株式会社 Jコスト研究所

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連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムをおよそ月に一度の頻度で更新していきます。

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2022年5月

季節のご挨拶

者の皆さまに謹んで5月のご挨拶を申し上げます.

新入学生の諸君は,先月の『大学と大学校の違い』の真意を理解して,自分の個性に磨きを掛け,未知を既知にするノウハウを身につけて,Only Oneの自分を作り上げ,社会に出てのご活躍を祈っております.

新入社員の 皆様には『5月病』のお話しをさせてください.

今までの大学生活までは,学生が授業料という代金を払う客で,教授陣はその代金で雇われている人達でした.学生には支払った授業料に見合うサービスを受ける権利がありました.

ところが,会社に入ると立場は一変します.新入社員の皆さまはある給料で会社に雇われているので,当然会社からは支払う給与に見合うだけの『仕事(Output)』が求められます.

学生時代のメモやノート,報告書は,自分が客ですから,どんなに乱雑でもOKでしたが,会社生活でのメモや報告書は,頂く給与に見合う会社へのOutputですので,会社の求めたレベルに達していなければ給料泥棒になります.

この『自分の食い扶持を自分で稼ぐ=自立』の厳しさを自覚せずに入社すると,会社から自分に向けられたメッセージの意味が理解できず,いわゆる『5月病』に掛かり,退社してしまうことになり兼ねません.

私はトヨタ時代5月病で退社を希望する新入社員(Aさん)と面接するときは(トヨタの場合数ヶ月間の導入教育がありますが,この間は学校生活の延長ですので退社希望は出ません.職場配属になって1ヶ月目を5月病としていました)以下のようなことで諭しました.

Aさん,あなたの人生を1冊の自叙伝に例えると,誕生から学校生活まで充実した人生体験が一杯書かれていると思いますが,今あなたは社会生活編の第1頁に居ます.この頁を会社の仕事や人間関係が気に入らないとして逃げた頁にするか,1年とか2年とか仕事・人間関係とがっぷりと向かい合い,得るものを得た上で異動とか退社をする…勝った頁にするかで,Aさんの人生がまるで違うものになってしまいます.

人生の先輩としては,勝ったと言う頁にすることを薦めます.

大阪と京都出身者は,三河地方の飯が塩辛くて口に合わないとして数名退社したのが記憶に残っています.

5月以降の日本が直面する経済状況について

1. 従来からお伝えしていたコロナ対応

2020年2月3日感染の疑いのある乗客を乗せた大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号を,横浜港に入港させ日本政府の管轄下に置いたことが,事の始まりと記憶しています.

この3年間色々ありましたが,2022年の5月連休は,3回目のワクチン接種の効果もあり,緊急事態宣言もまん延防止も無い中で迎えることができ,各行楽地は大賑わいであったとか…その後も患者数は減少傾向にあると聞きます.

医学的には,今後とも続々と変異株が発生し続けてコロナ禍は続くとされていますが,医療関係者の努力で,特効薬のない中で診療技術の向上と治療方法の改善で重症化を防ぎ,死亡率を低減させてきました.新しいワクチンと有力な治療薬も見つかりつつあり,今後は落ち着いていくと期待されています.

欧米や日本などの医療体制の進んだ国は,過剰な恐怖心は取り除かれ,感染者が急拡大して医療崩壊に至らないように注意しながら,『withコロナ』と言う形で経済活動はコロナ前と同程度に戻る事が期待されるようになりました.

当コラムでは以前から,コロナ禍からの回復時には下記の【A】,【B】のような市場の変化があるので,各社は完成品在庫を削減することは勿論のこと,少ない仕掛かり在庫で生産できる仕組み(生産のLead-Time短縮)に挑戦し,市場の変化に即応できる仕組み作りが急務であると訴えてきました.

【A】コロナ禍による生活環境の変容

数年間 続いた コロナ禍で 市場のトレンドが変わってしまい,コロナ前の商品はコロナ後の市場では通用しないと考えた方が良いと警告してきました.

例えば飲食店,仕事帰りのちょい飲みから,家族と一緒にご馳走を楽しむようになるとか,リモ−トワークが増える事でビジネスウエアー販売が激減するなどです.

現に 自動車業界では 脱炭素化に向けて 大きくトレンドが変わってしまっています….

