株式会社 Jコスト研究所

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2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムをおよそ月に一度の頻度で更新していきます。

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2022年10月

季節のご挨拶

〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの『苦肉の計』 〜

読者の皆様に謹んで10月のご挨拶を申し上げます.

しばらくお休みを頂いていましたが,先回(5月)この欄で以下の四項目が,年末までに日本を襲うことが予想されるので改革を急がねばならない…と書きました.

  • 【A】コロナ禍による生活環境の変容(売れ筋が変わる)
  • 【B】急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,それに伴う金利上昇,円安
  • 【C】ウクライナ侵攻による食料とエネルギー危機
  • 【D】中国のゼロコロナ政策で,地球規模のSupply Chain毀損,中国の景気後退で不動産バブル崩壊⇒地球規模の大不況

5ヶ月経った今日,上記の四項目は,恐れていた最悪の方向に推移しています.中国は5年に一度の共産党大会を前にして緊張状態にありますが,経済はかなり悪化している様子で,不動産バブル崩壊は現実味を増してきたといいます.

この辺の話は次回に回すとして,今日皆さまにご呈示するお話しは,表題のように,皆さまと同じマスコミ報道を手にしながら,幾ばくかの工学的知見と,トヨタ生産方式のツールとして有名な『何故なぜ分析』を使って真因の探究をしていくと,マスコミ報道の主流のウクライナ犯行説とは真反対の仮説『〜 仮説;クリミア橋爆破はプーチンの苦肉の計〜』が導き出される事についてお話ししたいと思います.

ウクライナ侵攻を憂いている皆さまは勿論のこと,戦争に関心の無い方でも,この仮説を導き出したプロセスは,現場で起きた事象の真因の探求にも役立ちますので丁寧に文章にまとめました.

きっとお役に立つと思いますので 最後までお読みください.


[1] 報道機関の取り扱い

10月7日はプーチンの70歳の誕生日だったので,その一日遅れで『クリミア大橋の襲撃』という大変なプレゼント渡された…報道されて,それ以降,誰かは分からないけれど,反ロシア系の犯行という論調で推移しています.

10日からのロシアによるウクライナ全土に向けての,主に電力インフラを狙った大量のミサイル攻撃に対して『ロシアの反撃』というサブタイトルで報道されています.

一部のコメンテーターが,爆破の48時間後に一斉にミサイル攻撃をするのは準備が良すぎる.米軍でさえ手続きに72時間かかる…橋爆破とは関係なしに,事前に準備されたもと思われる…という説明もありました.

今日まで,橋を爆破されてプーチンは怒り心頭に達している…,次々と反撃を繰り出すであろう…という論調に収斂しつつあります.


[2] 三国志由来の『苦肉の計』とプーチンの前科

苦肉の計

兵法三十六計の第三十四計にあたる戦術.

人間というものは自分を傷つけることはない,と思い込む心理を利用して敵を騙す計略である.日本では苦肉の策(くにくのさく),苦肉の計(くにくのけい),苦肉の謀(くにくのはかりごと)ともいう.

(Wikipedia)

歴史を紐解けば三国志が起源とされますが,近代では
1937年;盧溝橋事件から日中戦争が始まり
1964年;トンキン湾事件で米軍の北ベトナム爆撃が始まりました.

ロシアでは,
1999年;エリツィン大統領が汚職事件で起訴されかけた時,当時の首相だったプーチンがKGBに命じ高層アパートを次々と5回爆破させ,
この甚大な被害をもたらしたのは,『チェチェンのテロによるものだ』として国論を統一し第二次チェチェン紛争起こし,チェチェンを支配下に置くと同時に,エリツィン大統領を苦境から救い出すことに成功したとされ,その功績で,プーチンが大統領になった…のが公然の秘密とされています.


以下の文章で,1999年の成功体験から,今回のクリミア大橋は,プーチンの苦肉計(自作自演)という仮説が導き出せます.


[3] クリミア大橋爆破に『何故なぜ分析』を試みる

以下, 報道から拾い集めた大括りの事実を【エビデンス】とし,個々の事象から導いた結論を<考察>として,工学的知見と,トヨタ生産方式の『何故なぜ分析』手法を使って紐解いていきます.

【エビデンス-1】

クリミア半島の空軍基地の爆発の時は,現場写真は遠方からの煙だけ写ったモノでした.ロシアは『事故だ』と言い張っていましたが,西側報道は,衛星写真から被害が解明し,ニュースにしていました.

一方,今回のクリミア大橋の件は素敵なアングルで動画が撮られ,ネットで即時公開されています.事前に計算したアングルで撮影準備し,撮影後の仕上がりを確認して配信…疑われるほど迫力ある映像が配信され,ロシア側が積極的に関与した,としか考えられません.

【エビデンス-2】

下の写真のように爆破されたのは道路橋だけでなく,となりの鉄道橋を走っていた貨物列車にも爆破の影響で引火し炎上すると言う被害に遭った…,と言う状況を映し出した写真として各局で放映されています.

