株式会社 Jコスト研究所

Google Translate

J-Cost Research Center

連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムを月に一度の頻度で更新していきます。

第12回目の公開は8月を予定しています。

弊社の所信表明過去の所信表明はこちら

『隠れキリシタン』的現場管理になって居ませんか

6月30日『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』が世界文化遺産への登録が決まったとのこと,イスラム教に押され気味のキリスト教圏からの裏工作の匂いはあるモノの,日本にとって喜ばしいことであります。

今回の登録に当たって,幕府の弾圧があった期間だけ地下に潜伏し,弾圧が解かれる元のカソリック教会の信者として生活に戻った人達を『潜伏キリシタン』と定義づけられ,世界遺産の対象とされたのに対して,弾圧がなくなった後も頑なに本来のローマカソリック教会との接触を拒み続けている集団を『隠れキリシタン』として,対象から外しているのだそうです。

日本人から見てれば割り切れないものがありますが,キリスト教団から見れば『隠れキリシタン』として差別し,除外するのは当然のことでしょう。

宗教活動を『現場管理活動』に置き換えてみたとき,現場管理をコンサルする立場の弊社から見ると,外部に学ぶべき文献や,競うべき会社,教えを請えるコンサルなど数多く居る中で,あたかも『隠れキリシタン』のように外部との接触を断ち,先輩から教えられて事を後輩に教えていという仕組みで,伝言ゲームよろしく,途中で中味が変わって伝えられた現場管理が,『我が社の伝統』の名の下に珍重され,その結果社会から置き去りにされていき,ついには法律違反や偽検査データで納品するなど,一部では社会問題化している会社が,現に存在しています。

一つの実例として,『統計的品質管理(SQC)』のお話しをしましょう。1970年代,各企業は自社の経営基盤を固めるべく,競って『TQC(全社的品質管理)』の導入を図り,その習得の証として『デミング賞受賞』に挑戦しました。

現場ベースでいえば,職長以下作業員までのいわゆる技能系には,『QCサークル活動』と『品質改善七つ道具』が必須として教え込まれ,改善活動が展開されました。監督者には,部下を扱うためのノウハウとして『TWI』受講が義務づけられていました。

その一方で,製造部長以下一般技術員までのいわゆる技術系は,『SQC(統計的品質管理)』,『田口メソッド』等の修得が求められていました。それらを修得した上で,技能系が簡易な手法で改善した内容の技術的に裏付け,全体のシステム構築に貢献する事を担っていたのでした。

このような現場環境の中で,様々な問題解決や,品質向上が図られ,職場ルールや手順が決められたのでした。トヨタ流にいえば『作業の勘・コツ・急所』に当たります。

ところが,2000年になり,筆者が『ものつくり大学』で『品質管理』等を担当することになり,教科書お選びをしていて,ろくな教材が無いことを発見して,愕然となった記憶があります。『SQC』については自分が30年前に使ったいわゆる『青本』と言われるものを教科書として使う羽目になりました。

この事態を現場から見ると,1980年代から,『SQC』をはじめ現場管理系の理論を学んで入社した人は少なくなってしまい,21世紀の今日では,皆無と言って良いような事態になってはしないかと懸念されます。再度デミング賞を受け直すという話も聞きません。

と言うことは,少なくとも品質管理に関しては各社『隠れキリシタン的』な,外界とは遮断された,口伝として伝承された現場管理になって居ると疑って掛かった方が良いのでは…と思います。

検査データ捏造と言われた件も,『SQC』が説いている『不作為抽出』の意味を理解して居ない為,4個測定しなさいと指示されていたが,倍の8個のデータを測定し,最大値と最小値は誤差として捨て残り6個の測定値から気に入った4個の数値を記入していたかも知れません。もしそうだとすれば,『SQC』ではやってはいけないミスですが, 作業者にしてみれば,全て自ら測定したDETAですからウソの付いたという自覚は全くないのです。

此処で皆さまに御提案があります。それは現在現場にある全てのルールの根拠の再点検をやって頂きたいということです。ルールには次の四種類があります。

  • (A) 神様が決めたこと……材質,強度,自然界の法則等
  • (B) 政府が決めたこと……法律等々
  • (C) 会社が決めたこと……就業時間,業務分掌等々
  • (D) 職場で決めたこと・・・・勘・コツ作業順番

このうち自分達で変えられるのは(D)だけなのです。(A)~(C)は根拠を調べ,その根拠に沿うように見直していかなければなりません。

今西日本では大雨の為に甚大な被害が出ていると報道されています。被害に遭われた方には心からお見舞い申し上げます。そして一刻も早い復旧を願っております。

同時に再発防止に関しても上記(A)~(D)の趣旨に則って,他社や他地域の情報を仕入れて,比較検討し,新柄緻密な防災体制の確立を願うものです。

2018年7月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知