株式会社 Jコスト研究所

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連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムをおよそ月に一度の頻度で更新していきます。

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2020年7月

季節のご挨拶

2020年,オリンピックの年として新年を迎えた直後から始まった,新型コロナ騒動,マスク不足を始め,医療機材不足,医療崩壊の懸念,一斉休校,緊急事態宣言,移動自粛とテレワーク,営業自粛等々を経て,日本の感染者は幸い少なくて済み,下火に向かい,お陰様で6月19日から,様々なコロナ対策の自主規制が解除されました.最近感染者がジワジワと増えているのが気がかりですが….

この約半年間,管理者の皆さまは,ご家族の安全と,預かっている職場の異常事態への対応で大変なご苦労をなさったモノと拝察致します.お疲れ様でした.

しかし,水を差すようですが,ここまでの皆さまの対応は,緊急避難として外部から強制され否応なしにやってきた部分が多く,各社・各職場でその対応にはそれほど差があるとは思いません.


今からの対応で,大きな格差がつくと覚悟素決めてください.

7月に入り,東京ディヅニーランド(TDL)が再開したというニュースが賑わしていますが,待ちわびていた来場者は,充分にコロナ対策した上での新しいおもてなしに驚きと新たな感動を味わっていると報道されています.

TDLは閉ざされた空間での数時間の世界ですが,の皆さまの会社では,自由市場に向けた開放空間で,時間制限無しでサービス競争を続行する業態にあると拝察します.その難しい中で,どうアフターコロナの体制を構築するかが,管理者である皆さまのお仕事になります.今回は此のテーマに具体的にどう対処すべきかを考えたいと思います.


今一度スペイン風邪から学びましょう

以前にも言いましたが,今回のCOVID-19パンデミックは,100年前の『スペイン風邪』が免役もない疫病として参考になります.

(Wikipedia より)
第1波1918年3月〜6月北米・欧州
第2波1918年秋全世界重篤な合併症を起こし死者が急増
第3波1919年春〜秋全世界最初に医師・看護師が感染⇒医療崩壊
世界日本
推定感染者数人口の25〜30%人口5.5千万人中2.4千万人
推定死者数0.17〜1.0億人39万人(1.63%)

更に,別の資料では,第1次世界大戦(1914年6月〜1919年11月)の中で,主戦場であった欧州大陸に参戦した米軍兵士から全戦線の敵味方全軍に感染が広がり,敵と戦いながら,スペイン風邪と闘う事態となり,終戦を早めたと言います.又,戦死か病死の区別は,参戦国同士の機密とされ,スペイン風邪そのものの詳細な実態は不明とされています.

一方,米国は,主戦場の欧州に武器,弾薬,食料を売り付けることで巨万の富を手にし,戦後は世界経済の中心に躍り出て,大繁栄したのでした.世界史的にはPax BritannicaからPax Americanaへの変換点でもありました.行き過ぎた好景気が1929年の『世界大恐慌』を巻き起こし,それが起点で世界各国の経済が破綻の危機を迎え,自国さえ良ければ…と過度な保護貿易に走りました.経済的に困った国ではファシズムが台頭して来ます.1930年代後半になるとあちこちで紛争が起き,ついには1939年第2次世界大戦に突入するのでした.1930年から米国ではニューディール政策が打ち出され,多額の公共投資が行われましたが,効果が検証されないまま大戦に突入し,戦争が一番の不況対策だったとも言われています.この伏線として,スペイン風邪の第2波は若年・壮年(65歳以下99%)にサイトカインを起こし死亡者が多かったことで,人口構成に大きな歪みを与えたこともその原因の一つに挙げられ,影響は20年余続いたという説もあります.


現実を直視し覚悟を決めましょう

このスペイン風邪の例から推定されるのは,北半球⇒南半球⇒北半球⇒南半球と,冬季に流行,夏季に収まるを繰り返し,2年間は全世界で第2波,第3波が来ると覚悟しなければなりません.無観客ではオリンピックになりませんから,中止となるでしょう.

自社で出来ることは万全を期しても,このように2年間はパンデミックの中に居るとすると,皆さまの市場は激変すると思います.単に需要の変化を考えても,日々の生活に必要なモノは直ぐに回復しますが,必需品で無いモノは,先行き不安な世相から,客足は遠退きがちになります.