それではこの写真を詳細に検討してみましょう.



<考察-1>

走っていたとされる貨物列車が映像では停車状態で炎上します.

一般に貨物列車は急停止が不得手で,日本の法律では制動距離は600m以下と規制されています.大型貨車でも1車両20m以下ですから,急ブレーキをかけたとしてもその瞬間から停止まで25両分くらいは移動してしまうはずで工学的に説明がつきません.

さらに,運転士の立場で考えると,走行中に後方で大音響がしても『何が起きたのか?』『 何をすべきか?』咄嗟の判断はできないはずです.

通常は,おかしいと思ったら緊急停止する事になっていると思いますが,列車の特性として,橋の上やトンネル内で停車すると二次災害が起きやすく,又,復旧工事が厄介なので,平地までは強引に走行した後停止して点検するのが普通です.

特に鉄橋は高熱に弱いので,燃えている貨車を動かし続けて,鉄橋を熱被害から守るマニュアルがあると思います.

従って,走行中に火災に遭ったときは,発火地点からかなり離れた場所に貨車は停止しているはずです.

<考察-2>

停止している理由として,走行中の貨物列車が,爆発に遭遇した結果,衝撃で脱線して急停止した事が考えられますが,この場合は,脱線した貨車の後続の貨車は追突状態になり,折り重なった状態に脱線します.鉄橋から落下もあり得ます.<福知山線事故参照>

ところが,写真では全部の貨車は整然と並んで停車しています.脱線した様子はありません.


結論として,走行中の貨物列車が爆破で脱線もせずその場で即停止するということはありえません.

この写真が実写であるとすれば,貨物列車を停めておいてそので道路橋を爆発させたことになり,ロシア当局が関与せずにできるはずがありません.

まさにプーチン得意の『苦肉の計』つまり,自慢にしていたクリミア橋をプーチン自らが壊すとは誰も考えないので,敢えてそれを実行し,ウクライナの犯行と思い込ませ国論を統一して攻め込む……仮説が成立するのです.

【エビデンス-3】

クリミア大橋爆破がロシア側の苦肉の計(自作自演)とすれば,写真から得られる疑問点がすべて合理的な説明かできます.

<考察-3>

燃えているタンク車の間に,3〜5両の燃えていない貨車があります.

『鉄橋に傷を残さず派手に燃えさかる貨車を演出せよ』と命じられたら,工学技術者は以下のような計画をすることでしょう.

派手な煙を出すが高温にならない油を仕掛けた燃やすタンク車と,その前後に冷却材(水等)を積んだ冷やすタンク車,消化剤を積んだ消すタンク車を巧に配置し,燃やしながらゆっくり移動させ,冷やすタンク車から水を噴霧して鉄橋を冷やし,消化剤で火勢をControlすれば,派手な炎の割には被害は最少で済みます.駐車場の鉄骨のように,鉄橋の内側に事前に耐熱材を吹き付けておけば,準備は完璧でしょう.

<考察-4>

更に燃えている貨車の風下には石炭用の貨車があります.風上側にはタンク車が並んでいます.最小限の被害で貨車の燃えている写真を撮ろうと思えば,長い貨物列車の中で此処しかない場所が燃えています.

<考察-5>

爆破写真撮影後の鉄道橋の復旧はどうだったのでしょうか?事件発生は10月8日午前6時7分とされていますが,『列車は予定通り,現地時間8日17時10分にクリミア半島のシンフェロポリを出発した.』と報道されています.

鉄道はたった10時間で平常運転に戻っている事になります.

鉄橋の弱点である高熱被害は皆無だった.脱線もなかった.後始末をし,安全確認した後,定常運行に戻った,と解釈できます.

【エビデンス-4】

道路橋はどうだったのか…

<考察-6>

走行する自動車の運転手にとっては,道路橋を延々10km余走り,いよいよクリミアと言うところで橋桁が落下した事になります.

欧米の橋げた落下事故のニュースでは,ブレーキが間に合わず自動車が川に墜落した映像がよく放映されています.

今回は 爆発したトラックについてのみ報道がありますが,後続車については不思議と何の報道もありません.爆発の瞬間の写真には,行く方向に2台,来る方向に2台映っている事から,走行中車両の平均車間距離100mと仮定すれば,事故の起きたクリミア行きは入口から15kmとして橋の上を走行していた車だけでおおよそ150台の車両が事故現場付近に渋滞するはずです.

事故後30分で道路橋の入口を封鎖しても,橋の上には数百台,数kmの渋滞車両が,事故現場近くに並ぶはずで,しっかりした中央分離帯があるので,Uターンもできず,絶好の報道のネタになるはずですが,不思議なことに,そのような映像もアナウンスもありませんでした.

当局が事故を仕込んだのであれば,事前に通行量を絞る事も可能で,納得できます.

<考察-7>

橋桁は容易に交換できます.