【B】急激な経済回復に伴うインフレ懸念と,其れに伴う金利上昇,円安

現に米国ではコロナの一段落で市場が活発化し,それに伴って物価上昇の波に晒され,米当局は政策金利を上昇させました.結果として円相場は130円台まで下落,これから先も円安が続き,自給率の低いエネルギー・食料関係は益々値上がりし,国内企業利益を圧迫し続けると恐れが大きくなりました.

2. 2022年2月以降発生した重大事件

【C】ロシアによるウクライナ侵攻

事もあろうに常任理事国のロシアが『特別軍事作戦』と称して武力をもって隣国ウクライナに侵攻しました.この無法行為を傍観すれば,世界秩序が乱れるとして,民主主義を標榜する先進国は団結して対ロシア経済制裁に打って出ました.

この経済制裁によってロシア産の稀少金属や石炭・原油・天然ガスの流通量が減るという事は,国際市場での価格が高騰するという事です.加えてウクライナとロシアは世界の小麦粉等の食料輸出国で,侵攻が始まる前は黒海に面した港からウクライナで生産されて食料(4億人分以上)が世界に向けて出荷されていましたが,今は侵攻によって黒海を封鎖されて出荷できずに居るとのことです.

このまま行けば世界が深刻な食糧危機を迎えることになると警告が発せられています.

専門家の見方は,帝政ロシア⇒ソ連⇒ロシアと続き,近代的な言論の自由を味わってこなかったロシア国民に世論として政府を動かす力は期待できず,むしろ民意に従う民主主義の先進国の方が,ロシアの情報操作に扇動され,物価上昇に我慢しきれずに妥協し,停戦に至るとされています.その期間は,早くて年内,最悪は10年余とされています.

その結果として我々日本企業に働く者は,どんな局面に遭遇するのでしょうか?

自分の身の回りを考えますと,毎日確実に消費する食料とエネルギー,これが品不足で高騰しますと,衣料,住居,娯楽などの出費を抑えざるを得ません.そのため 国内の消費市場が間違いなく縮小していきます.輸入原材料値上げ,円安による原価高の中での売上減ですので,キャッシュが不足し倒産も増えることでしょう.

発展途上国ではどうでしょうか? 一人当たりのGDPで見ますと,日本は28位で年間39千ドルとなっていますが,153位のハイチは2千ドル未満で,191位以下のソマリア,南スーダン,ブルンジは5百ドルを切ります.

これらの国々にも,コロナ禍と,更には食料とエネルギー価格の高騰は押し寄せていきます.これが2022年5月以降の世界になります.

長引けば,途上国から国家経済が破綻して行くことが目に見えています.


日本のみならず,どの国の企業を取っても,裏手から原材料の突然の高騰高,表からは納入代金の回収困難及び市場の縮小の挟み撃ちに合えば,ドミノ倒し的に倒産が広がっていく可能性が高いのです.

その後,更なる課題【D】が生じました.

【D】中国のゼロコロナ政策によるロックダウン
  • 長期化すれば…
  • ⇒地球規模のSupply-Chain毀損で世界経済が急停止
  • ⇒中国の不動産バブル崩壊のおそれ

世界の製造工場とまでいわれている中国で,先月から上海が感染対策としてロックダウンが実施され,一部の製品が世界規模でSupply-Chainが寸断されて製品が出荷できない状態にあります.其れが他の都市に広がっていき,今北京がロックダウンしようとしています.中国各地に及べば,生産されない部品が増え,影響は益々拡大されていきます.

思い返せば,世界で最初にCOVID-19が集団発生したのが武漢市でしたが,中国政府は武漢市を完全封鎖し,見事に沈静化させました.又,世界に先駈けてワクチンを開発しましたが(シノバック製)其れは従来型の不活性化したウイルスを基にして生成したモノで,当時は効果ありとして多くの途上国にも支給しました.

結果として中国は約半年間でコロナを征圧した事になり,習近平体制の優位性を世界に知らしめると同時に,コロナで苦しむ諸外国を尻目に,外国からの感染防止を続けながら経済成長を遂げたのでした.

冬季オリンピックを無観客ではあったモノの期日通り開催し,面目躍如で習近平体制で今年秋には異例の三期目に突入というお膳立てでした….

という局面での,コロナの感染再拡大です.


ここで困ったことに,中国国内で使われているワクチンは,欧米のメッセンジャ(m)RNA型のワクチンとは本質的に異なっています.香港大学の研究では,中国のシノバック製ワクチンはオミクロン等の新型株には効果が無い恐れがあると発表しています.

