒ 部方針 ⇒課方針 ⇒ 係方針

と、Topから末端まで同時展開されて、時々刻々と変化していく市場や社会情勢に的確に会社が自らを変えて適応していく活動を指します。前者が 『維持活動規定』で、後者は 『改革活動』に当たります。両者が混在することで、毎日の業務をこなしながら、会社は自己改革を進め、変化に対応していけるのです。

デミング賞審査の先生方が指摘したのは、現状を維持するための 『管理規定』・『業務分掌』と、自らを変えていく 『方針管理』に不備が多いと言うことだったのでした。

審査期間は僅か1年程度でしたが、工場挙げて抜けだらけであった工場の 『管理規定類』『業務分掌』を整備し、帳票類も定め徹底しました。当時は紙媒体であったので1年間で、日本工業規格(JIS)や労基法の等関連資料も含めると、事務所の壁一面が、それを保管する書棚になって行った記憶があります。

その活動の中で今でも鮮明に記憶している事を2例紹介しましょう。

品質管理台帳

組み立ての様子

毎日毎日、現場で生産している製品の品質特性の母集団が変化していないかを、ランダムに抽出したSample(通常4個)の測定値(計量値)のを基にして 『Xbar-R管理図』を作り、これで変化を監視しています。

これは、先月の実績から導かれた95%信頼の管理限界のUCL(上限)LCL(下限)を記した記録紙に今日の平均値を打点して異常の有無を確認していく・・・という管理なのです。

これは前月の品質レベルに対して今月も同じ品質レベルを維持しているか否かの統計的判定していることを意味していて、この管理方法では、先月の実績に対して 『日単位』『週単位』の比較的小さな周期の変化は掴めますが、設備の劣化などのように 『月単位』から 『年単位』に亘るジワジワと変わって行く変化は掴めません。それを掴むために、月々の管理のために算出された月々のUCL、LCLの推移をグラフにして、長周期変化を捉えることが必要・・・・これが 『品質管理台帳』なのでした。

私はこのデミング賞受賞準備の中で、品質管理とは何かを知ることが出来ました。

体温を例にとって御説明しましょう。一概に人の基礎体温は36℃〜37℃と言われていますが、実際は日々の変動より個人差の方が大きく、個人の日々のバラツキは0.2℃以内だと聞きます。

個人差が大きいので、たまたま36.5℃であったとしても、在る人にとっては微熱状態であるし、在る人にとっては低体温状態かも知れないのです。厳密な判定は、毎日測定し、昨日までの体温との差が統計的に有意で有るか否かの検定をしないと、異常か正常かが分からないのです。

因みに女性は、排卵後妊娠の準備のため基礎体温が0.3℃ほど上がることが知られています。それ故毎日基礎体温を測定し続ければ排卵日を知ることが出来るとされています。

会社の現場の状況も同じで、毎日ランダムにSamplingしていれば変化を掴むことが出来ますが、長周期に亘る変化は、月々のデーターを見比べて見るしかないのです。

話を神戸製鋼に戻せば、出荷鋼材の強度の 『品質管理台帳』を作成するという 『管理規定』が伝承されていれば、鋼材の強度の母集団を推定出来ますから、強度不足で不合格になる比率が月々計算できます。そうすれば、出荷品質としての 『合否』より前に、製造品質の変化で捉えることが出来るハズで、 『製造異常』として事業所内での大問題になっているはずです。

つまり特定の個人が悪かったことは当然ですが、会社組織としての 『品質管理規定』が社内で伝承されていれば、このような事態はあり得ないのです。

このように、ルールを決めそれを書類に残して置き、人が替わっても同じルールを適応する事を 『法治主義』と言います。

この対極にあるのが 『人治主義』です。

『法治主義』と『人治主義』

高層ビル

ここ5年ほど、毎月のように中国企業の改善手伝いをしていますが、訪れた中国資本の工場は、才覚のある人物が作った私企業で、本人が董事長という職に就き、全てが彼の一言で決まっていきます。ここまで急成長する過程では必要であったことと思いますし、これから新市場に進出するときには、その意志決定の速さは強力な武器となります。

しかし、その一人さえ説得すれば道が開けるとなると、忖度して気を引くなど 『頭を使わず気を遣う』部下が増えてきます。諫言が横行し、部下同士が裏に回って足の引っ張り合いをして、統治そのものが崩壊していく・・・これが中国5千年の歴史ですが、皇帝から董事長まで同じ現象が見受けられます。

中国のことだと安心は出来ません。

日本でも、間もなく開かれる臨時国会のメインテーマの一つが 『モリカケ忖度問題』でしょうし、法案を理路整然と説明出来ない大臣の問題になりそうです。

如何に 『法治主義』を目指し、 『法体系を』を整備しても、伝承がうまく行かなければたちまち、国家でも忖度が横行する 『人治主義』に替わってしまうのです。

われわれ私企業は特に、1990年代のバブルの崩壊(中国の竹のカーテンが開いたことによる・・・)で採算が悪化し採用を控えた為の世代断絶、急激な業務のITC化、急速な海外展開などの劇変の中主要業務がDisplayとKeyboardになってしまい、規定類に目もくれなくなり、社内でも 対面し口頭で意思疎通する場面が激減してきていることも無関係ではないと思います。

コンピューター

11月には来年度の会社方針として新たなるテーマを探す時期と思います。それに向けて、自社の業務は 『人治主義』『法治主義』かを見極め、 『規定類の再整備』を来年度方針に散り組むか否かの御検討の時期と思います。

2017年9月

信州の山里で育った私は,登山と言えば野良仕事の延長でしかありませんでした。

あこがれは海であり,船でした。仲間とディンギー(小型ヨット)を製作したり,クルーザー(大形ヨット)にクルーとして参加し,外洋レースに参加して事もありました。

足腰が弱くなった最近は,客船に乗ってのクルージングに関心が移り,夫婦で楽しんでいます。そんな関係で,今回は,乗船したクルージング船のお話をお伝えします。

巨大クルージング船は自工程完結の塊だった

この6月『東地中海クルーズ』に参加しました。船はMSC社の『ポエジア』(写真@)9.2万トン,乗客定員3,223人,乗組員1,039人でした。

9万トン余のポエジア
写真@ 9万トン余のポエジア

全長294b,全幅32.2bという巨大船なのに,回転,横移動が自在で,自力で接岸・離岸して居ました。船が大きすぎてタグボートの馬力では役に立たないとかで,近くで監視するのみでした。航行は正に 『自工程完結』でした。

世間一般の旅客列車も旅客機も往復した後,車庫に入るなどして清掃・設備点検しますが,この客船は数年間に亘って港から港へと航行を続けていて,清掃・設備点検は航行しながら自力で行うとのことです。

一般的に遠洋航海する船は,漁船から超大型船にいたるまで,洋上で自力で修理する力を持っていなければならないとされ,故障すればエンジンのピストン交換まで出来る能力を持っていると云います。

しかし貨物船と違って この巨大な客船は安全に航行させるだけでは駄目で,1,600余の客室を持ち,3,200人余の乗客の満足を得ながら航行しなくてはなりません。

毎日乗客の使ったシーツやタオルの取り換え・洗濯,客室の清掃,食事の準備,客を飽きさせないための芸人達のエンターテイメント等々に,1,000人余の乗組員が24時間体制で臨んでおりました。

彼等の仕事振りの一端は,全長何千メートルもある木製の手摺りに見て取れました。写真Aにあるすべすべの美しい木目を持った手摺りは,甲板に立って美しい景色を見る時に誰もが手に触れるのですが,船の何処でもその美しさは変わりませんでした。

写真A 手入れされた手摺り
写真A 手入れされた手摺り

その秘密は,毎日毎日数十メートルずつサンドペパーを掛け,塗り直し,写真Bにあるように養生をして『ペンキ塗り立て』の表示をしていたのでした。その気になってみると,床も,壁も,毎日少しずつ絶え間なく塗り替えていました。

写真B ペンキ塗り立ての手摺り
写真B ペンキ塗り立ての手摺り

ある日,港に停泊中写真Cにあるように救命艇を海上に降ろし試運転していました。翌日,大型船が接岸できない観光地なので,自船の救命艇をテンダー(通い船)に使っていました。

