株式会社 Jコスト研究所

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連載コラム『TOYOTAとNISSANの歴史をJコスト論で斬る』 第 3回目

[3] 豐田喜一郎が『トヨタ自動車』を創業する

シリーズは3回目になりましたが,日産の状況が急変し,日産の状況が急変し,何よりもトランプUが乗用車に25%の輸入関税を4月3日から掛けると発表しましたので,その急変についてコメントを申し述べます.今回以降『最近の自動車業界を巡る主な出来事』という欄を作り,毎月冒頭にはここ1カ月間の状況についての筆者の見方を述べ,その後連載の内容に入って行きたいと思います.

『最近の自動車業界を巡る主な出来事』

その1)日産の内田社長の退任

報道によれば日産自動車は3月11日に取締役会を開き3月31日付けで内田誠現社長は退任し後任にはイヴァン・エスピノーサ氏(46歳)が就任するとのことです.新体制は……

その2)鉄鋼・アルミの高額関税が3月12日発令

電力価格が高い日本は,アルミは精錬ペイしないのでインゴットを輸入しています.よって直接は関係しません.ちなみに北米で使うアルミホイールはカナダから買っています.

鉄鋼については,トランプTの時は,日本から輸出する鉄鋼については自動車に使うモノは特殊鋼で,米国の自動車も必要としているとして除外されましたが,今回は含まれています.『所長挨拶』のところでも書きましたが,カナダ・メキシコ・EUは激しく反対し,強烈な対抗策に出ています.残念ながら,日本政府にはこれといった反応がありません.

この重大事に石破総理の10万円の商品券が国会でのトップの関心事になっています.残念なことです.

その3)4月3日から,乗用車と部品に,25%の輸入関税決定

完成車輸出は日本の外貨獲得の目玉となっております.25%の輸入関税が課せられては,大変なことになると推察されます.日本国政府として対抗策を期待したいものです.

3-1. 高関税による米国自動車市場の変化のシミュレーション

1999年ゴーンが『日産リバイバル・プラン』を発表したとき,余り外に出て来ない原価構成比が下記の数字で公開されていました.

\begin{equation} 総原価 100 = 60 (購入費用) + 17 (内製加工費) + 23 (販管費 \times 一般管理費) \end{equation}

これをベースに,売値3万ドルといわれる米国産車Aの費用構成は以下のように推定されます.

\begin{equation} $12,000 (購入品) + $3,400 (加工費) + $4,600 (販管費) + $5,000 (\mathrm{Maker} 粗利) + $5,000 (販社粗利) = $30,000 (店頭表示価格) \end{equation}

外国生産車Bは,工場出荷価格は\$20,000で同じでも,国境を越えての輸送諸費用等々に\$1,500余分に掛かると推定されますので,外国生産車Bの店頭価格は\$31,500となります.それゆえ現状では,現地生産車Aと輸入した車両Bとの違いは以下のようになります.

\begin{equation} 現地生産車 A; $30,000 \qquad \mathrm{vs} \qquad 外国生産車 B; $31,500 \end{equation}

今回のトランプUの関税25%は,米国産車Aには,購入品の半分が輸入品と思われるので,前記の購入費は\$12,000⇒\$13,500になります.故に米国産車Aの店頭価格は\$31,500

外国産車Bは出荷価格\$25,000に25%の課税が掛かるからその額\$6,250値上がりします.

故に輸入車Bの店頭価格は

\begin{equation} $31,500 + $6,250 = $37,750 \end{equation}

まとめると,それぞれの店頭価格は以下のようになります.

\begin{equation} \begin{array}{lllll} 米国産車A; & 課税前 $30,000 & \Rightarrow & 関税課税後 $31,500 & 5 \% \uparrow \\ 外国生産車B; & 課税前 $31,500 & \Rightarrow & 関税課税後 $37,750 & 20 \% \uparrow \end{array} \end{equation}

3-2. 高関税に対する自動車メーカーの取り組み

(1) TOYOTAでは,『車の値段は市場が決める』と教えられる

店側が値段が\$○○ですと主張しても,御客様(買い手)の同意がなければ×です.そこには厳しいDealがあるわけです.

