2024年1月
2024年 所長の年頭ご挨拶
皆様 明けましておめでとうございます.
長期低迷を打破するために,官民挙げて物価上昇を超える賃上げの必要性が謳われ,年末の株価は34年振りの高値を付け,2024年度の成長を予感させています.
どうやら永年続いた異次元の金融緩和の呪縛から外れ,金利のある世界へ戻ろうとしている実感があります.経営体質の変革を成し遂げた会社に取っては,希望に満ちた新年でしょう.旧態然のまま,金利と賃金の上昇を迎える会社との差が益々大きくなりつつあります.
貴社は当然,なすべき社内改革をやり遂げ,次なる高みを目指して龍の如く駆け上がる準備は完了していると思います.益々の御発展を祈るばかりです.
日本は農業国で,豊かな自然に恵まれ,春夏秋冬季節の変化がハッキリしており,時には地震や噴火,台風,干魃もありますがすぐに平常に戻っていました.
そこで日本には『明けない夜はない』とか,『待てば海路の日和あり』といった諺が大手を振って闊歩していて,災害に遭っても壊れた部分を修理さえしておけば,後はかっての日常に戻ることが出来る……という潜在意識が強いのも事実です.
1990年以降の日本の長期凋落の原因はそこにあるという指摘もあります.
弊社は弊社なりに世界情勢を俯瞰して洞察を重ねた結論として,『ガザ空爆攻撃以降,世界は『未知の・経済大混乱』に向けて突入し始めた』という結論に達しました.
以下その理由【A】,【B】,【C】,【D】,【E】を申し述べます.
【A】昨年から始まったウクライナ戦争,ロシアが勝利する?
世界の世論は『正義は勝つ』と信じ,ロシアがウクライナから撤退すると考えてきましたが,米国・EUの支援疲れで,いずれウクライナはロシア領になる公算が大きくなりました.その戦果として黒海の制海権・ウクライナの農業・工業を手中に収める.その勢いでモルドバ・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリーを勢力圏に組み込む.そして,全世界を『エネリギーと食料を餌にして人口増で悩むこの地球を支配していく…….プーチンが大統領に再選されその任期2030年までにその形ができていく……というシナリオが現実味を帯びてきました.
【B】今起きているイスラエルのガザ攻撃で世界が変わった
この攻撃では既に2万人余の子供を含めた一般市民を犠牲にしているとされ,その映像が全世界に配信されています.1970年代の第T次中東戦争では,石油ショックを引き起こし,世界経済に激震が走りました.今回のガザ攻撃は,イスラエルのパレスチナ殲滅作戦ではとも受け止められ,パレスチナと同じ宗教である全世界のイスラム教徒(世界人口の23%)の強い反感を買っています.
一方,ユダヤ人1400万人の内イスラエルに630万人,米国に570万人居るとされていますが,彼等は米国の政界に食い入り強い影響力を発揮しているとされています.一方,旧約聖書(ユダヤ教の聖書)と新約聖書を信仰の源とする米国福音派は,全米の25%を占める巨大組織で,ユダヤ教と近しい関係にあるとされ,この関係が,国連安全保障理事会で,停戦案にひとり米国のみが拒否権発動となったと言われます.
このような背後関係で,ガザ攻撃が続くほど,世界のLeaderとして君臨してきた米国の権威が失墜していく事になるのです.言い換えれば,日本経済が恩恵を受けてきた米国の自由主義経済圏の勢力が衰え,中国のような権威主義経済圏が力を増して来るという事です.
【C】異常気象が急速に拡大している事実
マスコミでは『地球温暖化が進んでいる,阻止する為には炭酸ガスの排出を○○まで減らさなければいけない』という単純な話になっていますが,これは世界の金融機関が投資を引き出すための戦略であると考えた方が良く,地球の気象というのはそんな生易しいものではありません.
メートル法は地球の北極から赤道までの距離を1万kmとして導かれて居ますから,1周4万km,従って地球の半径は6,366kmとなります.一方,地球を取り巻く大気の厚みは地表から100kmとされています.しかし地表から約10kmまでが,地表の蒸気で雲ができたり,それが雨になったり雪になったりするいわゆる『対流圏』で,その上空には『地表の天候』には余り関与しない成層圏があります.
地球の天候とは半径6,366kmの地球,表面が8,000mを越えるヒマラヤ山脈や,4,000越の南極大陸の山,巨大な太平洋とその沿岸にそそり立つロッキー山脈やアンデス山脈等々で,流れを妨げられながら,地表から10kmの厚みの空気が地表の回転と共に半日は太陽の光を受けながら,どのような挙動をするかが,その複雑な空気の流れを解明するのが『地球気象学』です.
数多くのスーパーコンピューターを組み合わせることによって地球全体の気象変化をシュミレーションできると信じながら世界中の科学者が挑戦していて,そのコンピューターのことを『地球シミュレーター』と呼んでいます.
