株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center 代表:田中正知 元東京大学大学院経済学研究科MMRC 特任研究員 ものつくり大学 名誉教授 元トヨタ自動車物流管理部長

連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムを月に一度の頻度で更新していきます。

第11回目の公開は5月を予定しています。

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トヨタ式の『石の上にも3年』という考え方

毎年4月になると、希望に胸膨らませた新入社員が入社しますし、ベテラン社員も異動があります。この時上司や先輩から『石の上にも3年』という言葉が掛けられます。多くの場合は『石の上のような堅くて冷たい場所でも、3年も辛抱すれば暖まり、居心地が良くなると言うから、ここの職場で多少気に入らないことがあっても、逆らわず、先輩のいう事を聞いて職場に溶け込みなさい・・・・』と言う意味に使われています。

50年前、トヨタに入社したときの先輩から指導は、真逆の意味でした。

「個人の基本的人権は侵すことお出来ない永久の権利として憲法で保障されているが、民間会社は社会に貢献し続けなければ存在意味を持たない。組織はとかく易きに流れる。それ故、公正なルールのもと、ライバルと切磋琢磨することで、共に社会に貢献する存在であり続けられるのだ・・・・」

だから「進歩し続ける社会の中で、半歩でも先を行かねば組織の存在価値はない・・・」と教えられ、現場実習ではトヨタ生産方式の『自働化』とは、「異常があったらラインを停めて直すこと・・・」更に進んで「異常を発見しやすくすること・・見える化」の実態を叩き込まれました。

この文脈で「石の上にも3年」を解釈すると、「新しい職場に来れば、新しい発見がある。良いことだったらそれを受入、おかしいと思ったら納得できるまで何故?ナゼ?を追求せよ!」「朱に交われば赤くなる、の言葉のように、時間とともにおかしいと感じなくなってしまう。」 というモノになります。

実際に入社教育で、「今のやり方のままで行くのであれば、高校卒を採用し、4年間会社の実務をしっかり教え込んだ方がスキルの高い人材に育つし、そう言う人財も採用している。会社の外で4年間過ごした大卒生を採用したのは、この会社を客観的に見て、より良い方向に軌道修正していく人財として採用したのだ・・・・」と言われました。

これと対になる言葉で「3年したらサボれ」と先輩から指導を受けました。

その真意は、「赴任して、その職場の抱えている問題、成すべき課題がハッキリ見えるのは精々2年間だ!見える2年間でその仕事を片付けよ!3年目からはその仕事は部下に任せて(部下に育成に重きを置く)、自分はもう一つ上の仕事(上司の補佐)に取りかかれ!」というモノでした。

1980年代豊田章一郎社長は「勇気(College)!創造(Creation)!挑戦(Challenge)!」を掲げ、

1990年代奥田碩社長は「トヨタの敵は(昨日の)トヨタ」「変わらない奴が一番悪い!」を掲げていました。

トヨタ在籍中は歴代の社長は社員一人一人が、自分の感性で自分のまわりを見直しておかしいと思ったら行動を起こせと呼びかけているのです。

この「変える」とか「挑戦」と言うことをトヨタ生産方式の中の『改善』と言う手法で説明しましょう。

先ず今やりかたはどうなって居るのか、しっかりと見直しことから始めます。調べてみると、現場だけでなく事務所の作業でも、人によってやり方はまちまちですし、同じ人をとっても、その時の気分で変わってきます。こんな状態ではその「出来映え」も、「所要時間」も出たとこ勝負で、とてもお金を貰ってやっているプロの仕事とは言え無いような現場にも出くわすことがあります。その中で一番良いと思われる作業方法を選び出し、それを『今のやり方』として固定します。

現状のやり方の中で、一番マシなものを選び、これをありのままを表したものとして『表準(おもて標準)作業』と言います。このやり方がベースになります。

この『表標準』をやり続けながら、更にやり易く、確実に仕上がるように新しい作業方法に挑戦して行くことを『改善』とか『変える』と言っているのです。

さて、新しい会社、新しい職場に来られて皆さま、『石の上にも3年』と言う言葉をどう受け止めますか?

ミイラ取りがミイラになら無いように、御活躍を期待します。

2018年4月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知