株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center

連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムをおよそ月に一度の頻度で更新していきます。

第17回目の公開は2月を予定しています。

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2020年4月

季節のご挨拶

〜提言〜

常に『目的は何か?』を問い直そう


4月が来ました.年度初めの月,人事異動の月,新学期の月でもあります.新しい職場,新しい仕事,新しい環境で心新たに取り組まれる皆様にエールをお送りいたします.

通例はこのようなご挨拶で済ませるのですが,2020年の今年は様子が違います.

毎日,新型コロナウイルスによるパンデミックにより,ご自身の健康はもちろん,ご家族の安全と,ご自身の職場大変動,市場の大混乱でご心痛のこととお察しいたします.一番のお困りごとは,今のパンデミックが今後どうなり,いつまで続くのか?ということではないかとお察しいたします.

今回は,喜寿を越えた,さまざまな実務を経験したOBの,岡目八目的な異見をお伝えしたいと思い,この文章を書いています.少々長文ですが,社会に,家庭に,重責を負われている皆様の参考になればと,老体に鞭打ってこれを書いています.


今日現在,諸外国は日本のパンデミックに対する対応が違うことを不審に思っています.政府でも企業体でも『高学歴者』がトップに立ち,指揮命令しているのは,その人たちが単なる体験ではなく学問として,『理路整然と整理した人間の行動学としての歴史』を学んだか,『自然現象の観察を通して身に着けた論理的な思考法で先を読む洞察力』を身に着けている…こういった能力を期待しているからでしょう.日本と諸外国との差が,歴史を軽視した教育体系のせいでないことを願うばかりです.

私自身もネットで壮絶な疫病の歴史を改めて知りました.戦争や交易,気象変動により人々が移動すると,土着の風土病だった感染症が免疫のない地域に感染爆発を引き起こし,人口が激減するほどの被害を与えていた,という事件が繰り返されていたことがわかります.

中世ヨーロッパにおける黒死病はあまりにも有名ですが,今の新型コロナについては,100年前の『スペイン風邪』が参考になります.

この例を下敷きにし,『改善マン』として今をどう捉え,何をすべきかの私見を申し述べます.

参考資料【スペイン風邪とは…】

Wikipediaによれば,第一次世界大戦中,アメリカから始まったとされています.

北米で発生したインフルエンザで,米軍とともに欧州に入り,戦場である欧州全域に,やがては全世界に蔓延しました.1918年1月から1920年12月まで3波に分かれて流行し,当時の世界人口の1/4に相当する5億人が感染したといわれています.戦時で士気に影響するとして伏されていましたが,推計で死者は1,700万〜5,000万人とされ,戦場では戦死した兵士より病死した兵士の方が多かったと伝えられています.また,この時は他のインフルエンザと比べて,若年成人の死亡率が高かったとも記されています.

スペイン風邪から約100年,中国から始まったCOVID-19というパンデミックが,感染の炎を燃え上がらせつつあります.スペイン風邪の例に倣えば,1波,2波,3波と再発して襲いかかり,ワクチンが普及するか,地域の人口の70%あまりが抗体を持つまで終息はせず,2〜3年は異常事態が続くことを……例えて言えば,人類とウイルスの第三次世界大戦が勃発した……という規模の大事件が起きた,と思うべきです.


こんな,それこそ『未曾有』の時,会社の命運を懸けて頑張る皆様に,贈る言葉があります.それは,

常に『目的は何か?』を問い直そう

という言葉です.これは,私がトヨタで先輩に叩き込まれた言葉でもあります.

この言葉の意味は,ある『目的』を達成させようと,ある『手段』を用います.その『手段』がうまく行く様に何か『手段』を講じます.其れを円滑に進めようとある『手段』を……というように,手段が手段を呼び迷路に入り込み身動きできなくなってしまいがちです.この時に「『目的は何か?』を問い直せ!」ということで,これによって全体像が見え,Break Throughが出来るというコトなのです.

この言葉の原点は,20世紀初頭,豊田佐吉翁が織機(機織り機)の改良に取り組んでいたときにあり,この発想で『自働化』という新しい理念を発明し,それは織機に留まらず,現在もビジネス上の重要理念として世界中で役に立っています.