万一の場合の救命艇を日常的に使うことで,乗客には安心感を与え,経費節減と一石二鳥の運用に感心しました。

写真C 救命艇の定期点検
写真C 救命艇の定期点検

このように,この巨大船の運用は外部に頼ることなく,あらゆる事を日常スケジュールに入れ込み,自分達だけで成し遂げているように見えました。正に 『自工程完結』の塊でした。

この船の 『自工程完結』を工場管理に置き換えて見ると示唆するモノが多くあります。

自動車メーカーは,1月,5月,8月にある約10日間の休みを使って外部メーカーを入れ,新型車立ち上げのための設備改装を行っていました。其れが定例化すると,本来は日常でやるべき設備点検や炉の清掃,床の改修なども,自分たちでやると労務費として計上されるので,見かけの生産性向上を狙って外註に出し,経費として計上するようになっていきました。

一般に 町工場などでは,工具を整備し,材料を準備し,正否安全の要領書を工場側で準備して,アルバイトを頼みます。工場側で準備する部分にものづくりのノウハウがあり,この状態でアルバイトを何年やってもノウハウはほとんど伝わりません。

先に自動車会社の例を挙げましたが,1990年頃のいわゆるバブルの崩壊と言われた頃からこの傾向が顕著になり,爾来約20余年,現在の大企業のほとんどの工場では,町工場側で準備している項目を外註に出し,アルバイトにやらせている単純作業を正社員にやらせてしまっています。その結果,アルバイト的な仕事しか出来ない社員が大半になり,御社のものづくりのノウハウを継承していて,外註のやった仕事に駄目出しできる人材は,定年間際の一部の人達の中にしかいなくなっている恐れがあります。

御社の工場では如何でしょうか?

ここでお話しした,この船の 『自工程完結』ぶりは参考になると思います。

2017年8月

『現地現物』の私的『原体験』

今回は 『現地現物』の私が経験した 『原体験』をお話しします。

今年は2017年、私がトヨタに入社したのが1967年ですので正に50年過ぎたことになりますが、トヨタで過ごした33年間、ものつくり大学での7年間、その後コンサル会社を興しての10年間の活動を支えてくれた一つの柱は、今からお話しします 『現地現物』『原体験』によるものでした。

『原体験』その1
入社教育後行われた2ヶ月間の『現場応援』

新入社員教育でも2週間×4職場の 『現場実習』がありましたが、それはあくまでも現場作業の体験が狙いで、作業量は1人工分の一部に過ぎませんでした。

しかし、 『現場応援』は1人工としてカウントされた要員ですから、その本質は全く違っていて、一刻も早く一人前にして仕事をしてもらわなければなりません。それは正に 『期間工』として採用された人がトヨタの現場でどう扱われて、どう一人前に育てられるかの 『体験コース』でもあったわけです。この時の体験が、私のライン作業に対す考え方の基礎になりました。

その時に学んだことの幾つかを紹介しましょう。

  1. 『コンベア作業』は下りのエスカレーターで2階に上がろうとしているようなもので、昇っても、昇っても、階段は降りてくる繰り返しで、変化が欲しくなります。
    部品箱が空になり、入れ替えるのが楽しみになります。
    単一車種生産より 『多車種混流生産』の方が変化があって楽しいのです。
  2. 部品とボデーの精度が合わず、調整しながら取り付けなければならない時、リズムが乱されるので腹が立ちます。
  3. 作業の中に課題を見つけ、工夫しながら作業をするとゲームのようになり楽しくなります。 『KAIZEN』の意味が分かってきます。
  4. 『難しい作業』ほど、やり甲斐が出て来るし、来るのが待ち遠しくなるります。
    他人の出来ない作業が出来る事が何よりのプライドになります。
  5. SPS(部品セット供給)は自由が奪われるので、 『ありがた迷惑』、時間をもらって自分でPickingした方が楽しいし、作業姿勢の変化が付けられて身体に優しい。
  6. 作業中にLeaderが廻ってきて声を掛けてくれるのが嬉しかったし、気分転換してこいと言って、5分間ぐらいずつ1日数回作業を代わってくれるのが特に嬉しい。
  7. 締め付け工具の操作に慣れて、ベテランと遜色ない速さで作業が出来るようになった事や、締め付け音を聞いて正否が判別できるようになった事が大きな財産となりました。
    これらが身についたお陰で、私自身が設計と作業性について談判できるようになりましたし、現場の仲間として受け入れられるようもなりました。

私のこの経験から、工科系大学出身者を1人前の技術者に育てるためには、ある期間を限って 『一工員として現場体験させること』をお薦めします。

『原体験』その2
『管理能力向上プログラム』の代筆経験

当時のトヨタを社内体制から見ると、1965年デミング賞、1970年デミング賞実施賞を受け、強化を図りましたが、約10年経過した1979年には、受賞当時の部課長が定年を迎え、 『管理能力の劣化』が懸念されるようになりました。

その一方でトヨタを取り巻く環境は、
1970年まで1ドル360円でしたが、1971年のニクソンショックを経て1978年には1ドル176円に急騰してしまっていました。

1973年に起きた第1次石油ショックで原油価格は約20倍にも高騰し、その後下がってきたものの1979年には第2次石油ショックが起きます。又1980年からは本格的な排気ガス規制も始まる・・・という極めて厳しい情勢を迎えていました。

これに対処すべく、1979年1月から部次長を対象として 『管理能力向上プログラム』が開始されました。

具体的には 『工場長方針』を受けて定めた 『各部長方針』の中の最重点項目を取り上げ、その具体的な 『展開状況』 『進捗状況』『A3用紙』1枚に纏め、 8分間で理路整然と分かり易く 『役員』に説明せよ・・・というものでした。

上司であるM部長は当時係長であった私にこれをマル投げしてくれました。

字が上手な部下と2人で苦心惨憺して手書きで完成させ、レクチャーして発表会場に送り込みました。発表の場でM部長が受けた『御指導』は増幅してお叱りの言葉としてM部長から告げられ『出来の悪い部下を持つと苦労する』と嫌みまで言われましたが、係長の分際で部長教育をして頂いた事は、私にとっては大変貴重な体験でした。

『現場応援』『管理能力向上プログラム』『原体験』『現地現物』即ち 『現場』に出掛け 『現物』を観察し、 何故?何故?・・・としつこく追求し 『真因』を探り当て対策するという 『行動規範』を作る基になったと考えています。

改善のお手伝いをしている中国企業の話

ここからは毎月1週間ほど改善のお手伝いをしている中国企業の話です。

現場は最新の設備が設置してあり、欧米Makerの基幹システムが導入され、Officeでは事務職員がDisplayとKeyboardを前に黙々と働いていました。ところが現場には在庫の山があり、一方では欠品があり、とても有名な基幹システムの成果とは思えないので、得意の 何故?何故?を中国人にぶつけました。

その結果、驚くべき事に、誰も基幹システムのLogicを知らず、部品が納入されてもその日のうちに入力すれば良いと考え、帰り間際に纏めて入力していました。Supplierへの納入指示は、設計変更があって生産計画から全て再計算して手入力する製品群があり、2〜3日遅れて発注している部品もありました。

中には経営者の親戚だと言って、Keyboardもろくに打てないような人がおり、仕事が遅いどころか、遅れても平気で帰ってしまう始末・・・・でした。

ところで、皆さまの会社は上記の中国の例を他山の石としてご確認をお勧めします。

8月と言えば、本年度の新入社員が入社教育を終え職場配属になる時期でもあります。

製造現場に作業員として配属になる場合の職場教育は、適性検査や、工具取扱の基礎訓練、作業訓練、作業要領書による 『やらねばならない事』『やってはならない事』等を叩き込まれて仕事に就きます。

私の知るかぎり、製造工場ではあるレベルで実施されています。

Desktop PC

その一方で、殆どの大卒者は事務所にいて、DisplayとKeyboardを相手にしての作業になりますが、御社の大卒新入社員の場合はどんな基礎教育がなされるのでしょうか。

Keyboard操作の基礎訓練は・・・、Computer Literacy はどう把握していますか?基幹システムのLogicは教え込んでいますか・・・・

Displayに表示されているデータは何処でどのようにして計測し、どのようにして入力された、いつのデーターなのでしょうか?

新入社教育のみならず、現在各部書でDisplayとKeyboardでやっている仕事の総点検と、業務分掌の見直しをお薦めします。

特にものづくりの基本中に基本 『生産計画』はどのような基本データーをもとに、誰が、どのようなLogicで立案して、どんな手続きで決定され、どのような速さで展開しているのか?