昔の話ですが1980年代始め,燃費が良くて故障が少ない日本車が飛ぶように売れました.

この事態に,自由貿易を推進する共和党のレーガン大統領は『輸入制限を課すことができない』ので日本側に『自主規制』を求められました.

いざ自主規制をかけますと,値引き一切なしの定価販売は当たり前,中にはプレミアム付きで売れました.トヨタとしては販売店に変な癖がつかないようにプレミアを禁止し,定価販売にこだわりましたが,しっかり儲けたと言われています.

『車の値段は市場が決める』の典型例がそこにありました.

(2) 値引きはどのように行われているのか

販売店は『売れて』始めてお金が入るので,なんとか売ろうと『自分のマージン内』で値引きをして売りますが,いよいよ売れなくなってくると『Maker』が出てきて,自分の取り分から『販売奨励金』を支給して値引きして売ります.

2024年度第3四半期,NISSANは北米で赤字だったと言う事は,メーカーとしての取り分も値引きして売っていたことになります.

たまたま現在米国では,鳥インフルエンザの影響もあって生産が落ち,品薄になってしまい,米国人の朝食には卵が欠かせませんので,値段も高騰し米国政府は各方面から緊急輸入を図っていると報道されています.

(3) 値引きしても売れないものがある

『卵』のように消費者が買ったらすぐに食べてしまうモノの類いは『一般消費財』と言われています.日々消費していくので,値段が毎日変わっても何の不思議もありません.高い頻度で購入しなければなら無いので,安い店を選んで,そこから購入することになります.それゆえ他店よりも少しでも安いことをPRし売上を伸ばす競争が始まります.

ところが自動車のようなものは『耐久消費財』と言われており,消費して行くには間違いないのですが,待つことが出来るのが特徴です.新車を買いたいと思っても,今の車が動いてくれている間は,我慢できます.トランプUによる経済の混乱,諸物価高騰の間は,新車購入が我慢できてしまいます.

『愛馬・愛車』という言葉があるように,自動車は単なる『もの』ではありません.Ownerの好みに合った『自動車』とそれをバックアップする『サービス』を伴った……『時間と空間』が『自動車の本体』なのです.そのサービス料金が自動車の価格なのです.

(4) 10%値上の『フェラーリ』は,25%の輸入関税が撤廃後どうする?

25%の輸入関税に対して,フェラーリは販売価格10% Upで対応すると発表しました.トランプの25%関税は,経済混乱時ものです.トランプ大統領退任後も続けるということはとても考えられません.大統領が代わって25%の貿易関税がなくなった場合,フェラーリは販売価格を上げた分の10%下げるのでしょうか?それで顧客が納得するでしょうか…?

(5) 日本メーカーの取るべき対応

2024年度米国内自動車販売実績 (Netより作成)
メーカー (内米国産%) 販売台数 前年比 シェア 国別シェア
トヨタ (内 56%) 2,332,623 3.70 pt 14.58% 日本 38.04%
ホンダ (内 62%) 1,628,000 8.80 pt 10.17%
日産 (内 62%) 924,008 2.80 pt 5.78%
SUBARU (内 52%) 667,725 5.60 pt 4.17%
マツダ (内 17%) 424,382 16.80 pt 2.65%
三菱 109,843 26.00 pt 0.69%
BMW (MINIを含む) 397,645 0.50 pt 2.49% ドイツ 6.06%
メルセデス・ベンツ 374,101 0.00 pt 2.34%
アウディ 196,576 ▲14.00 pt 1.23%
GM 2,705,080 4.30 pt 16.91% アメリカ 38.03%
フォード 2,078,832 4.20 pt 12.99%
テスラ 1,300,000 7.30 pt 8.13%
韓国等その他 2,861,185 17.88% 他 17.88%
合計販売台数 16,000,000 100.00%

(上表はネット上の情報を使って筆者が合成したモノで,韓国その他は推定値です.)

この表では,ビッグスリーからCHRYSLERが外国の会社ステランティスに移り米国車としてカウントされていません.その他に入っていると思ってください.