以下,その経緯を具体的に説明しましょう.

当時は,織機に使える動力と言えば 水車か蒸気機関しかありませんでした.当然,今のような電子制御はなく,カラクリで制御する時代でした.そんな環境下で世界中の発明家が,手間暇の掛かる「はたおり作業」を何とか機械化できないかと日夜改良に取り組んでいたのでした.

機織り機 (http://www.norikaiya.net/koutei.html より)

そもそも機織りとは,上図のように交互に上下する経糸の間を,横糸を入れたシャトルを通し,櫛状の「おさ」で押さえ込み,次に経糸を逆に上下させ横糸を通す……これを繰り返して,横糸を一本ずつ織り込んでいく動作を連続させていく作業です.簡単そうに見えますが,『力』の加減で出来上がった布の風合いを決めてしまうというデリケートな作業で,これを延々と続けることでやっと布が織れていくのです.又,横糸を巻いた糸巻きは上図のシャトル(杼)の中に納められていますが,布の途中で横糸が無くなるのは,布としての致命的な不良なので,早め早めに横糸が残っている状態で織機を停めて,シャトルを交換し,又起動させる必要があり,女工さんは機械に張り付いている必要がありました.世界中で,これを前提に,より高速化の改良を進めていたのでした.

つまり『織機一台あたりの生産性向上』に向かって挑戦していたのでした.

豊田佐吉翁も当初はこのトレンドで改良を進めていましたが,織機を停めてシャトルを交換するコトがNeckで機械の生産性は壁にぶつかっていたと言います.

ある時,佐吉翁は,そもそも女工さんに機械を操作させるということが間違いで,女工さんが就ききりでなくても,布を織ることが出来る『織機』を創ることが,目的であると気がついたのでした.

言い換えると,佐吉翁が織機を改善する目的は,世間でやっている『織機の生産性向上』ではなく,『女工さん一人が1日で生産する布の量を多くすること(労働生産性)』にある事に気がついたのでした.ということは,女工さんの監視を必要とせず,

  1. 機械が自ら横糸が減ってきたことを感知して,無停止でシャトルを交換すること.
  2. 経糸が切れたらそれを感知して,自ら瞬時に織機を停め,赤ランプで知らせる.
この2つなどが改善の具体的展開になったのでした.

佐吉翁は,このように女工さん達の監視から外れても生産し続けられる機械を,『自働機(自ら働く機械)』と名付け,このような機能を持たせることを『自働化』と名付けました.会社名も一時『豊田自働織機製作所』と名乗っていました.

1924年『自働化』を完全に織り込んだ『G型自働織機』を完成させ,その特許を,織機発祥の英国企業に譲渡し,その資金で自動車の研究を始め,やがて今のトヨタ自動車に発展していったとされています.

佐吉翁の考え出した『自働化』という概念は21世紀の今日,

  • 異常があったら直ちに生産を止めて直す
  • 社内の異常を顕在化し全員で共有し,直していく
  • 機械だけでやっていく仕事と,機械群を維持管理する人の仕事を分離する
  • …………
等々の経営的深い意味が理解され,『JIDOKA』という言葉で世界中で使われるようになっています.

この『自動化』のEpisodeと共に,トヨタでは「壁にぶつかったら『目的は何か?』と見直せ!」と叩き込まれるのです.

参考までに『目的は何か?』の活用例を紹介しましょう.


【例1】五輪選手は再考すべきか否か

新型コロナCOVID-19の影響で,TOKYO2020という名称はそのままに,オリンピック競技大会は2021年7月開催となった模様ですが,各競技団体が出場選手を再選考すべきか否かで揉めています.

この問題を『目的は何か?』を使って考えてみましょう.その前に,そもそもオリンピックの目的は何かを知る必要があります.