幾つかの会社で調査しましたが、多くは ノンキャリ社員の勘でやられていました。

2017年7月

今こそ『現地現物』に立ち返るべし

今,日本国中が将棋界の奇跡,藤井聡太4段の快進撃に沸き返っています。

29連勝と言う空前の記録を作り,7月2日には30連勝なるか・・・・将棋ファンのみならず全国民が固唾を呑んで見守って居ます。これを受けてテレビ各局は競って藤井四段のこれまで成長してきた経緯や,日常の努力などの話題を取り上げ,将棋界を代表するような皆様が解説しています。私も引き込まれて見ていました。

テレビを見ながら私は知人から聞いた 『人類は【A】,【B】の二つの能力を身につけることで今日の繁栄を手に入れた』と言う知人の話を思い出しました。以下その受け売りを含めて,今,日本で起きている事への私の懸念をお話ししたいと思います。

【A】人間と人間を繋ぐ能力

先ずその一つであるCommunicationについては,数十万年前の旧石器時代迄遡ります。 この頃人類は幾つかの家族同居の形で洞窟に住んでいた事が分かっています。群れをなして生活し,自分達より強い獲物を狩るためにはかなり高度な意思伝達が必要になります。当時は乏しい語彙と,顔の表情や身振り手振りでお互いの気持や考えを伝え合っていたと考えられています。この状態が数十万年続いたので,表情やしぐさで相手の気持ちを推し測ると言う人類共有の能力を身につけたのでした。

その後各地に散り,独自の言語や風習を身につけていき,集落から国家という大規模な集団を営むようになって行きますが,祖先から引き継いだこの能力があるので,言葉の壁を越えて,演劇が鑑賞され,外国映画が上映されるのだと言います・・・・・・・・・。

【B】人間と自然界を繋ぐ能力

自然界を観察し,獲物を見つける能力,食べ頃の果実を探し当てる能力などを指し,この能力のお陰で人類は生存し続けました。更に進んで動物を飼い慣らして家畜とし,稔っても種子を飛び散らさない植物を発見し,それを栽培する事で大量の穀物を手に入れ,更に布を織り,衣服を作り,家屋を作りました。

やがて太陽や星の動きから?を作り,?に合わせて集落全員で農作業をすることで効率を上げドンドン豊になって行き,人類は文明を作り上げて来たのでした。

この【A】,【B】の能力は誰もが持っていますが,社会の進化に伴い分業化されていき,【A】の優れた人は人々を束ねる仕事である『士』『商』に就き,【B】に秀でた人は自然界の恵を人々が必要とする商品に変えて提供する,『農』『工』を担うようになって行きました。

この分担が定着し,更に細分化・専門化が進むと【A】と【B】の気質も以下のように分かれていきました。

【A】を得意とする人間群(社会科学的)の特徴

会社勤めの殆どの人がこの分類に入りますが,眼前にある『情報』や『学説』の正否よりも,回りの人間関係に一番の関心を持ち,中に溶け込み,同質化することに腐心します。更に能力のある人達は,その人間関係の中でLeader Shipを握るようになり,更にその人間関係を操る事に喜びを感じるようになります。

結果,自社を如何に成長させるかと言ったことより,社内の人間関係に強い関心を持ち,どの派閥に属していた方が有利か,誰のいう事を聞くべきかなどを嗅ぎ分ける事に腐心します。能力のある人は社内に然るべき人脈を構築します。

特に長けた人は社外にも太い人脈を作り上げて居ます。そして一旦社内で解決すべき課題が発生したときには,その人脈を活かして素速く解決してしまいます。それが社内で揺るぎない評価を得,出世街道を上り詰めやがてTopになる場合が多いようです。客観的にも現状維持にはこれは必要なことです。

しかし,その解決法は 『既存の自社の枠組み』の中で行われることなので,市場とのズレから来る問題には,逆に,事態を悪化させてしまいます。

一刻を争う応急処置は 『既存の自社の枠組み』の中で行うとしても,本対策案作成時には 『現地現物』に徹して【B】の人間を使って自社の仕事の進め方と現状の市場との関係を厳しく点検し,半歩先んじて市場をリードできているか否かを確認するところから始めなければ成りません。

この点検を怠ると会社は ガラパゴス化されていきます。

【B】を得意とする人間群(自然科学的)の特徴

人間関係よりも自然現象に強い関心を持ち,眼前にある『情報』や『定説』の正否を気にします。それを確かめようとして一人で観察したり,考え込んだりする性癖があり,これを『変人』とか『奇人』として軽蔑されたりします。

又『他人の心』や『その場の雰囲気』を察することが苦手なので『KY(空気が読めない)』として馬鹿にされたりします。しかし自然現象に対する感性は鋭く,会社において異常を発見して事故を未然に防いだり,品質不良の真因を解明したりするのはこの人達なのです。

更に能力に長けた人は市場の変化をCatchして、 『新商品』を産み出したり,自社の業績を観察して 『経営課題』を顕在化させるなど,会社存続のための最も大切な部分を担う人材として必要な人材なのです。

人物像が想像出来ない方はテレビドラマの『相棒』の 杉下右京や,『科捜研の女』の 榊マリコをご覧ください。両名がそのキャラを良く表現しています。

ここからは,この文脈上で,企業の改革・改善業務に携わっている専門家としての立場から,ここ4〜5年ものづくり現場で私が感じ始めた心配事を御説明します。

【A】が最近抱え込んだ問題

少子化の為,子供達が群れになって遊ぶ中での下級生へのいたわりや,LeaderShipを発揮しての競い合うのを磨く場がなくなり,面と向かって議論し言い負かす機会も消えました。

更にスマホの普及で,隣り合って座っても共にスマホをのぞき込み,ゲームをするか,遠くの同年のメル友と絵文字の通信をする・・・という生活になってしまっています。顔を合わせて交わす会話は「えっ!うそ!ほんと!すげ〜!」で代表されるような語彙の少ない会話。これが10余年前大学で教員をしていた頃の学生達のコミュニケションに対する実感でした。

この学生達の世代が今,会社の実務を担う30代として働いているのです。

【B】が最近抱え込んだ問題

自然界との接点を担う【B】は,もっと大変な事になっています。子育て中の世代は都会暮らしのため,その子供達が大自然を自分の五感で感じる機会が少なくなってしまいました。学校教材の文章や画像で学ぶしかありません。

1990年代になるとインターネットが普及し,検索すればどのような情報も入手出来,項目数は膨大になりましたが,内容は文字と画像には変わりなく,拙いことに誰でも投稿出来るため,『群盲象を評す』と言う印度の寓話通りの情報が溢れているのも事実です。

その一方で,Computerのいわゆる2000年問題が顕在化し,これを乗り越えるために各企業は社内の基幹システムを更新したと言われています。その結果,会社内では営業からの注文情報を入力さえすれば,Computerが「材料発注」「生産指示」「納品指示」等迄やってくれるので, 『現地現物』による確認は全く不要で,各部書はその 「指示」に従って作業すれば良い・・・という状況が20年近く続いていると言う事になります。

社員の年齢から見ると,課長層の中堅以下新入社員に至るまで,入社以来,Display上のComputerからの指示を見て,Keyboardを叩いて回答するという作業しか教えられず,どんなLogicで動いているのか,現場がどうなって居るのか,どんな時間差なのか 『現地現物』で確認できないまま作業している・・・と言う実態があるのです。

以上が,かねてから抱いていた私の懸念です。

最近,この「懸念」が現実となってきました。

マスコミ報道を私流に解釈すれば, 東芝がおかしくなったのは,米国の原発建設会社の 『現地現物』による調査をせず, Display(Computerが出した結論)で判断して買収し,その後もDisplayとKey-boardで対応してきたためで,もっと言えば【A】の人材ばかりで 『現地現物』の出来る【B】の人材がいなかった為と理解出来ます。

タカタの倒産も同様で,ワンマン経営だったと聞いていますが,真因追求し,市場の動きを見極め,場合によってはクビを覚悟で社長を説得する【B】の人材がいなかった為であると言えます。

三菱のMRJの開発遅れも,開発現場で真摯「妙手」を追い求める【B】の人材の絶対量が不足しているためと聞いています。

そんな懸念を抱いていたときに見たのが,

中学生である藤井四段の目を見張る活躍でした!