米国内でのみ生産しているMakerは,『フォード』と『テスラ』のみで,『GM』は40%程メキシコ等で生産していると言われます.『ドイツ』のメーカーも,米国内に工場を持ち,売上の半分程度は米国内で生産していると言われています.

先の表にあるように何と日本のメーカーの米国内販売シェア何と38%を超えています.そしてこれらに大半は,米国内の工場で生産されているのです.

TOYOTA (56%),HONDA (62%),NISSAN (61%),……

自動車メーカー各社が何をどれだけ米国内で生産するかは,各社の車型毎に月々で変動しており,調べようがありませんが,各社米国生産が半数とすれば,2024年の販売実績1600万台とされていますので

  • 米国生産車Aグループは950万台……部品の課税: 推定5%↑
  • 輸入車Bグループは650万台……車両に課税: 推定20%↑

トランプ課税によって,『リーマンShock』以上の不況になるとされていますので,米国の自動車市場は縮小されます.2025年は2024年の70%規模に縮小された新車市場になると仮定すれば,『1,120万台規模』になります.当然のことながら各社米国内の工場をフル稼働させ,『950万台⇒1050万台』に増産させ,不足の70万台が輸入車になると思います.

そのような対策を打った上で,トランプ大統領の言うとおり,米国内生産車は,関税分を素直に組み入れた価格,約5%値上げします.

外部で生産してした車にはキチンと輸入税を掛け,店頭価格は約20%値上げをします.

北米市場の全メーカーが同じ歩調でトランプUの方針に従うのです.まさに『皆でやれば怖くない』のです.トランプ大統領は4年間です.4年経てばまた春が来ます.台数が減った間にどんな改革が出来たかで,新大統領の下で市場規模が拡大され新たな競争が始まりますが,そこで大きな鯖付きます.

下の表はトヨタの北米地区の完成車工場の一覧表です(TOYOTAのHP引用).現状では,北米地区の販売台数の半分をこれらの工場で生産している様です.注目すべきは『HEV生産の準備が整っている』ことです.今回のトランプ関税では,TOYOTAはおそらくこの機を逃さずこれらの工場をフル稼働させ,HEV車のシェアを,値引きせずに取りに行くことでしょう.

TOYOTAの北米地区の完成車工場
会社名 生産開始年月 主要生産品目
カナダ Toyota Motor Manufacturing Canada Inc. (TMMC) 1988.11 RX (含 HEV), RAV4 (含 HEV), NX (含 HEV)
アメリカ Toyota Motor Manufacturing, Kentucky, Inc. (TMMK) 1988.5 RAV4 HEV, カムリ HEV, ES (含 HEV)
Toyota Motor Manufacturing, Indiana, Inc. (TMMI) 1999.2 グランドハイランダー (含 HEV, PHEV), ハイランダー (含 HEV), シエナ HEV, TX (含 HEV)
Toyota Motor Manufacturing, Texas, Inc. (TMMTX) 2006.11 タンドラ (含 HEV), セコイア HEV
Toyota Motor Manufacturing, Mississippi, Inc. (TMMMS) 2011.1 カローラ
Mazda Toyota Manufacturing, U.S.A., Inc. (MTM) 2021.9 カローラクロス (含 HEV)
メキシコ Toyota Motor Manufacturing de Baja California S. de R.L. de C.V. (TMMBC) 2004.9 タコマ
Toyota Motor Manufacturing de Guanajuato (TMMGT) 2019.12 タコマ (含 HEV)

先に述べた,カナダ政府の,電力と石油に対して25%の報復関税で,米国における『電力』と『ガソリン』の値上げは確実です.極端に燃費の悪い『赤い州』で流行って居る『大型ピックアップ』を直撃し,大型中古ガソリン車を直撃します.そしてハイブリッド車に需要は集中することでしょう.

表を見ますと,HEV(TOYOTAのハイブリッド車)の準備が終わっているようにも見えます.

OBとしては,『災い転じて福となす』の言葉通りこれを契機に,米国内にHEVの確固たる基盤を作ってもらいたいと念じています.

2025年3月31日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知