オリンピック憲章1996年版より抜粋
  1. オリンピック・ムーブメントの目的は,いかなる差別をも伴うことなく,友情,連帯,フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより,平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある.
  2. オリンピック・ムーブメントの活動は,結び合う5つの輪に象徴されるとおり普遍且つ恒久であり,五大陸にまたがるものである.その頂点に立つのが世界中の競技者を一堂にあつめて開催される偉大なスポーツの祭典,オリンピック競技大会である.
スローガン 『より速く,より高く,より強く』

上記オリンピック憲章を要約すると「スポーツを通じて青少年を教育して平和でより良い世界を作る事」が目的で,それを推進するための手段としてオリンピック競技大会がある事が分かります.その根底には如何なる差別も排除するとしています.

もし,テレビの視聴率を上げたい,会場の観客数を増やしたいということを目的にするならば,今年の予選会代表として選ばれた人をそのままにして,練習風景などを中継し続ければ,Totalの出演料も増えるし受けもよい.費用も掛からない.

一方で憲章にあるように,20年開催として決められた選手を既得権益とみれば,その後伸びてきて21年にピークを迎える選手に対して差別することになる.21年度に向けて再度選考会を開けば,より多くの選手が刻苦勉励して,裾野が広がり,本来のオリンピックの目的に合うことになります.

『目的は何か?』で考えれば,何も迷うことなく1年ずらして再選考という結論になります.読者の皆さまはどうお考えでしょうか?


【例2】各社に存在する改革組織の『目的は何か?』

〜ここからが今回お伝えしたいことの本番です〜

マスコミの報道を見ていますと,報道の中味もコメンテーターの突っ込みも,『事の本質を理解せず,字面の質問』が多いのに深く失望しています.

もっと残念なのは,『今日,○○名の感染者が見つかりました』という発表を,そのまま視聴者に伝え,記者としての深掘りのない事でした.

全員を漏れなくて調査出来ない場合の調査方法は,『統計学』として確立されており,『どのような基準で検査対象者を選び出し,その中からn名調べたらp名の感染者がいた,だからSampleとしての感染率は(p/n)である.対象者はN名いるから,全体でP名が感染していると思われる……』という方法です.ニュースでお馴染みの『世論調査』は,結果と同時に調査条件も報道しています.

世界中が注視している中で,調査の条件をあきらかにせず,『今日の感染者○名』と発表する当局には『絶句!』ですが,この不当性を糾弾しない『学会』『野党』や『マスコミ』の姿勢にも『絶望感』を禁じ得ません.この国は『新型コロナ』の前に国家の中枢が『忖度病』に罹患しているようです.

今日現在,世界中のインテリ(医者だけではない)が各国の感染状況を見守っていますから,この稚拙な報道にあきれ返っていて,先進国の関係者は皆,2週間以内に日本で感染爆発が起きると,固唾を人で見守っていると報道されています.現に,英文で日本からの帰国勧告を出している国があるとか…….日本が科学立国とされていましたが,コロナの報道に度に,自ら今は科学後進国であるとアナウンスしているに等しい状態です.残念です.

政府やマスコミはこんなレベルでも,現在全世界を相手に厳しいビジネスを展開している 日本の実業界は,しっかりと科学的に判断して 取り組んでいて,大丈夫だと思います.その中に在って,このコラムの読者の皆さまは,様々な企業に中で『ものづくり』や『Supply-Chain』に関する『改革を推進する組織』に関係する皆さまだと思っております.

その皆さまと,今回の新型コロナのパンデミックが,ものづくり産業にどんな影響を与え,それ故どんな改革をすべきかについて,一緒に考えたいと思います.


【2-1】人類とウイルスの歴史を調べてみる

今回のパンデミック騒動の全体像と役所から次々と出て来る規制・要望の本当の目的を理解する為には,我々は,人類とウイルスの歴史にまで踏み込んで学び,自分で判断出来るレベルの知識と知恵を確保する必要があります.

先ず,ウイルスによる病気の歴史を調べてみましょう.皆さまも文献やネットでお調べ下さい.