将棋の世界は,抽象化されて独自のルールがあるモノの,一種の数学であり,正に【B】の世界です。この活躍に刺激されて,小中学生が挑戦し始めたと言います。大変嬉しいいことです。

卓球の世界でも同じく中学生の張本選手が世界の強豪を相手に大活躍をしている様子です。卓球は相手の動きを瞬時に読み,数手先の体勢の乱れを誘う知的スポーツで在ると聞きました。

正に【B】の世界です。彼等が刺激になって【B】の人材が輩出することを願うばかりです。

最後に皆さまにお願いしたいこと・・・

小中学生の諸君は,

人間関係を気にせず,藤井四段や張本選手が頑張っているように, どんな分野でも良いから 『成りたい自分の未来像』を目指してがんばってください。

それが自分を変え,周りを変えていくし,社会が求める人材になって行けます。

何よりもその過程が,皆さんの 『充実した人生』そのものなのです。

現に会社に勤めていて,私の懸念に同感する皆様は,

Displayから離れて現場に行き,関わっている製品を手に取って先ずその質感を味わってください。

次に,Key-boardを叩いて出した現場への指示は,何処に出され,実際にはどんな作業が始まり,どう終わり,終わったらどんな形でそれがSystemに入力されるのか, 『現地現物』で調べ,自社に中で御自分が何をやっているのか・・・を確認して下さい。

それが終わったら,このホームページに連載されている 『Jコスト改革の考え方』 シリーズをお読み下さい。読み終わると,あなたに 『生き甲斐,働き甲斐』を与えてくれる道が見えてくることでしょう。

2017年6月

先月のある夕方,新幹線で名古屋に帰ろうと京都駅に着いたとき,駅の中に大勢の高校生と思われる生徒達が床に座っていました。床に直に尻を付けて座るという経験を持たない私には,その姿に強烈な印象を受けて,本職である「生産」「物流」に関しての思いがこみ上げてきました。

[1]団体客を運ぶ事の難しさ

数百人単位の生徒達を引率することは大変なことですから,分単位で運行する新幹線にJust In Timeで対応することは大変なので,早めに来て待たせるしかないことは理解出来ました。引率する先生方のご苦労が偲ばれます。

受け入れる新幹線側も大変で,ほぼ満席に近い状態で,厳しい定時運行している新幹線に,いきなり1列車に数百人の団体客を乗せたらダイヤも乱れ苦情が殺到するでしょう。常連の客には迷惑を掛けないように時刻表には書いていない団体専用列車を仕立て,定期列車の合間を縫って運行している様子に,流石と思いました。

トヨタ生産方式の立場で説明しますと,新幹線の通常運行は,老若男女分け隔て無く席を準備し,乗車券は1人単位で販売しています。これはトヨタ生産方式が目指す究極の姿,即ち平準化しての『1個流し』に他なりません。その結果顧客は待たずに乗りたい列車の席を確保出来るのです。工場でも,市場の要求し即時に対応出来るのです。

逆に 『平準化』『1個流し』が出来ている工場では,大ロットの注文は折角の 『平準化』を 崩してしまうので困るのです。

現に私が現役でトヨタのSupplier改善をしていたとき,アンチトヨタ式の自動車工場から突発的に大ロットの注文が飛び込み,その自動車会社の分は在庫を抱えて対応せざるを得なかった苦い思い出があります。

そのことがあったので,修学旅行客の扱いに感心したのでした。

そして営業関係の方に申し上げたいのは,大量に受注するのは結構なのですが,納品は是非 『平準化』して自社の生産を乱さないようにしてほしいものです。

[2]昔の渡し舟は・・・・

現在の列車は「定時不定量」輸送で,客を待たせない運航ですが,昔の渡し舟では,専用の舟があり,専任の船頭さんが居たのに平気で客を待たせ運行回数を任意に減らして,あたかも「定量不定期」的運用していたようです。

因みにトヨタ生産方式では,運搬の改善とは,1番は橋を架けて運搬を無くすことであり,2番は最大限多頻度で運ぶ事を教えています。この渡し舟で言えば,船頭さんが居て,日当を支払っているのであれば,その船頭さんに目一杯働いていただき,客が一人でも居たならその客を向こう岸に運べ・・・

つまり,客の待ち時間を最小にする事を考えよと教えています。

実際は「舟宿」という言葉が残っているように,渡し場には宿屋や茶屋があり,旅人はしばし休憩を取った後で舟に乗り川を渡った・・・とされています。

その実態は上方落語に,客が舟宿に入って飲食を注文し代金を払い終わった頃を見計らって「舟が出るぞ〜」という呼び声を出させ,飲食を出さずに客を舟に送り,儲けている悪徳舟宿の話がありますが,顧客第1に考えLead-Time短縮居に努力したとは言いがたい時代だったのでしょう。

舟宿を倉庫,渡し舟をトラック業界に置き換えれば現代でも思い当たることがあるような気もします。

[3]生産計画に新幹線方式を採ったら・・・・

毎年,盆・暮れ・5月連休には新幹線の混み具合がニュースになります。時刻表を調べるとそれ以外の季節でもこまめに臨時列車を走らせているのが分かります。多分前年度までの実績をもとに運行ダイヤ(生産計画に相当?)を決め,「切符と言う商品」を売り出して居て,各所にある自動販売機で購入できるような短いOrder-to-Delivery-Lead-Timeで売っている事が理解出来ます。

一般企業で,この新幹線の切符と同じ方式で生産したらどうなるでしょうか?

例えば,1日千台という需要予測に基づいて月間の生産計画を立て,生産の構え(列車のダイヤに相当)を行います。顧客からのオーダーは,何日の何時の列車の指定席といった具合に生産計画を決め,かち会ったら次の列車をお薦めして決めていきます。

これによって顧客に画期的に短いOrder-to-Delivery-Lead-Timeを提供でき,更にこれによって顧客に到着時刻を告げるように,完成時刻をお知らせできます。

一般に予算原価法を採用している会社では,空席があるとその分が赤字になる設定をしますから,顧客のLead-Time要求よりも自社の見かけの利益を追求し,常に満席になるようにダイヤを組もうとします。これが多在庫を抱え資金繰りに苦しむ経営を迫っている元凶です。

新幹線の席のように,工場のコンベア上に例え空席があっても,常にLead-Time最短を目指し顧客の満足を得て市場を掴み高収益で成長する企業を目指すべきだ・・・・イレギュラーな大口商談には,それなりの事前交渉を持ち,修学旅行のように特別列車を仕立てるとか,乗客の絶対量が違うJR東海とJR西日本との間では乗客の利便性(Lead-Time)確保する為に,乗り継ぎ地点では頻度は確保した上で,16両連結を8両連結や4両連結など車両数を減らし収益性を確保している等々,学ぶべき点が多い。

これから「ものづくり経営」は顧客への利便性の向上が必須と思われるが,新幹線が色々示唆を与えてくれる。もっとしっかり勉強しようと車中で考えながら帰途に就きました。

2017年4月

季節のご挨拶

2017年も桜咲く4月となりました。念願の会社に入社された方,職場を異動された方,昇格された方,それらの方々を迎え入れる職場の皆様,新規蒔き直しで,意を新たにして仕事に取り組まれていると思います。心からエールをお送りします。

某国の議会では宰相が本人及びその夫人に対し『 忖度がなかった』と大見得を切り,マスコミを賑わしていますが,この事は『他山の石』として学ぶことが多くあります。

例えば,普段何気なく「名古屋の『ういろう』は美味しいね」と口にしていれば,名古屋に出張した部下は,報告時に「ういろう」の土産を差し出すでしょう。これは,部下が上司にする 忖度です。突っ返せば部下が傷つきます。「気を遣わせて悪かったね」といって受け取ることでしょう。これは上司が部下にする 忖度です。

この事を,業務の標準化という観点から見れば,「出張に土産は不要」というルールがない故に起きた事態と考えるべき事柄なのです。

次に,昇格した方が心すべき「上に立つ者の言動」という観点からは「帝王学」というテーマがあります。帝王学といえば,昭和天皇は大相撲が大好きでしたが贔屓力士は口外しませんでした。園遊会等では労をねぎらったお言葉に御返事差し上げた内容に対して『あっそう』としかお答えにならなかったことも有名です。並んでいる参加者1人ひとりに平等に接するには『あっそう』と答えるしかなかっただという解説を聞いた事があります。