ご承知のように,橋は『橋桁』と『橋脚』からできています.

『橋桁』は消耗品で,自動車で言ったらタイヤのように,不具合の生じた橋桁は交換されます.

全長何kmもある橋でも,現地工事は『橋脚』だけで,『橋桁』は数種類で済むように最初から設計されていて,近くの陸上の工場で効率よく大量生産され,でき上がった『橋桁』は大きなクレーン船で『橋脚』の間に設置されていきます.これだけの大きな橋であれば,予備の『橋桁』は準備されていると思われます.

従って,当面,一車線通行で凌ぎ,ウクライナが酷いことをしたと国民に印象付けた後,数週間で新しい『橋桁』を取り付け完全復旧すると思います.

現に,ニュースに依れば,当日夜から, 一車線通行で再開したと報じられています.

【エビデンス-5】

爆破事件後のプーチンの行動

クリミアの空軍基地の件では,ロシア当局は事故と言い張り襲撃されたと白状するまで数週間かかりました.プーチンは何も言っていなかったと記憶しています.

<考察-8>

クリミア大橋の件は,道路橋の爆発の瞬間映像,燃えさかる貨物列車の映像を当局が事前準備しなければ撮れないような素晴らしいアングルで撮影し,大々的に全世界に公開しました.

『捜査結果をプーチンに報告するシーン』まで撮影し放送しています.その後『プーチン自ら,これはウクライナのテロであると明言し必ず報復するというまでのシーン』を撮影させ,全世界に発信しています.

通常の常識では,誰もがウクライナが狙っていると思われる大橋に,見事に攻撃されたら,国家治安体制の大恥で,まず責任者の処分が話題になり,被害状況を世間に大々的に報道するものではありません.

プーチンの『苦肉の計』であれば納得できます.

<考察-9>

下記写真のように破壊された橋と燃え盛る貨物列車を背景にしてプーチン自ら壇上に立ち『ウクライナのテロに対して断固として闘う!』と言う大演説が配信されました.



そして皮肉なことに,プーチンの演説の背景の画面こそ,プーチンが欲しがった映像と思いますが,実写であるとすれば,工学的に見て停止している貨物列車ので道路橋を爆破させたという,ロシア当局の関与の証拠写真そのものなのです.

プーチンは,自分が命じて撮影させた映像の前に立って,ウクライナへの反撃の檄を飛ばしているのです.もしこの写真のタイトルを付けるとすれば『プーチンの苦肉の計』が相応しいと言わざるを得ません.

<考察-10>

事件発生から48時間以内でウクライナ全土に無差別攻撃を開始!

この攻撃の真の目的は,専門家によると,全土の電力施設を狙い撃ちし,冬に向かってウクライナ国民を凍えさせると同時に,ウクライナからNATO諸国へ電力輸出を止めさせ,ガスだけでは不足しているエネルギー供給制限の仕上げをしようというものだとされています.

クリミア橋の爆破劇は,この攻撃を報復と名付け,正当化を計る為でもあったのです.


[4] 『何故なぜ分析』のまとめ

ウクライナ戦争の話から 現場改善の話に移りましょう.

『何故なぜ分析』は思考実験の一種で,現地現物を細かく観察し,その原因は何であるか仮説を立てます.その仮説で説明できない事象が一つでもあれば,その仮説は正しくないのです.『何故なぜ分析』を途中でやめてしまうと,とんでもない結論に達してしまいます.

『本流トヨタ方式』では,『神は細部に宿る』という言葉でこれを戒めています.心構えだけではダメで,日常のトレーニングが大切になります.

ニュースを聞くときも,起きた現象とその原因を報道されますが,起きた現象はそのまま鵜呑みにするしかありませんが,原因はぜひご自分の頭で考えるトレーニングをしてください.

以前に「『大学』と『大学校』の違いはなにか?」という話をしました.『大学校』というのはある教材を効率よくマスターさせるための学校である,『大学』は無から有を生み出す研究機関で,五里霧中の中から正しい答えを導き出す方法論を学ぶところであると,その中身をマスターした方は理解していただいていると思います.

誰もが起きている事象の原因は自分の頭で考えることが民主主義国家では求められていますが,特に国家の税金を使って,大学で学位を取得した人たちは,矜持として,起きている現象は鵜呑みにせざるを得ませんが,その原因の推測は自らの頭で考え出さねばならないのです.そしてその考えを社会に広め,互いにディスカッションすることで一歩一歩社会を向上させていくことになるのです.

コロナ禍で顕在化してきた1990年代からの日本の衰退はこの矜持が衰えてきたことにあると警鐘を鳴らしてきましたが,クリミア大橋事件の報道が,プーチンの苦肉の計にハマっている事を見ますと世界中にその傾向があり,民主国家の基盤が緩んでいることを気付かされた次第です.


次回は,1ドル150円時代に,製造業は何をすべきかを考えてみたいと思います.


2022年10月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知