戦前生まれに私は,子供の頃ウイルス性疾患の中で育ちました.天然痘は小学校で種痘を受け,麻疹にかかり,百日咳,風疹に掛かりました.この頃言われたことは,これらの病気は一度罹れば二度とかからない事と,更に幼い内は掛かっても軽いが,年を取るほど重くなり,大人になってからは重症になると言われていて,これらウイルスによる疾患は大人になるための『通過儀礼』であるとされていたのでした.実際,長男が幼稚園で『おたふく風邪』に感染した時,私にうつり,長男は寝込みませんでしたが,親である私は1週間寝込みました.

これらのウイルス性の病気は,当時の日本社会とともにあったので,殆どの人が抗体を持っていて,一時的に抗体を持っていない人の間を伝染していっても,間もなく自然に終息するのでした.

ところが,その社会にとって初めての(誰も抗体を持っていない)ウイルス性の病気が流行ると,状況は全く変わります.抗体を持っていないので,1人が2人に感染させるとすれば,2⇒4⇒8⇒16⇒32⇒64⇒…といった形に,指数関数的に増えていきます.急速に感染拡大した場合(感染爆発)は全員が感染します.ゆっくり感染が進む場合は,一旦終息したかに見えますが,2波,3波と続流行し,その地域の約70%の人達が感染し,抗体を持つようになります.こうなると先に述べた麻疹や風疹のようになるのです.

感染爆発の例で言えば,文献によると,15世紀から18世紀にかけてヨーロッパ人の侵攻とともに持ち込まれた麻疹や天然痘等によって,抗体のなかった当時のアメリカ先住民の人口は80%も減少したという研究もあると言います.また,冒頭に述べた,100年前のスペイン風邪は,『1918年のパンデミック』とも呼ばれ,世界中で5億人(当時の世界人口の1/4)が感染し,死者は推計1,700万人(1億人という説もある)とされています.

今流行って居る新型コロナCOVID-19も,誰も抗体を持って居ないので,放置すればスペイン風邪並みに全世界に広がる可能性があります.欧州や米国の当局の対応が早いのは,このスペイン風邪が人々の記憶にあるからでしょう.


【2-2】新型コロナは何時まで続くのか……

『お江戸名物火事・喧嘩』という言葉が残っているように,江戸初期の民家は藁葺きのうえ密集していましたから,一旦出火すれば瞬く間に燃え広がりました.直接火災を消す方法が無いに等しかった当時は,風下の家を強制的に倒壊させて燃えにくくして(火元から隔離して)類焼を防ぐというのが,当時の火消しの方法でした.3『密』の禁止,不要不急の外出自粛要請などは,人と人との間隔を開けて感染防止を図るだけであり,江戸の火消しと同じで,隔離して類焼を防いだに過ぎず,火の粉が飛んでくれば直ぐ火がつきます.

中国は回復しつつあるとか,韓国は山を越えた……等々に話がありますが,取り敢えず火事の火勢が衰えたというだけであり,いつか再び出火し,大火事になるかも知れないのです.現にその中国も,国内では小火が治まっていませんし,外国からの入国制限を厳しく行っています.

パンデミックの専門家である感染学者の見解は,2019年以前の自由な貿易・自由な人の出入りが復活するには,

  1. (医療崩壊を起こさないことが望まれるが)感染が広がり70%余が抗体を持つ.
  2. ワクチンが開発され,それを接種して1と併せて70%余が抗体を持つ.
  3. ウイルスを直接やっつける治療薬が開発され,病院に配られ治療が始まる.
  4. 上記1または2+3が出来て初めてインフルエンザ並みになる.
ということのようです.言い換えれば全世界の77億人の70%が感染して抗体を持てば終息するということです.


(1) 歴史を振り返ると

Wikipediaによれば,スペイン風邪は下記のように流行したとあります.

第1波
1918年3月,アメリカで発生,米軍参戦で欧州で5〜6月に流行.
第2波
1918年秋,世界中で同時流行,重篤な合併症を起こし死者急増.
第3波
1919年春〜秋,世界中で流行,最初に医療関係者が感染⇒医療体制崩壊⇒感染被害拡大

当時と今の交通量を比べますと,感染伝播の環境が格段に違います.