残念ながら,未だに解き明かしたという情報は聞いておりせん.例えばアマゾンの熱帯雨林百ヘクタールを牧畜業の草原に変えたとします.その土地から発する熱量・水分量・空気抵抗等が変わります.この変化は全地球の厚さ10kmの対流圏内の今までの空気の流れそのものを変えてしまいます.今年,霧雨しか降らなかったイギリスに豪雨があり,鉄道のトンネルが水没したとか,オーストラリやの草原が大洪水で湖と化し,カンガルーが溺死した等のニュースが飛び込んできますが,現在の地球シミュレーターでは何が原因かを特定できるところまで行っていないので,野放しになって居るのが現状です.やったモノ勝ちで,森林破壊は毎日進行しています.
【D】世界人口の爆発
『ヒトはこうして増えてきた−20万年の人口変遷史』(大塚隆太郎/新潮社)をもとに,田中の知見を加え,更に主な宗教の教祖の年代を加味しますと新しい発見があります.
- ヒトが誕生の地アフリカ大陸から世界に旅だった1万年前頃は,マンモスが闊歩する氷河期で,狩猟採取生活の限界近く,世界人口は高々800万人だったと推定される.
- やがて地球はドンドン温暖化し,現代より高い気温になり,海面は上昇してきて(日本では縄文海進として,その海岸線は把握されて居る).ヒトは定住するようになり,浜辺で漁労採取が始まり,内陸部では農耕が始まりました.約5千年前に大河の河畔にエジプト・メソポタミア・インダス・中国の古代文明が誕生します.推定世界人口は約1千万人とされています.
ちなみに紀元前17世紀,遊牧民であったユダヤ人の族長アブラハムが,『神』の声を伝える形で『ユダヤ教』が始まりました.やがてその教えは『モーゼの十戒を守れば神から守られた民になる』という選民思想になり,他の宗教から疎まれる存在になって行くのでした.
それから約千年後の紀元前6世紀にインドシャカ族の王子が仏教を始めました.王子であるから何一つ不自由しないはずなのに,ヒトには誰も『愛する人を失うなど8つの苦しみがある』として,それを乗り越えていく方法を説いたのでした.
- 今から約2千年前,ローマ帝国が隆盛を極め,シーザーやクレオパトラが活躍した時代(BC30年頃)からキリスト処刑(AD30年頃)の頃の世界人口は約3億人と言われています.
ユダヤ教では,やがて神の使いである救世主があらわれ,救ってくれると信じられてきましたが,ユダヤ教徒であるキリストが,自らを神の子と称しながら,新しい解釈を広めていったので,怒ったユダヤ教徒が,ローマに対する反逆罪で告発し,ローマ政府に磔の刑をさせたとされ,弟子達がキリストの新しい解釈を集め『新約聖書』とし,キリスト教として広めました.キリスト教徒に中では,死に追い遣ったユダヤ教に反感を持つ人も多いといいます.
- その後,天候不順が引き金とされていますが民族の大移動が顕著になります.これによりローマ帝国は東西に分裂し,東ローマ帝国が欧州のLeader Shipを握ります.この頃,マホメットによりイスラム教が開始されます.中国には巨大な国際国家『唐』が台頭します.世界人口は横ばいだったとされています.
- 中世になると,鉄製の農機具が普及し,農業も進歩し多くの人を養えるようになっていきます.その一方でペストが流行ったり,数多くの戦争を行われるようになり,世界人口は穏やかな成長といったところでした.
- 16世紀になると,米大陸の発見,トマト・ポテト・トウモロコシ等が新大陸からもたらされ,食料として直接口に入れるもの,家畜の飼料として活用し,乳製品や肉類として食するものなどヨーロッパにおいては食生活に大変革をもたらしました.そしてその文化は全世界に広がっていきました.新天地を求めて米大陸に移住するものを増え,世界の人口は順調に増えてきました.18世紀中頃で推定人口7.2億人とされています.
- 産業革命が起こり,家内制工業が工場制工業になり,労働生産性は飛躍的に伸びました.1914年から始まった第一次世界大戦で,男性が戦場に取られる中,残された女性だけで武器弾薬を含む生産現場を守ったことから,女性の産業界進出が進み,産業構造が一変しました.大戦後,『ロシア帝国』が革命でソビエト連邦になり,『ドイツ帝国』『トルコ帝国』『オーストリー・ハンガリー帝国』は解体し数多くの共和国になりました.第T次世界大戦の戦場に武器弾薬を売り付けた米国は巨万の富を手に入れ,驚異的な発展を遂げ,世界経済の中心に躍り出ることになります.
1939年から始まった第U次世界大戦では,戦場は欧州大陸,イギリス,アフリカの植民地,アジアの植民地,太平洋の植民地等全世界に拡大され,日本本土も焼け野原になりました.戦争による死者数は5千万人とも言われます.1950年は第U次世界大戦の戦後処理が終わった時期でもありますが,この時の世界人口は25億人で,国連加盟数は60カ国でした.
- 世界人口が倍の50億人に達したのは1987年で,この年までの旧植民地が次々と独立し,連加盟国数は159カ国でした.言い換えれば欧米の植民地支配で抑えられてきた国力が,独立することによって解き放たれ,一気に人口増加に繋がったともいえます.