一例を挙げますと,結婚式と卒業式の記念撮影は,人生の区切りとして大切に考える様ですが,貸衣装で済ますことが出来るようになって居ることまでは承知していましたが,最近では『メルカリ』を使って,一寸したお出かけの服装一式を,プロのデザイナーがコーディネイトしたモノを送ってもらい,使い終わったら又ネットで売るのだとか….市場は日々劇的に変わりつつあると痛感した次第です.

従来から,一つの事件によって消費市場が急変することが知られています.日本では1932年冬に起きた日本橋白木屋百貨店火災が有名です.初めての8階建ての高層ビル火災の経験から,消防関係に大きな影響を与えたと言われますが,もっと有名なのは,救出されるとき,乱れた裾を直そうとして片手を離した多くの女性が落下して命を失った…という噂が広がり,瞬く間に女性の下着が腰巻からズロースに変わったと伝えられています.都市伝説だという説がありますが,あるトレンドであったものが,一つの切掛けて一気に広がったと理解すべきで,下着業界にとっては天から降ってきたビジネスチャンスであった事は間違いありません.波に乗れた店と,外した店では大きな差が出たことでしょう.


自社のことは,自社社員の力でしか対処出来ない

少々前置きが長くなりましたが,今直面しているCOVID-19パンデミックは,先ず1〜2年続くという事を覚悟してください.そして通り抜けたトンネルの先は,今までと違った景色になって居るということです.従って扱う商品は様変わりし,何をどう扱うか…は各社違いますから,皆さま御自身の才覚で道を開いていかなければなりません.

これとは別に,職場をどう運営するか,部下をどう育てるのか等は現場を預かる管理者として,一般論として,管理職の皆さまどちら様にも当てはまるお話しですので,今回はこれについてお話ししたいと思います.

それは,今まで2回に分けて説明してきた,改善に向けてのキャッチコピー

  • 【A】「常に『目的は何か?』を問い直そう」
  • 【B】「ぶつかった壁は『人が作った壁か?神様が作った壁か?』を考えよ!」「人が作ったモノなら変えることが出来るのだ」
  • 【C】「ルールは変えるためにある」

これを皆さまの職場に展開しては如何でしょうか…という提案でもあります.


管理職である皆さまが心すべき事柄

[1] この時,管理職に居ることの意味を知るべし…

管理者である皆さまは,御自分の担当する職場の要所要所に,それ相応の人材を配置して業務を遂行していることと思います.その部下が,上司であるあなたの顔色ばかり窺っていたら,あなたは残念に思い,降格を考えることでしょう.

中国の三国志に『赤兎馬』という名馬(≠焼酎)が登場しますが,元々はパワー溢れる暴れ馬でしたが,呂布という名将が乗りこなして大きな軍功を挙げるのでした.乗りこなすとはControlすることで,制御と書きます.『制』も『御』もブレーキを掛けるということです.戦場で命を託する愛馬も,部下も同じで,自分の信念でバリバリ働く部下が頼もしく,行き過ぎがあったら,そこだけブレーキを掛ければ良いとして,存分に活躍してくれるのを待っていると思います.同様に,あなたの上司は,あなたを得がたい人材として今の職に任じ,存分の活躍を期待していると思わなければいけません.

上司と部下の関係に関連したEpisode

TOC(Theory Of Constraints)の創始者であるイスラエル人の物理学者Goldratt博士は,トヨタ生産方式(TPS)をまとめ上げた大野耐一氏を尊敬して居ました.その彼は『一人の男が,世間の常識に逆らって,己の信じる道を貫き,TPSをまとめ上げた事は,現代の奇跡だ!又,信じる道を突き進む部下を,万難を排して守り抜いた上司も奇跡だ.もっと大きな奇跡は,突き進む男と守り抜く経営者が30年間同じ会社で,上司と部下の関係で居たことだ!』と評したと聞いています.

『英雄は英雄を知る』という事なのでしょう.

今,COVID-19パンデミックの中であなたが管理職で居る意味を自ら見つめ直す時です.今この時,この職に居る自分に,上司は何を期待しているのか…?正に『自分がこの職に居る目的は何か…?!』『今のやり方はその目的に合っているか…?!』を自らに問うて頂きたく思います.


[2] 管理者の犯しやすい「行い(罪?)」

管理者の犯しやすい「行い(罪?)」には以下の2つがあると,先輩に諭された事がありました.具体的な例で説明しましょう.