1920年(大正9年)現在
世界人口約18億人約77億人
大陸間交通客船のみ航空機(13億人・2014年)
大陸内交通列車,馬車マイカー,バス,列車,航空機
(2) 今の世界の感染状況は猛烈な速さで進行中

4月1日現在の状況を見れば,

  1. 米国で死者4,000人突破.トランプ大統領は死者最大24万人予想.
  2. WHO事務局長予想:数日内に世界の感染者100万人.
……等々の惨状が伝えられています.

日本では忖度が働いて,科学的Dataで理路整然と言えば『煽るな!』と批判される為,「大変だ」「可哀想」と感情に訴える報道されていますが…….海外では,放置すればこんなに悪くなると科学的に数値で表明します.各国の首脳は『スペイン風邪』を念頭に置いて,国民に訴えているのが分かります.

それゆえ我々は,日本国内の政府やマスコミに惑わされず,ネットや海外放送で世界の客観的なデータを把握し,文献を漁り,自分の頭で理解する必要があります.

一番大事なことは,今報道されていることは,火事で言えば消火作業の実況中継に過ぎず,各都市の火?を鎮めるのにあと何ヶ月かかり,各国として鎮火するのに何ヶ月かかるか,各国の焼失面積はどれ位かを,皆さまは自社の取扱商品の目で,今後の予想を今のうちに見極めることが肝要です.

(3) 自社の業務から見た,新型コロナの流行の期間と規模の予測

繰り返しになりますが,マスコミ報道は,我々自身が感染するか否かに重点を置いて報道して居ますが,我々は製造・物流・販売会社に勤めていますから,自社の業務への影響という観点から,日本各地,世界各国に於ける新型コロナの及ぼす影響の大きさ,期間の長さを,購買・営業・経営企画が中心になって,早期に把握する必要があります.自社のSupply-Chainのダメージ,納入先の動向,政府の方針等々を,拙速でも構いませんから,御社が自ら現地現物で調べることを強くおすすめいたします.

【2-3】新型コロナ流行中の自社改革の実行

〜各社の『生産革新を担う部署の目的は何か?』〜

(1)スポーツ選手は今何をやっている?

新型コロナの影響で,野球やサッカーのリーグ戦開幕が延長になっています.試合がない間,プロの選手は何をやっているのでしょうか?絶対に,部屋に籠もってカウチポテト……というにはあり得ません.グランドは使えない場合でも,体力の維持と,延長が2ヶ月なら,フォームの改造とかその間で出来る強化策を実行していることでしょう.

オリンピックの選手は,丸1年競技スケジュールが延びました.彼等にとっては,世界の強豪だけで無く,1年若い選手もライバルになります.彼等に勝てるように,1年間掛けて身体を作り変える練習に入っていることでしょう.

(2)新型コロナの流行期間をどう見るか?

以下の文章は,私が手の届く範囲の情報から得た結論です.皆さまも,ただ単に他人の情報を鵜呑みにするとか,上司の指示を待つとかせず,ご自身で納得いくまで調べ,ご自身の見解をお持ち下さい.

『疾風に勁草を知る』という言葉があります.日頃は目立たなくとも,異常時に頭角を現し,貢献する人のことを言います.今回の新型コロナでは,北海道の鈴木知事や,大阪の吉村知事などは,政府の指示を待たず,市民のために先頭に立って活躍します.御社に関わる情報は,社員の皆さま以外では収集することは出来ません.

『先ず隗よりはじめよ』という言葉があります.稚拙を承知で,私はこの文章を書いています.これを叩き台にして,皆さまの考えをまとめて,御社の危機突破を立案下さい.

  1. 日本の主要都市での流行
    1. 東京(首都圏)

      一番の問題は,ギュウギュウ詰めの電車で通勤する首都圏に感染の火が付いたら,大変に厄介なことになります.緯度こそ違え,規模や地形が似ている ニューヨークが大変な基地になって居るので,今回のパンデミックは,東京が,感染爆発するか否かで大きく変わります.