上司は仕事では部下に厳しく接する一方で,個人としては平等に接することが大切で,お追従が通用するような職場関係を作ってはならないという事でしょう。トヨタでは 『やらねばならない事とやってはいけない事の二つしか無い』と教えられ,それを明示したモノが 『表準作業』であると教えられてきました。現場でも事務所でも,状況に応じてやったりやらなかったりすることに根源的な問題があるのです。

最後に,異動で新職場に行くと『あれっ!?』と思う業務や慣習にぶつかることがあるでしょう。その時,『郷に入れば 郷に従え』と疑問点をぶっつけず黙って従うのも『 忖度』のうちと思います。『おかしい』と思ったことは言葉に出し,納得いくまで議論し,職場を変えるというのも,定期異動の効用なのです。『石の上にも3年』という言葉は冷たくて座り心地の悪い石の上でも年月が経てば居心地が良くなってしまい,課題が見えなくなってしまうという警鐘を意味しているのです。

先日,小泉農政部会長が,東京オリンピックの選手食堂に提供できる日本産食材はGAPの認可を受けていないため1%にも満たない・・・・という発言をしました。日本の農政関係者がロンドン大会から実施されていた規約の国内展開を怠った為に起きた事態でした。このように部下が上司の顔色を窺い『 忖度』すれば組織はガラパゴス化してしまうのです。

新規蒔き直しのこの時期に『 忖度』を我が事として職場の点検をお勧めします。

2017年2月

2017年度の取り組みについて

いよいよ米国ではトランプ政権がスタートし,TPP離脱,NAFTA再交渉,国境に壁を作る等の大統領令に署名したとの報道がありました。欧州では英国がECからの離脱作業に入り,EC内各国でも離脱活動が活発化しつつあるとか・・・

これは,広大な自由貿易圏を前提にし,量産効果を狙って数カ所の巨大工場から全世界に向けて商品を届けると言う戦略の見直しを迫る動きであります。

弊社の表看板 『Jコスト論』に従えば,大量生産工場内では原価は安くなる場合もあるが,お客様との距離が遠くなるために,運賃等の諸経費が嵩むだけでなく,商品のLead-Time,言い換えれば資金の回転が遅くなってしまいかえって不利であることが導かれます。

又,弊社のもう一つの表看板の 『本流トヨタ方式』にある 『共存共栄』の哲学からは,地域の人を雇い,地域のSupplierから部品を買い,地域に納税する事や,問題が生じたとき当意即妙で対応する等々,自律分散型の工場となり,その地域に無くてはならない存在として認められる事こそが,企業の継続の鍵であると示唆しています。

つまり,米英の昨今の動きは弊社の目指す方向に対してはむしろ 順風と言えます。

此の肝となるのが 『第一線の管理者の養成』にあります。

弊社は昨年に続き今年も,中国では監視カメラの大手Dahua社,国内では最大手K社の 『管理者による工場改革』のお手伝いを中心において取り組んで参ります。新規のご要望があれば改革のお手伝いに参じたいと思いますが,余力は限りがあり,全ての皆様のご要望にはお応えできませんますので,本年はこのWebサイトに

『Jコスト改革の考え方』

というコラムを設け毎月当社の改革のノウハウの一端を御説明することにしました。
その中では,良い例も悪い例も主として中国企業の実例を引用してお話しして行きますが,何よりの目玉は, 日本企業の中で現在進行中の『Jコスト改革』の実例として伊牟田社長,鈴木工場長を中心として全社一丸となって今日も進めているナブテスコ社鉄道カンパニーの活動事例を同社の協力を得て紹介できることにあります。

毎月楽しみにして頂くとともに,是非,友人にもご紹介下さい。

註:伊牟田・鈴木の両氏には弊社より『Jコスト改善士』の称号を贈呈しています。
業務内容ページの 8.『Jコスト改善士』の資格審査・登録・管理業務欄の「Jコスト改善士」の称号贈呈をご参照下さい。

2017年1月

年頭に当たり当社の本年度の取り組みに付いて御説明致します。

昨年後半からは,米国,英国,比国等々で『国家や地域の壁』を温存させて,雇用を守ろうという大きなうねりがわき起こって来ました。

これをモノづくりの世界に置き換えると,物価の安い途上国に大規模な工場を建設し,そこから全世界に向けて販売してそのコスト差で儲けるという構造から『各地域に,販売量に似合った規模の工場を建設し,その地域の人を雇用し,その地域のSupplierを活用し,得た利益は地域に還元する・・・』という 『共存共栄』型の・・・言ってみれば 『トヨタ自動車設立時のConcept』と同じ, 『地産地消型』でなければ,地元から歓迎されないし,売れない・・・こんな時代が到来したと見るべきと思います。

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
『トヨタ生産方式 ―脱規模の経営をめざして』大野 耐一(著)
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正に,1978年大野耐一氏の著書の副題 〜脱・規模の経営を目指して〜の時代が来たと言うべきで,弊社から見れば 『本流トヨタ方式』『Jコスト論』の活躍の場の到来に他なりません。

本年はこんな思いで,継続案件につきましては意を新たにして取り組んで参ります。新規のご要望があれば改革のお手伝いに参じたいと思いますが,余力は限りがあり,全ての皆様のご要望にはお応えできませんますので,本年はこのHPに

『Jコスト改革の考え方』

というコラムを設け月1回の割合で,当社の改革のノウハウの一端を御説明致します。

その中では,良い例も悪い例も主として中国企業の実例を引用してお話ししますが,何よりの目玉は, 日本企業の中で現在進行中の『Jコスト改革』の実例として伊牟田社長,鈴木工場長を中心として全社一丸となって今日も進めているナブテスコ社鉄道カンパニーの活動事例を同社の協力を得て紹介できることにあります。
是非,お読み頂くと共に,友人にもご紹介下さい。

註:伊牟田・鈴木の両氏には弊社より『Jコスト改善士』の称号を贈呈しています。
<業務内容ページの 8.『Jコスト改善士』の資格審査・登録・管理業務欄の「Jコスト改善士」の称号贈呈をご参照下さい。>

2016年4月

多品種少量生産は大先輩の中国料理に学ぼう

寧波の工場でご馳走になった昼食の様子
寧波の工場でご馳走になった昼食の様子

中国ではその気候風土から1日3食とも調理したての温かいもの食べます。又,『医食同源』と言われますが,食材にはそれぞれ薬効があり,バランス良く組み合わせて食事にすることが長寿の秘訣であり,もてなしと信じています。それ故,商談の後の宴席では,主人は客人の健康のために自ら料理を薬効一品一品吟味しながら注文し,料理か来ればその薬効を説明し薦めます。

写真の料理もそうでした。そのような場で出される料理は味も見た目も,そのタイミングも大切になります。

一般に巷間の中国料理店では Order-to-Delivery-Lead-Timeの短さを競っています。中には砂時計で計り,間に合わなかったら一皿余分にサービスする店もあります。これぞ数千年間続いた中国料理店間の『多品種少量生産』競争の成果で,その仕組みは次の3種類に集約でき,他産業でも参考にすべきことと思います。

【A】『飲茶方式』

餃子や焼売,饅頭などの点心は時間を要し客が待てないので,出来上がりを店頭に置き,客はそれを自分の皿に移して食する方式で商われています。言わば在庫販売に相当する方式です。それ故 Order-to-Delivery-Lead-Time最短です。客が好きな点心を取っていけば,その空蒸籠が信号になって,直ちに食べた分が後補充されるのです。

一般工業製品を扱っている人が見落としがちなのは,料理の特異性です。何時でも食べられるように保温していると味が落ちて売り物にならなくなります。飲茶はそのリスクを負いながら在庫後補充生産しているのです。

【B】『一般受注料理』

店に来てメニューを見ての注文し,注文通りに出来た料理を味わう場合を言います。受注生産となりますが,驚くほど短い Order-to-Delivery-Lead-Timeで料理が揃います。ある会合で店主にその秘密を聞くと,その答は以下のようなモノでした。

  1. 料理が素速く出来るように,キチンと下準備してあること
  2. 注文を受けた順番に一皿ずつ仕上げること
  3. 減ってきた下準備材料は常に後補充すること

これはトヨタ生産方式と全く同じで,店主達と意気投合した経験があります。

【B】飯店型生産; 受注即時生産(毎日)
【B】飯店型生産; 受注即時生産(毎日)

