株式会社 Jコスト研究所

Google Translate

J-Cost Research Center

本流トヨタ方式・Jコスト論の御説明

1.『本流トヨタ方式』とは何か

発端は,日本のものづくりを支えるために制定された 『ものづくり基本法』に基づき,厚労省・文科省・経団連肝煎りで設立された『ものつくり大学』へ,『 トヨタ生産方式を教える教授第1号』としてトヨタから社命で出向した事にあります。

大学教授として 『トヨタ生産方式』を教材としてまとめる段になって,トヨタで成し遂げた業績は単なる事例であり,使ってきた教材はグループ内での内輪話にすぎず,大学で教えるには 『学問としての普遍性』に欠ける事を思い知らされました。

一方巷間に目をやると, 『群盲象を評す』の状態で,様々な人々が『垣間見たトヨタの現場』を『目指すべきトヨタ方式』と捉え,本を書いたり,コンサル業をやったりして,世間様に迷惑を掛け,それが基で 『トヨタ生産方式アレルギー』が蔓延し始めている事も知りました。

そこで 『教授第1号』の責務は,織機の発明に端を発し自動車産業の中で育て上げられた 『トヨタ生産方式のエッセンス』を抽出して,どの産業にも使える 『ものの見方・考え方』としてまとめあげて 『本流トヨタ方式』と名付ける事を決め,大学教授の立場で研究に励みました。

その成果は 著作になって居ます。

『トヨタ式現場管理』2016ビジネス社

『トヨタ流現場の人材育成』2006日刊工業新聞社

『本流トヨタ方式』はネット上の連載コラムでもご覧になれます。

http://jbpress.ismedia.jp/category/toyota

2.『Jコスト論』とは何か

どのような高邁な経営哲学も,私企業であるからには利益を稼ぎ出さねば存続できません。『本流トヨタ方式』では, 「現場では『自働化』で品質を確保し,『Just In Time』でLead-Time短縮を邁進せよ,そうすれば,利益は後から付いてくる」というものでした。

具体的には,改善して数秒間浮かせたら,その時間を運搬や段替えに使い,Lead-Time短縮(在庫の低減)することで成果を会社業績に繋げておりました。

\begin{eqnarray} 利益 = 売値 - 原価 \tag{11} \end{eqnarray}

原価企画で使うべきこの式が現場管理にまで進出し,製造工数を減らせという要求が過度に浸透し現場が崩壊始めましたがその原因は,Lead-Time短縮効果を正当に 評価する方法が会計学に欠けていたためでした。

その Missing-Linkを埋めるべく考え出したのが 『Jコスト論』なのです。『Jコスト論』とは,一口で言えば儲けを預金金利の式(12)を使って計算しようというものです。

\begin{eqnarray} 預金利率 &=& \frac{利子}{預金額 \times 期間} \\ &=& \frac{利子}{預金額} \times \frac{1}{期間} \\ &=& 原価利益率 \times \frac{1}{\text{Lead-Time}} \tag{12} \end{eqnarray}

従来の(11)式は1回あたりの儲けを表し,(12)式はその商売を1年間に何回繰り返せるかを表しています。Lead-Timeを半分にすれば2倍も儲かる事になるのです。この『Jコスト論』は会計学研究者の間に浸透していて将来が楽しみです。弊社では 『Jコスト研究会』を主催しています。

以下の文献に詳しく記載されています。

  1. 田中正知「時間軸を入れた収益性評価法の一考察〜Jコスト論〜」
    『IEレビュー』Vol.45 No.1 234号
  2. 田中正知「物流と荷主企業の収益性に関する一考察〜Jコス論〜」
    『海運経済研究』第38号 2004年
  3. 田中正知「自動車産業に於けるSCMとその評価方法の一考察〜Jコスト論〜」
    『日本造船学会論文集』第5号 2004年
  4. 田中正知「ものづくり会計学現場実践編」東京大学
    MMRC-DP208,2008年
  5. 田中正知「Jコスト論と改善活動」
    『企業会計』9月号2008年
  6. 田中 正知『トヨタ式カイゼンの会計学』
    中経出版社 2009年
  7. 田中正知「ロジスティクスが勝敗を決める」
    LOGISTICS SYSTEMS 2015 Vol.24 新年号

最新に状況は 『Jコスト論』とネット検索下さい。

3.『本流トヨタ方式』も『Jコスト論』も日々進化しています。

『本流トヨタ方式』には,『KAIZEN』と『改革』の二つがある話を昨年致しました。欧米系の会社は,本社で決めたManualを従業員に徹底的に覚えさせ,Operationの向上を図ります。

『本流トヨタ方式』では教えられたManualが現場にMatchingしない場合は従業員に変更を提案する権限を与えている。この事は従業員を 考える能力を持った人間として認めたことになり,Improvementとは違うので『KAIZEN』と欧米で言われるようになったとお話ししました。最近は更に新しい定義づけをしています。

『KAIZEN』とは, 『会社から命じられたManualを,完全分解し,その意図を完全理解し,自分で自分に命じることだ』と定義し直しています。

新しい定義では会社から命じられたのと見た目は同じでも,前者は 奴隷としての作業ですが,後者は 自営業者として自覚を持ち臨機応変に対処出来る作業者になるのです。

これは一例に過ぎませんが,『本流トヨタ方式』も『Jコスト論』も 日々進化し深化しています。

昨年秋から中国中堅プラントメーカーの改革のもお手伝いを始めました。改革は初めてなので,『本流トヨタ方式』の講義からはじめ,数年掛けて3S,5S,標準作業,Value Stream Map,Reverse-Engineering, 中国初の『Jコスト論』を導入し弊社の仕事の完成形を作りたいと意気込んでいます。

更地に教え込むようなものなので,彼等の飲み込みも速く,逆に教えられることも多く,このProjectで更に 『本流トヨタ方式』と『Jコスト論』が進化することが予想され,Excitingな年になりそうです。