      1. 韓国モデルを採用し,検査拡大で発見した軽症者を オリンピック村へ入れ,今は暇な客室乗務員や,オリンピックのボランティアなどを動員すれば,5ヶ月間で一応の終息を迎えることでしょう.(遅ればせながら,4月8日政府は『非常事態宣言』を出しましたが,二次災害を恐れるがあまり,出動した消防士に「ここは立ち入るな!」「ここは濡らすな!」などと活動を縛っているがごときの中身です.出動の効果は期待できず,こここそ『目的は何か』と問いたいところです.)

      2. 今のままの単なる自粛で,感染爆発が起きずに維持出来たとすれば,治まるのに10ヶ月程掛かる事でしょう.

      3. 不幸にして感染爆発が起きると,否応なしに首都圏が完全封鎖され,感染爆発はおよそ4ヶ月で終息することでしょうが,ニューヨーク並みに多数の死者が出ますし,経済損失は莫大になるでしょう.

      関西圏,中部圏は東京圏に準じます.

    2. その他の地方都市

      規模が小さく,人口が少なく,密集していませんから,a,b,cとも東京より1ヶ月は短いと予想出来ます.日本全体で考えますと,速くて9月末,遅くて来年2月末で国内のみは,一応終息するでしょう.しかし中東・アフリカでは感染は治まらず,海外との出入国は閉ざされたままで居る可能性が極めて大きいと思います.

  2. 世界各国での流行の予測
    1. 感染は箸で食事をする国から始まった:中国・韓国・日本

      これらは感染を遅らせる民俗的要因と思われます.

    2. ナイフとフォークで食事する国に移った:西欧系

      ナイフ・フォークはテーブルに直置き,固いパン,生ハム・チーズ等は店頭に晒す,土足で出入り等々,感染しやすい要素が在ります.

    3. 手掴みで食事する国に移りつつある;インド・中東・アフリカ

      主食のチャバティ等は露店で手掴み販売,土足で出入り,等々感染しやすい要素あり.一番感染しやすい民俗的要因あり.

    このように考えると,現状の国境封鎖状態で,北米・欧州が自国内で感染が鎮火するのに,ほぼ日本と同じで,後5〜10ヶ月間を要すると思います.

    今から感染が始まる,インド・中東・アフリカ地域は,感染拡大は速いが,鎮火には内戦の難民等行政の統率が効かない人々が多数存在することを勘案すれば,速くても丸2年,長引けば3年余掛かりそうです.感染者がいなくなったという保証が無い限り,人の自由な出入りが出来ません.その結果,貿易は不活発になります.

    私見ですが,このように考えると来年の7月のオリンピックに,インド・中東・アフリカは間に合わず, 2022年に再延期ということも在りうると案じております.

(3) 今後の国内の経済を予測する

このように理詰めで考えていきますと,国内での消費市場は,秋まで現在のような低迷が続くことが予測出来ます.そして年末から来年年初に掛けて徐々に回復すると考えられます.

しかし,今まで再三述べてきたように,ワクチンが開発され普及するか,世界の人口77億人の70%が感染して抗体を持つまでは,一旦治まっても,日本国内でも,世界各国でも,散発的に流行する状態が続くので,経済は完全に元には戻りません.

従って速くて丸2年,最悪3〜4年掛からないと,2019年並みの自由な貿易環境は望めないと思います.3〜4年という期間は過去2回あった世界大戦と同じ規模です.とすれば,

  • 第一次世界大戦の前後で,世界はどう変わり,日本はどう変わったか.
  • 第二次世界大戦の前後で,世界はどう変わり,日本はどう変わったか.
  • ならば,このCOVID-19パンデミックの前後で,世界はどう変わり,日本はどう変わるのか.
を考察し,その中で,我が社はどう変わり,我が家はどうするのかを しっかり考える必要があります.

しかし,一番大事なのは,その戦争中をいかに生き残るかです.生き残りの手段を考え,実行しながらも,終わった後,変わってしまっている世界で優位に立っている必要があります.

具体的には,皆さまが独自に考え 結論を出す問題ですが,幾つか『Jコスト論』から見た『考慮事項』を申し上げます.