ロックダウンを緩めれば,中国国民はワクチンの効かない状態で感染力がますます強くなったオミクロン株とさらにはその上を行く複合株との戦いになり,感染爆発⇒医療崩壊の恐れがあります.

中国製のワクチンの優位性を散々宣伝した後なので,今更欧米にmRNA型ワクチンを送って欲しいとは言えないので,2020年武漢での成功体験である完全封鎖の『ゼロ-コロナ政策』で押し通すしかないと習近平政権は決断した模様です.

ゼロ-コロナ政策を取れば,中国政府の面子は立ちますが,その間中国の生産工場は停止し,全世界に向けての部品の出荷は滞ることになります.

【C】の影響によるのエネルギー,食料品は充分に代替えが効きますから,やり繰りで凌ぐことができます.しかし,ここで論じている中国工場で作っている部品は殆どがボルトやクリップのような汎用品ではなく,専用品であると推定されます.専用品であれば代替品の生産には通常数ヶ月を要します.その間全世界に点在する中国製の部品を使う製造工場が,一斉に部品欠で稼働停止に陥ります.つまり全世界の市場に急ブレーキがかかるということです.

この影響は如何ほどのものかは,第三者には推測できませんが,世界経済に甚大な被害を及ぼすことだけは確かなようです.


3年間続いたコロナ禍で各国は現状の産業体制を維持し,労働者を守る為に,市中に多大な現金をばらまいた形になっています.それを頼りに生産活動を本格化しようとする矢先の全世界同時の急ブレーキは,1929年の世界大恐慌と同様の大混乱を招いたとしてもおかしくありません.


中国経済には大きな懸念材料があります.それは不動産バブルです.

例えば昼間の上海は 高層Mansionが立ち並び 繁栄そのものに見えますが,夜になると,その高層マンションには 灯りが点在するだけの薄暗い高層ビルになります.住むためではなく投機のためのMansionなのです.

Mansionの価格は需要と供給の関係で決まりますから,Mansionが儲かるという噂で買い手が殺到し益々値が上がっていきます.勇気ある人達は,手持のMansionを抵当にお金を借り新しいMansionを購入して行きます.経済成長率が約10%,住宅ローンが数%と言う社会状態が引き起こしたバブルなのです.

この話には裏があります.2008年のリーマンショック時に中国も大打撃を受けましたが,輸出を中心とした成長戦略から,内需拡大戦略に切り替えました.本来共産主義の中国では土地は国家のもので 自由の売買はできませんでした.それをある期間に限って個人や企業に貸し与えるいわゆる借地権を設定し,その借地権の売買を広く国民に与えたのでした.ここに市場が生まれ,取引が活発になる事でリーマンショックの影響を軽微に済ませ,以後中国経済を牽引していったのでした.

今進めているゼロ-コロナ政策が長引けば,中国自体の景気が後退し,住宅価格上昇が鈍化した時,一気に不動産バブルの崩壊が始まり,中国経済は危機に直面することになります.


繰り返しますと,今中国で展開しているゼロ-コロナ政策は

  • [1] 中国国内生産に大ダメージを与え,更に全世界規模の製造業にSupply-Chainの毀損による生産に急停止を発生させ,大恐慌の引き金になる
  • [2] 不動産バブル崩壊の起点になると,リーマンショックの再来になる

ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー・食料の高騰になかで今,習近平政権は上記[1],[2]にいたる極めて際どいことをやっているのです.

2022年5月,日本では初夏の心地よい日が続いていますが,背後にはそんな危険性が忍び寄っているのです.

こんな状況下では,弊社がお勧めしている『Jコスト改革』ができているか否かが企業の生死を分けると考えております.すなわち,以下が弊社のお勧めですが,御社は大丈夫なのでしょうか?

  • Order-to-Delivery-Lead-Time:1週間以内
  • Total Lead-Time⇒棚卸資産回転数(連結)10回/年以上
  • \begin{equation} 基礎収益力 = \frac{粗利}{棚卸資産} \ge 1.0 \end{equation}

今,株主総会の季節です.財務諸表を紐解いて計算してみてください.何をすべきかは,『Jコスト改革の考え方』のコラムを参考にして下さい.

万一の場合も,御社が生き残ることを願っております.


2022年5月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知


追伸 『大学と大学校の違い』の続きは次回に致します