(A) 不作為の作為

自動車には運転免許証が必要な様に,現場には,法律で定められた資格者が従事する必要があります(例:危険物取扱,高所作業,玉掛け…).前任者から,「全て資格者が作業している」という申し送りを受けて,鵜呑みにして1年過ごした状態が『不作為の作為』という『行い(罪?)』なのです.

本来は就任と同時に,その現場に有資格作業の現状と,有資格者状況を調べ,成り行きで行けば,何年持つのかを確認の上,自分の在任中に何人育て上げるようにするかの意志決定し,計画的に資格を取らせている…のが,正常な管理者の務めなのです.

もう一つの典型例は,場内外注業者管理の問題です.創業時には自社社員が行っていた作業であるパレットや木箱等の修理と補充,型保全,場内清掃から保守点検等々,更には場内運搬や塗装工程までが,社外の人に移されて(場内外注化)行ったのですが,現場に密着して作業の授受が,監督者レベルでおこなわれる為,管理し難く,『癒着』が起きやすいのです.

更に拙いことに,『外注化』すると,費用区分が個々の製品の『製造原価』から工場全般に掛かる『一般管理費』に変わるので,『製造部門が頑張った…』様に見えるので,ついつい泥沼に足を踏み入れてしまいがちです.内・外製…特に場内外注は管理者として厳しく見直すべき項目です.


(B) 未必の故意

先の資格者で言えば,調べたら『半年以内で数名が定年退職する』と知った上で,それを放置したときに,これを『未必の故意』と言います.

『通路に陥没がある・・・』『不良の再発防止をしていない』等々,管理者として当然やるべきことを,やらずに過ごしている状態を言うのです.管理者として絶対あってはいけないことなので,この行いは『罪』です.管理者は刑事罰,民時罰も覚悟しなければなりません.


(C) お役所仕事

約50年前,係長に昇格したとき,社内教育で叩き込まれたのは『役所と民間企業との違い』でした.『役所では,決められて仕事を決められたようにやっていれば,何が起きようと法律が役人を守ってくれる』<註:決められたこととは,法律と先輩に教わった事柄を指します.>『民間企業では,法律より上位に「御客様」が居る.御客様のご機嫌を損じたら,会社ごと潰れる場合もある.「速さ」と「品質」と「価格」で御客様の『満足』を得るように全力で取り組まなければなら無い…』ということでした.

今回のコロナ対応で,『お役所仕事』オンパレードを見せつけられて唖然とし,アベノマスクに至っては,怒りを通りこし嘲笑になってしまいました.『納期遅れ』『毛髪等の混入』『不明朗な入札』民間企業なら倒産するほどの不祥事が起きましたが,担当部署の責任者処分は一切無く,国会答弁では『スピード感を持って適切に対処する・・・』といういつもの呪文を唱えるのみでした.

民間会社の管理者は人事権もあるので,異常を兆しの段階から捉えて現場を観察し,絡み合っている業務を解きほぐし,円滑に機能する様に組織を再構築する責任を負います.持てる職権を最大限発揮して早期解決が職務で,言い訳は出来ないと覚悟しなければなりません.あなたがモタついていれば,上司がメンバーチェンジすることでしょう.


(D) 『自分の城は自分で守れ』が民間会社の生きる道

『自分の城は自分で守れ』とは,1950年資金繰りが悪化し潰れかかったトヨタの社長に就任し,徹底した経費節減で資金を貯め,無借金経営の基礎を作り,銀行に左右されず,自らの判断で思い切った投資をして,今日の基礎を作ったと言われる,石田退三氏の著書名でもあり(1968年講談社),座右の名でもありました.

1970年代係長教育で,叩き込まれたのは,以下のようなモノでした.

日本国憲法では,いわゆる『生存権』等々様々な基本的人権が謳われていて,個人が困難に陥った場合生活保護,医療保護等,手厚く保護されるが,民間会社が投資に失敗しても,火事で燃えても,助けてはもらえない.

これは,【B】の『神様が作ったのか?人間が作ったのか?』の文脈からも.『人の命は神が創った…』『会社は金儲けを狙って一部の人が作…』とすれば困ったからと言って関係ない国民が払った税金を使って助ける理由にはならないのです.正に『自分の城は自分で守れ』なのです.それ故,民間会社の管理職は,経営者を助け,従業員の生活を守るという重責を担っていて,留まれば窒息死,慌てれば転落死という状況の中,足許を見定め,一歩一歩確実な歩みを続けるしかないのです.