【C】熊の掌料理のような『特別注文料理』

月に1回あるか無いかの特別注文の料理は,材料を仕入れて置くわけには行かないので,御客から事前に予約注文を頂き,材料仕入れてから料理する方式です。従って Order-to-Delivery-Lead-Timeの中に仕入れのLead-Timeが入っているので大変長く,中には数ヶ月かかる場合もあり得るのです。

上記の【A】【B】【C】の3方式が数千年に渡る中国料理店の厳しい『多品種少量生産』競争を経て確立された生産方式なのです。これを基にして自社のものづくり能力の診断をすることが出来ます。

現状は日本の殆どの会社が『熊の掌料理』タイプ

日本では1990年頃から各社競って生産管理のコンピューター化を進めはじめ,今日まで四半世紀経ち,今ではBOM(部品表)でしか調達が出来ない体質になってしまい,具体的な生産品目と数量が決まらないと何一つ調達できないのが普通です。

その生産計画も,依然として月に一度の役員出席の『生産会議』の承認を必要としているため,注文すれば10分ぐらいで出来る中国料理とは程遠く,量産品でも顧客から注文を受けてから必要部品の手配に入るのが普通で,お届けするまでに数ヶ月かかる事になっている企業が多いのです。御社はどうでしょうか?

中国の主流は週次計画日次生産『一般中国料理』タイプ

弊社がお手伝いしている中国の会社は,N−4月から需要予測をはじめN-1月から週次予測で生産枠を構え,日々の受注で生産を行う形を完成させようとしています。

最新の生産機器を備え,生産管理は米国製のシステムを導入していますが,システムと作業指示,標準作業等への繋がり等の現場管理を弊社がお手伝いしているのです。

実際の運用の中では,受注が大きく変動します。谷の時には『飲茶タイプ』も取り入れ稼働を確保し,山の時はその在庫を転用して繋ぐなど正に実践的『一般中国料理』タイプで,それを更に磨きを掛けようとしているのでした。

東芝,SHARPが相次いで中国の軍門に降るのは何故か・・

日本を支えてきた大手電機メーカーが,相次いで中国の軍門に降って話題となって居ます。そうなってしまった要因は諸説ありますが,硬直化した月次生産体制がその大きな要因で在ると考えて居ります。

一方,社内改革で週次化を成し遂げていたというPanasonic社は,一時期赤字を出しましたが見事復活しています。

如何にHit商品を持っていたとしてもいずれ売れなくなります。市場の振れに即応した生産が出来る仕組みを持った会社,即 Order-to-Delivery-Lead-Timeの短さが今求められていると考えて居ります。

その点,御社は如何でしょうか。中国料理を味わいながらお考え下さい。

2016年1月

下の写真は昨年中国杭州市『岳飛廟』中庭で見た風景です。そこには中国固有の三本足の鼎(かなえ)と四本足の鹿のブロンズ像が飾ってありました。
本来はどういう意味で鼎と鹿を飾ってあるのか,説明は聞けませんでしたが,今回は此の写真を基に,動物は何故『四本足』なのか?
について考えてみたいと思います。

何故?鼎(かなえ)3本足,鹿4本足
何故?鼎(かなえ)3本足,鹿4本足

『三本足』は,カメラの三脚でお馴染みのようにしっかりと安定します。力学の世界では,一本足,二本足は手を放すと倒れるので『不安定』と言い三本足は倒れないので『安定』と言います。四本足になると,ギッタンバッコを始めますので『不静定(Redundancy)冗長』と言います。

では,鹿をはじめ動物は何故『四本足』なのでしょうか?

それは, 『動くため』です。

動物は,鼎のように安定した三本足で立った上で,浮いた四本目の足で一歩前に踏出し,重心を移して次の三本足状態にし,浮かせた足を前に出す・・・・この繰り返しで進みます。つまり, 四本目の足は前進するための足なのです。

因みにトヨタ生産方式では,自部署を自ら変えていく為に 四本目の足に相当する組織を必ず持ちます。

通常の組織

通常の組織図
通常の組織図

上図を基に説明しましょう。

製造部がA・B・Cの3課から構成されているとします。仕事には必ず,忙しくなったり,暇になったりします。構成人員も,休暇を取ったり,時には病気になったりしますから,充分余力を持たせた人員構成になっているのが普通です。

このような組織では,ABC各課長は自分の成績を上げるのに懸命になり,足の引っ張り合いになりこそすれ,部全体をよくすることは毛頭考えません。

部長には手子がいませんから,部を変える手立てがありません。今筆者が改善のお手伝いをしている中国の会社は正にこの状態で,変えようとしても手が付けられない状態です。

皆様の会社はどうでしょうか?

トヨタの組織

トヨタの組織図
トヨタの組織図

トヨタ生産方式では必ず改革するための『四本目の足』の相当する,ラインから外れたスタッフ組織を作ります。

『トヨタの組織』の図をご覧下さい。
部長は,ABC各課がやっと回る程度の要員を残し,各課の出来る人間から前述の四本目の足に相当する『技術員室』又は『改善室』に移籍させるのです。

そうするとどうなるでしょうか?

  1. ABC各課の構成員は,仕事の出来る先輩達がいなくなるので,仕事はきつくなりますが,相対的には出世したことになります。頑張れば更に成長できる機会を与えられたことになりますから,組織は活性化し,個人は成長します。困ったときには同じ部内にいるので聞けば良いのです。
  2. 例えばA課長自身も,職を部下に代行させ一時的に技術員室に籍を置き,B課の勉強をし,やがてB課長になり,その延長でC課長もやり部長職を勤める人材に成長していきます。このように課長間のローテーションも容易になります。
  3. 部長は,技術員室の人材を使って,課の間にまたがる課題の解決を皮切りに部全体の効率と,新時代に向けての自己改革が可能になるのです。
  4. この活動を進める間に部長業務を代行できる課長を育て,部長は工場長の業務を手伝い,更に成長していくのです。
  5. 課の中にも課長の裁量で,四本目の足である改善班を設置できます。筆者が組立課長時代,総工数の3%程を課の改善班として確保し,優秀な班長クラスの人材を集め『課長特命業務』として現場の改善指導,品質問題の解決等に活躍してもらいました。課としての成果はもちろん,活動した人達は大きく成長し,3名は課長職まで昇格しました。

四本目の足としてスタッフ部門を設けるということは,トヨタ生産方式の基本概念です。これを現場に展開したときは 『寄せる・停める』活動と言います。

例えば5人で平均85%の作業量だと分かれば,4人に3%のストレッチ目標を課した103%の仕事を割り付け,残りの一人が20%に満たない仕事をこなしながら,4人のReliefをすると言う形を取ります。

そして5人が不平等にならないように,定期的なローテーションの掛けるのですが,103%と20%に満たない仕事の交換は比較的容易ですから,こうする事で5人全てが全部の作業をおぼえるだけでなく,常に速さへの挑戦が出来,強固な作業集団が出来るのです。

『常在戦場』という国会議員が好んで使っている言葉がありますが,民間企業でも,怠惰に落ちやすい日常をムリヤリ四本目の足を作る事で,わざと戦場のような状態にし,従業員を鍛え育てることが,管理者の重要な仕事なのです。

先回ダーヴィンの 『唯一生き残れるのは,変化できるものである』と言う言葉を紹介しましたが,その文脈で,変化するための一つの基本方策として『四本目の足』のお話しをしました。

皆様の改革の参考になれば幸いです。

2015年9月

最近,下記のような名言に巡り会い,膝を打って合点しました。

最も強い者が生き残るのではなく、

最も賢い者が生き延びるでもない。

唯一生き残るのは、変化できる者である。

チャールズ・ダーウィン

チャールズ・ダーウィン

それは,以下のような経験があるからです。

弊社設立の目的は,広く社会に 『本流トヨタ方式』『Jコスト論』を広め,皆様の会社が従業員とともに 変化に対応し強くたくましく成長するお手伝いをすることにあるので, Client 様の実情に応じた報酬を頂き,中小零細企業から大企業まで改革のお手伝いをさせて頂いております。

発足当時,複数の超一流企業の熱心な社内改革のお手伝いをさせて頂き,好処遇を受け,弊社の実力が評価されたと実感し誇りを持って仕事を進めていました。こういう真摯に改革を進める会社を【タイプA】としましょう。