- 2022年11月世界の人口は80億人を超えました.その一方で,健康的な食事に手が届かない人々の数は2020年で約31億人に達すると言います.
【E】『異常気象』と『世界人口の増加』と『宗教』の関係
誰も触れたがらぬ『人口増』と異常気象の関係についてお話ししましょう.
野生動物は同じ場所に長時間滞在すると天敵に狙われやすいので,草原では大きく育った草を要領よく食べて,次の餌場に移っていきます.だから草原と草食動物は共存共栄できるのです.
一方家畜は,移動が制限された中での食事ですので,根こそぎ食べてしまい,豊かな草原は不毛の砂漠と化してしまいます.砂漠が拡大すると天候そのものがわってしまい,雨が降らなくなり,ますます砂漠化がんでいきます.これが今アフリカ大陸で起きている砂漠化の現象です.人口増が原因です.
次に,宗教と人口増の関係を調べてみましょう.以下の文章は旧約聖書の創世記の一部をネットから引用したものです.
神はノアとその息子たちを祝福して言われた.
「産めよ,増えよ,地に満ちよ.あらゆる地の獣,あらゆる空の鳥,あらゆる地を這うもの,あらゆる海の魚はあなたがたを恐れ,おののき,あなたがたの手に委ねられる.命のある動き回るものはすべて,あなたがたの食物となる.あなたがたに与えた青草と同じように,私はこれらすべてをあなたがたに与えた.ただ,肉はその命である血と一緒に食べてはならない.また,私はあなたがたの命である血が流された場合,その血の償いを求める.あらゆる獣に償いを求める.人に,その兄弟に,命の償いを求める.人の血を流す者は人によってその血を流される.神は人を神のかたちに造られたからである.あなたがたは,産めよ,増えよ.地に群がり,地に増えよ.」
神はノアと,彼と共にいる息子たちに言われた.
「私は今,あなたがたと,その後に続く子孫と契約を立てる.また,あなたがたと共にいるすべての生き物,すなわち,あなたがたと共にいる鳥,家畜,地のすべての獣と契約を立てる.箱舟を出たすべてのもの,地のすべての獣とである.私はあなたがたと契約を立てる.すべての肉なるものが大洪水によって滅ぼされることはもはやない.洪水が地を滅ぼすことはもはやない.」
さらに神は言われた.「あなたがた,および,あなたがたと共にいるすべての生き物と,代々とこしえに私が立てる契約のしるしはこれである.私は雲の中に私の虹を置いた.これが私と地との契約のしるしとなる.私が地の上に雲を起こすとき,雲に虹が現れる.その時,私は,あなたがたと,またすべての肉なる生き物と立てた契約を思い起こす.大洪水がすべての肉なるものを滅ぼすことはもはやない.雲に虹が現れるとき,私はそれを見て,神と地上のすべての肉なるあらゆる生き物との永遠の契約を思い起こす.」神はノアに言われた.「これが,私と地上のすべての肉なるものとの間に立てた契約のしるしである.」
(創世記 9:1-17)『聖書 聖書協会共同訳』より引用
この言葉にあるように,一神教では神はヒトを創り,ヒトのために大自然を創ったとなります.だからヒトは大自然を思う存分活用してよい,生き物は殺して喰ってよい,という解釈になります.
『産めよ 増やせよ 地に満ちよ』というのは,神の命で夫婦は子づくりに努めなければならない.妊娠するか否かは神の意志であり,人間が介在してはいけない……とう事を意味し,ユダヤ教,キリスト教,イスラム教共に避妊は禁じられています.米国の人工妊娠中絶反対運動はここから来ています.ちなみにイスラエルの女性の出生率は2.90人/人で,先進国ではTOP(カナダ1.4,米1.64)になっています.
『私はあなたがたの命である血が流された場合,その血の償いを求める.あらゆる獣に償いを求める.人に,その兄弟に,命の償いを求める.人の血を流す者は,によってその血を流される.神は人を神のかたちに造られたからである.』というのは,『神は自分の姿に似せてヒトを創った,そのヒトの血を流させた相手は,獣だろうが,人だろうがその兄弟を含め命の償いを求める』と理解出来,ハマスの攻撃を受けたイスラエルが,パレスチナ人の子どもや市民を2万人余殺害しても平然と攻撃をやめずに居る,その根拠はこの聖書の言葉に従っているからだ,と理解出来ます.
【A】,【B】,【C】,【D】,裏側に【E】で述べた一神教があり,その一神教の信者は地球人口80億人の55%にも達しています.肝心の『国際連合』は何の力を持たない事が分かった現在,我々民間企業は,これから益々激しくなる『異常気象』と,『人口増』による『飢餓,国境紛争,大量の難民』という嵐をどう生き延びるか……がこれからの課題になります.
旧約聖書によれば,神の啓示によってノアは巨大な方舟を造り,その中に残すべき大切なモノを積み込んで洪水を乗り切り,子孫を増やしたとありますが,我々世俗人ができるのは,自社のみを洪水から守る,『小舟』しかできません.
次回は来る混迷を乗り切る為の方策『ノアの小舟』について考えましょう.
2024年1月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知