以上,管理者としてあなたは(A)不作為の作為,(B)未必の故意,(C)お役所仕事に陥らず,(D)自分の城は自分で守る道を歩んでいるか,自らの仕事を常にチェックし,自らを律して行かねばならないのです.


[3] コロナによる需要減を,管理者はどう捉えるべきか

3-1. 職場改革のチャンス到来と喜ぶべき

管理者の皆さまは,今まで『品質』『納期』を守りながらいかに『原価』を下げ会社に利益をもたらすかに日夜心を砕いて来られたと思います.更に良い状態にするためにやるべきこと,やりたいことがあったとしても,管理者として自由に使える工数がなく,悔しい思いをして来たと拝察します.

サッカーやバスケ等のプロスポーツは,シーズン中には出来ない大改革をシーズンオフの間に,選手個人も,又チ−ムとしても行い,これが翌シーズンの成績に直結するとして頑張ってやっていると聞いています.今回のコロナによる需要減は,その後の急成長を見越しての減産になりますから,ある意味,このプロチームのオフシーズンに 似ています.この機に,かねてやりたかった組織としての改革を成さないと,アフターコロナの市場で敗退を余儀なくされると思わなければいけません.


3-2.減産規模と期間を読む

新聞に拠れば,株主総会でトヨタ自動車が2021年3月期の予測として,最悪60%台まで落ち込むが,年平均では80%台に踏みとどまる予測で,固定費削減の努力が実を結び,5千億程度の営業利益を出せると豊田か社長が公言しました.敢えて公言した真意は,全世界で直接取引のある数千社,間接的には数万社に及ぶ関連会社に,狼狽えることなく各社が2021年度の行動計画立案し,アフターコロナに向け着実に改革してもらう為だとのことでした.

では,皆さまの会社では,今年1年間の需要をどのように予測しているのでしょうか?代理店や販売店へのアンケート調査では,大失敗します.御社自らが他社製品も含め市場の様子探求し,購買層の経済状態までも勘案の末,製造会社としてのマインドで需要予測をする必要があります.


3-3.品名が同じでも仕様が変わる

特に注意すべきは,約2年は掛かると言われているコロナの流行中に,市場のトレンドがガラリと変わってしまう可能性があるという事です.

例えば,大型乗用車のミニバンは,従来は家族揃っての長距離ドライブが使用目的でしたが,リモートワークが本格的になると,家が手狭で落ち着いた仕事場が欲しくなります.そうすると2列目に通信機器を備え,デスクとして使える機能を持ったミニバンが,サラリーマンの間では流行る事でしょう….等々,従来にない新機種が持て囃されるようになる事でしょう.ということは,コロナの減産は新製品への切り替えの減産と考えてとり組むべきだと理解出来ると思います.


ここまで管理者としての心構えを中心に長々と説教めいたことを述べてきました.少しでもお役に立てば幸いです.

次回は管理者としてなすべきことを以下のような柱立てでお話ししたいと思っています.皆さまの職場でやらなければいけないことは,管理者としての皆さま御自身が一番分かっていて,既に計画を立て,着着と実施されていることと思います.来月は,以下の項目をお話しさせて頂きますが,それを読んで,皆さまが管理者としての自信を深めて頂ければ幸いです.

  • [4] 管理者としての第1使命 在庫管理体制確立
  • 需要減になると,在庫を抱えてしまい運転資金が枯渇して倒産に至ります.経営者は銀行を駆け回り,現金を準備しますが,現場の管理者の使命は,徹底的な在庫圧縮にあります.

    • 4-1.在庫量の尺度を『滞留日数』で統一する
    • 4-2.小ロット多回生産に挑戦する
    • 4-3.在庫管理の見える化と日々の管理
    • 4-4.在庫管理System構築(クラウド型試行)
  • [5] 管理者としての第2使命 人財の育成
    • 5-1.自社のKeyとなるノウハウの伝承
    • 5-2.一般技能の伝承
    • 5-3.資格者の確保
    • 5-4.企業人教育
    • 5-5. 後継者の育成(5年後の姿)
  • [6] 管理者としての第3使命 職場管理体制の再構築
  • Value Stream Map(モノと情報の流れ図)

    • 6-1.現状確認
    • 6-2.『安全』『品質』『生産』の自律管理体制として再整備
    • 6-3.通信Net再点検

2020年7月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知