『考慮事項』の一つは,オリンピック時の混雑緩和策として準備した『テレワーク』です.今,感染防止の『3蜜防止』活動で 世界中で実践しています.学校教育でも,韓国や米国でネットを使った在宅教育を始めています.このパンデミックが終わった頃は,格段に進歩し,VRやAIと結合して,情報だけを扱う本社機能は,仕事のやり方が激変するでしょう.

東京で言えば,丸の内や大手町の高層ビルに本社の情報処理機能を置く意味は全くなくなります.その上東京には『富士山の噴火』『台風による広大な水害危機』『首都直下型地震』等により,首都機能崩壊のリスクがあるので,先の見通せる企業は,ビルを高値で売り払い,地方に分散されるでしょう.

もう一つはSupply-Chain網です.今回のマスクがよい例で,世界中のマスクが中国で作っていたため,今回の新型コロナで中国政府が差し押さえ命令を出し,一時期,政府の緊急措置で中国の国内消費にまわされたと言います.国家体制を維持するための必須物資は,自国生産する必要性が顕在化しました.御社の扱っている製品も,『地産地消型』にして,ある地方の封鎖でも,ある程度の生産は維持出来るように改革をするべきでしょう.

ちなみにトヨタは,本社は豊田市,工場は,東日本・中部・九州の3ブロックに分割していて,何処で災害が起きても生産は維持出来るようになって居ます.また,今回のコロナウイルスで中国が封鎖された時,何かあると直ぐ停まるとされたトヨタは停まらず,停まらないハズの日産が停まりました.

(4) 自社改革として,どう考え,何をすべきか?!

さて,自社の改革を託された『ものづくり改革』Teamの皆さま,この新型コロナにまつわる操業低下……業種によっては20〜40%の減産で,しかも国内回復まで5〜10ヶ月,と言う事態をどう捉えますか?

『ものづくり改革』関係者は,絶好のチャンスと受け止めて欲しいのです.と言うのは,日頃改革案を提出しても『今は忙しいから・・・』とオクラになっていたと思うからです.

絶好のチャンスを活かすべき具体的な改革案立案と推進体制構築は,御社の改革のプロである皆さまのお仕事ですが,『Jコスト論』としては『こんな点を押さえて欲しい』と言う思いから,以下の文章を書きました.参考になれば幸いです.

  1. 改革のグランドデザインを先ず構築して下さい

    グランドデザインは,

    1. 改革の目的,KPI
    2. 具体的な展開法 期間,組織を明確に期す.
    3. 計画は,
      極短期即時実施するもの
      短期計画1ヶ月間の直近計画
      中期計画国内が鎮火するまでに完了させる計画
      長期計画世界中で終息するまでの計画
    というように立てるとよいでしょう.

  2. 短期計画までに取りこむべき事柄

    以下,『Jコスト論』から導き出される実施事項を列記します.皆さまの改革計画の参考にして下さい.

    1. 改革推進体制づくり

      各部署から一番優秀な人材,幹部候補生などを集めて『改革Team』を編成し,改革の全権を与えグランドデザインを作り,細部計画に展開し全社に指示し実務展開する.同時に,この活動を通じて人材育成を図る.その組織体は,下記のように階層別にし,全体最適に向けた迅速・強力な体制がよいでしょう.

      会社全体社長直属の改革Team
      部門単位役員直属の改革Team
      部単位部長直属の改革Team
      課単位課長直属の改革Team
    2. 最優先は,在庫金額の削減⇒資金繰り対策
      1. 減産して完成品在庫を極小化する(運転資金確保)
      2. 減産を活用し,少ない仕掛かりで生産できる体制を構築する
      3. 仕入れSupply-Chainを総点検し,購入品在庫を低減する
    3. 事務処理まで含めたOrder-to-Delivery-Lead-Time短縮

中長期の改善計画は,次回にお話しします.

皆さまのご健闘を期待しています.

最後に参考資料として『地球大進化』NHKDVDをお薦めします.姉妹編の『地球大紀行』『人類誕生』も参考になります.内容は,生命体は平穏無事なときには進化せず,存続が危ぶまれるような危機に襲われたとき,大きな変化をし,生き延び,変化した種のみが危機が去った後繁栄してきた……と言う歴史を映像化したモノです.


2020年4月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知