同じ時期,同程度の超一流企業から幹部教育の依頼がありました。自社の経営基盤は盤石で何ら改革の必要性はないと考えてか教育担当役員の関心事は, 費用削減のみで,教育内容より先に非常勤講師並みの価格でやれと言う高飛車の態度でした。こういう会社を【タイプB】としましょう。

以来様々な会社とお付き合いし,【タイプA】と【タイプB】を分けるものは何かと疑問に思いながら,数多くの会社の皆様とお話ししている内に,両者を分けるのは,経営Topを取り巻く中間管理者層の意識の違いにあると知りました。

弊社は,大野耐一氏の 『今のやり方は一番拙いと思え,もっとましなやり方があると信じて改革に取り組め』と言う教えを継承していますが,【タイプA】はこれと同じ文脈で,常に他社と比較して自社の実態を客観的に捉えている人が多いのに対し,特に 自己資金比率の高い会社は,客観的で厳しい目を持つ外部金融機関の干渉が少ないため,自社の経営基盤が盤石であると盲信しやすく,他社との比較よりは自社内の人間関係に意を払う中間管理者が多くなって【タイプB】の会社になりやすいと気がつきました。
一番顕著な症状は 『在庫が増えても原価を下げようとする』性癖で,弊社はこれを 『高自己資本症候群』と名付けて注目しております。

皆様も ,『最も強い者』を『自己資本比率が高い会社』と読み, 『最も賢い者』を『ヒット商品を持っている会社』と読み替えてみましょう。自社を盤石と思った瞬間から, 冒険を避け現体制を維持し,出費さえ抑えれば会社は安泰という考えになってしまいがちで,この空気が改革マインドを衰退させ,いわゆるガラパコス化を進めてしまい,気がついた時には手の打ちようがない事態になって居ると考えるべきでしょう。

ダーヴィンの進化論は,正に企業の進化論でもあることを知りました。

因みに中国では,経済成長とともに 心ある経営者は,欧米系を真似した, 『労働者を道具扱いにする経営』に疑問を感じ,熱心に 『盛和塾』『トヨタ生産方式』いわゆる日本的経営を学ぼうとしています。

今回の中国出張では,講演会の後,参加の中小企業の経営者に呼ばれた夕食では,夜の10時まで教えを請われ,翌朝もホテルから空港までの道中はもちろん,搭乗時間ギリギリまで懇談を続けました。そこまでして彼等が知りたがっているのは,
(1)社長としての 『帝王学』
(2)上司としての 『部下の育て方』等々で,
決してお金の儲け方ではありませんでした。

日本では講演の後の質問は 『工数低減法』や 『原価低減法』に集中するのと対照的で,ダーウィンの 『最も強い者』『最も賢い者』が現在の日本企業であり 『変化できる者』が中国のこれらの会社を指すのでは・・・,と危惧の念に駆られています。

ダーウィンの名言を胸に自社の実態をじっくり観察することをお勧め致します。

2015年1月

お正月に因んでミカンとリンゴの箱買いのお話しを致します。

昔の物流容器は,わらで作った叺(かます)と俵(たわら),木製のミカン箱,リンゴ箱, 防湿加工した茶箱がその主流で,箱単独で市販され,広く使われたものでした。

ミカン箱に入ったミカンはぎゅうぎゅうに詰められ,大きなミカンは四角形に変形していました。リンゴ箱を開けると中は籾殻が一杯詰まっていて,探ると籾殻(もみがら)の中にリンゴがそっと入っていました。今はどちらも段ボールに変わっていますがその歴史を引きずっているようです。

ミカンを『箱買い』するとき,大きさの等級と目方で指定して注文します。

同じ『箱買い』でも,リンゴは触ると傷物になるので,大きさと何個入りかで注文し,箱の中は絶対に干渉しないように,昔の籾殻に代わってスペーサーが入っています。(写真参考)

リンゴの箱詰め
リンゴの箱詰め
ミカン箱
ミカン箱

ミカン箱は,運賃や荷扱いを考え小さめに出来ていて,5kg詰めであれば5,000g−Zero+のミカン1個分の精度で詰め込んでいるようです。生産管理で言えば,1日の稼働時間460分に対して与える生産計画を460分−0分+30分の精度で指示出来るようになって居ると例えることが出来ます。

リンゴの箱詰めは,選別された大きさのリンゴを,写真で言えば13個詰めるだけです。 何g詰めたか,空間はどれだけ余っているかは一切考えません。生産管理で見れば, 過去に1日で13個造った実績があるので,今日も13個生産するように現場に指示するだけで,この大きさなら15個はいけるとは一切考えない事を意味し,ミカンのように 1日の稼働時間460分に対して正味何分の作業を指示したかの把握の無い状態であるとしてお話しを進めます。

こうして見たとき,『ミカンタイプ』の生産管理では1日の稼働時間460分に対し正味何分の作業を与えたか 『時間という計量値』で管理していますから,『改善』で作業時間を短縮すればその分だけその分だけ余分に造ることが出来,成果を摘み取ることが出来ます。

一方『リンゴタイプ』の生産管理では,例えば1日に 13個という計数値(数える数値)で指示していますから,改善で作業時間が短縮しても(リンゴが小さくなっても)13個という指示のまま造るだけで,成果を摘み取ることは出来ないのです。

ここで御提案ですが,2015年のはじめの仕事として,御社の生産管理は,『ミカンタイプ (時間という計量値で指示し,結果を管理している)』なのか,『リンゴタイプ (1日に何個という計数値指示し,管理している)』なのか,お確かめください。もし不幸にして『リンゴタイプ』であれば,何はさておき,『ミカンタイプ』に変更することをお薦めします。

確認のついでに,御社の下記のような全工程に亘っての流れもご確認ください。

@材料受入⇒A材料出庫し⇒B加工⇒C組立⇒D出庫準備⇒E納品

例え『ミカンタイプの管理』であっても,

全体最適≡@〜Eの最適値の和・・・・・・(1)

と信じて@〜Eの各部門の原価の競争をさせると,1日の生産量の競い合いを始め, 生産量の差が在庫となって@〜Eの部門間に積み上がってしまいます。その結果在庫金額が増え,全体のLead-Timeが長くなって会社を危うくします。つまり,単純に競争させる場合には

全体最適≠@〜Eの最適値の和・・・・・・(2)

なのです。

関係式(1)が間違いで,関係式(2) が正しいと部下を説得する自信の無い方には, 昨年末に出版された

『コミック版ザ・ゴール』

を読むことをお薦めします。簡潔明瞭に事例を挙げて説明してあります。

註;原作者Goldratt博士はトヨタ生産方式の大野耐一氏を師と仰ぎ,自らを その後継者と称し,物理学者として『トヨタ生産方式』を研究し,現場育ちの我々とは 違った角度で『トヨタ生産方式』の本質を語っています。

在庫を増やさずに各部門を競争させるには,1日の生産量を指定して それを作るのに要する時間を@〜Eの部門間で競わせる必要があります。

@材料受入⇒A材料出庫し⇒B加工⇒C組立⇒D出庫準備⇒E納品

そうすると,どの部門が製造のネックになっているのかが日々見えてきます。同じ手法で,その部門のどの工程がネックになって居るかが分かります。

このネック工程の能力が会社全体の生産能力を決めてしまいますし,生産のLead-Timeに大きな影響を与えています。

巷間では『5S活動』や『ムダ取り』が流行っていますが,それは現場で働く人たちが自己実現のためには必須の改善活動です。

一方,会社組織をあげて成すべき現場改革は,全工程を見渡した上で

【A】 生産量のネック解消の視点から評価すれば

会社全体の余剰能力が向上し,増販出来れば固定費負担無しで増産でき 利益拡大が出来ます。

【B】 Lead-Timeのネック解消で評価すれば

受注⇔納品のLead-Time短縮は市場競争力を上げ値引き競争から逃れたり,
仕入⇔納品のLead-Time短縮は棚卸資産減少させ,その分のキャッシュが増え 新規事業に投資できます。

この『全体最適』の視点から自社のネックを顕在化し,解消させる改革が 閉塞感漂う今の日本で会社を成長させる道なのです。

お正月のミカンに関連づけて今成すべき改革のお話しをさせていただきましたが,この改革には弊社の提案する 『本流トヨタ方式』とそれを評価する 『Jコスト論』 が大変の役に立ちます。

弊社のホームページでも御説明していますが,上記キーワードをネットで検索いただくと より客観的にその中身を知ることが出来ます。

2015年,御社が 『全体最適』に向けた改革を断行し,アベノミクスの波に乗り 大いなるご発展を祈ってやみません。

2014年1月

昨今,日本経済の復調の兆しと,トヨタ本体の劇的回復によりTPS(トヨタ生産方式)の底力を見直す動きが見られます。
しかし残念なことに巷間のTPSは『玉石混淆』で,中には全く正反対の指導をする先生も居ます。更にTPS以外にも様々な改善手法があります。

そこでこれを機に 『改善の目的は何か』を,実施される皆さまご自身で改めてよく考えてみること。
更に 『その目的を果たすのに,この手段は妥当か』についてもご自身でを良く吟味する必要が在ります。

例えば,TPSの基本 『4S(整理・整頓・清掃・清潔)』にもうひとつ 『S』を加えた 『5S活動』が最近流行って居ます。

『5S』にも以下の二通りのgroupがあります。

  • 『4S』+『躾』と捉え,現場を厳しく鍛え上げる活動を展開するgroup
  • 『4S』+『System』と捉え, 『4S』の乱れで 『System』の拙さを顕在化させ,ムリ・ムラを駆逐し,市場の変動に即応できるSystemを構築していくgroup

『5S』ひとつ取り上げても,このように取り組み方に違いがあるのです。

さて,日本経済の好転の兆しか, 仕事が増えたという声を彼方此方で聞きます。 御社には, 新しい商談が持ち込まれたとき,月産何個まで対応出来るか 即答できる仕組みがありますか?そしてその 商談を即実施できる体制が在りますか?

冬期を耐え,夏期には枝を伸ばし果実を実らせ成長する果樹の如く,不況に耐えながら,新しい商談と言うチャンスを逃さず 『取り込める体制づくり』『改革の目的』のひとつと弊社は考えて居ります。

『Cost Down』は多くの会社が取り組んで居ますが,現在の生産量を前提として,余分と思われる 『設備・要員』を削減していく改善を行います。
余力を削っていきますから,新しい商談と言うチャンスへの 対応は困難で,縮小し続けることになります。

『生産性向上活動』は,現状の 『設備・要員』で更なる受注に備えて 余力を産み出す活動で,新しい商談に対応出来ますが,生産量に応じて在庫が増える傾向があり,ともすると 運転資金の手当てが必要になります。

これに対して弊社の進める 『リードタイム短縮活動』はトヨタの先達の教えである 『品質を確保してリードタイム短縮に挑戦すれば儲けは後から付いてくる・・・』の正しさを説明した会計論 『Jコスト論』に基づいており,改善の対象を,従来の『設備・要員』ではなく, 『製品の流れ速さ』に置きます。

具体的には,材料が会社に納入されてから完成品になって納入されるまでの全工程を 『正味加工時間』『停滞時間』に分け, 停滞時間を短縮する活動を展開します。

製品1単位に着目すれば 『正味加工時間』は長いとされるNC加工機でも 数時間です。プレスに至っては 数秒間に過ぎません。弊社の実績では,Client様に『Value Stream Map』を描いて頂き,情報の流れの不備を気付いて頂き,連絡を密にするだけで,何の投資も無く 『棚卸資産の半減』を成し遂げてきました。棚卸資産の減った分は,会社の会計として 『莫大な現金』として手元に残ります。現場では広大なスペースが空きます。先行生産が出来なくなるので,設備の非稼働時間が明確になり,手入れが行き届き,故障や不良が減り,自ずと生産性が向上します。

何よりの強みは,棚卸資産(=生産のリードタイム)が減ることで,注文頂いてからの 納期の約束でき,しかも競合他社より遙かに 短納期になります。それが新しい 商談を呼び込むことになり,しかも,新商談の受入れの可否を即断できるようもなるのです。

1978年,大野耐一氏は著書『トヨタ生産方式』のサブタイトルを 『脱・規模の経営を目指して』と付けました。これと,先達の『品質を確保して・・・・・・・』を合わせて,弊社は 『量産によるCost Downに頼らず,高品質・短納期に邁進し,Netで世界に宣伝すれば,成長と繁栄の道は開ける』と言うConceptとして捉えております。
これに加えて 『本流トヨタ方式』・『Jコスト論』のと言う『ものの見方・考え方』を御案内し,皆さまの 『更なる飛躍に向けての改革』のお手伝いを致しております。

本年もよろしくお引き回しのほどをお願い致します。

最後に,皆様方が今まで成し遂げてきた改革の 『目的は何か』『その手段は妥当か』 の再吟味を,新年を迎えたこの日に行うことを強くお勧め致します。

追伸 拙さが見つかったとき,方針変更はいつが良いか

『それは,今でしょ!』

2013年1月

知名度が上がってきました。

『Jコスト論』はお陰様で,会計学の先生方からのご支援を受けるようになり, 一橋大学大学院をはじめ,海外でもMBAの教科にも取り入れられるまでになりました。

名刺交換すると「今,社内で有志が集まって『Jコスト論』の勉強会をやっています。」と声を掛けて頂いたり,各地からメールで質問を受けたりするようになってきました。

「Google で検索したら『トヨタ生産方式』より遙かに『Jコスト論』の方がヒット数が多かった。」とわざわざ教えてくれる人もいました。これは『Jコスト論』が,現状に問題意識を持ち,やる気を持った社員の間に深く静かに浸透している証拠と捉えております。

弊社が提案する改革とは

実例で説明しますと, クライアント様の改善チームに 『本流トヨタ方式』とそれを会計的に説明する 『Jコスト論』を教材にして, 『ものの見方,考え方』を教育し,教育を受けた改善チームが自社の営業・調達・生産計画・製造・物流を横串を刺して, 業務の進め方を自分達の目で 確認し,自分達の頭で 考え,自分達の手で 改善するのを 弊社が見守り,指導致しました。

結果として,設備投資無しで,棚卸資産半減(約40億円の現金を浮かし),余剰な生産能力(設備能力・スペース・要員)を顕在化させ,改善チームが一人前に育ちました。 この余剰な生産能力を増産に向ければ,増産分は変動費だけで済みますから多大な 営業利益を生むことになります。注文が来るまでの間,設備の点検・改良,従業員の
多技能化を計り,更なる業務拡大を投資無しで実現させました。

このように,更なる飛躍のための経営資源を捻出することと,改革をし続ける力を持った人材を育てる事を弊社はお手伝い致します。

主要国のリーダーが替わり,閉塞感からの脱却に向けて世界が動こうとしている今年, 御社が取り組むべき改革は,まさにここにあると考えております。

今年から中国へも出かけます。

昨年暮れから,中国,インドからの引き合いがあり,今年は海外でも活躍の場が広がる予定です。特に中国では,万博も終わって丁度日本の,1970年なかばのような雰囲気で,現地企業は中国国内市場の競争激化を受けて海外に進出しようと考え,そのためには現在の自社の『品質』と『リードタイム』に問題があるから直したい,とのことでした。

トヨタ自動車は米国進出を前にしてで1982年頃に豊田英二会長,豊田章一郎社長の強い意志の元で大野耐一氏の後継者,楠兼敬氏が指揮官となって『工販合併』『品質保証活動』『商品物流改革』という大改革を同時並行で実施しました。

中国企業からの注文は,当時のトヨタと全く重なるもので,これこそ『本流トヨタ方式』の目指す改革そのものでした。

『本流トヨタ方式』を説明する拙著『考えるトヨタの現場』『トヨタ流現場の人づくり』の2冊が昨年中国語になり出版されました。ここで語られている哲学は,そのルートは中国の古典『四書五経』にあり,中国人のDNAにマッチしているものなのです。弊社はこれをツールにして中国本土での改革活動のお手伝いをしようと考えております。

皆さんの会社で,中国人従業員の教育に拙著(詳細は 著書ページご覧下さい。)で勉強させるのであれば本書をお勧めします。

中国人幹部に対して弊社が講演する場合,拙著を訳してくれた趙城立氏(経営学博士)が通訳をするオプションを準備しています。ここでは中国人に分かり難い部分は,中国人の立場から丁寧に解説しながら通訳してくれます。これもお勧めです。