株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center

連載コラム 『Jコスト改革の考え方』目次はこちら

2017年1月より、『Jコスト改革の考え方』というコラムをおよそ月に一度の頻度で更新していきます。

第13回目の公開は2月を予定しています。

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2019年1月

代表新年の御挨拶

明けまして御目出度うございます。

弊社の本年度の目標は

(1)『本流トヨタ方式』『Jコスト論』の普及に努めます

(2)新進の会計学者と共に『Jコスト論』の進化させます

(3)情報はこのホームページに掲載し報告します

としました。

本年もお引き回しの程をお願い致します。

新年に当たっての所感を申し上げます。

元旦からのテレビ放送でも,頂いた年賀状にも『平成最後の・・・・』という言葉が入っていました。

又あるテレビでは秋篠宮の

『毎年やっている定例の行事だからと言って,何も考えずに先例に盲従するのは誤りである。何の為の行事か?このやり方でよいのか?毎回吟味して取り組むべきではないか?』

という主旨の御発言の放送がありました。


この秋篠宮の御言葉が,私の胸に響きました。

と言うのは,私には平成の30年間はものづくりのやり方がバブル時代の盲従で来てしまった部分が多く,改善を生業としている弊社から見ると失われた時間であったと感じているからです。

追い打ちを掛けるように,日経新聞に『カイゼンお役所仕事』と言う記事が載り
『(1)そのハンコ,必要ですか』『(2)子育て申請にため息』とありました。

役所も又,『働き方改革』と言う一方で『業務改革遅々として進まず』が続いています。


日本は農業国で,『明けない夜はない』『台風一過の晴天』という言葉があるように,どんな困難な状況があっても必ず元に戻る・・・と信じる心があります。

この心が強すぎて,1980年代のバブルの時代を原点と考えてしまい,1990年代の不況,2000年代のリーマンショック,等々は一時的なもので,じっと我慢すれば又あの繁栄したバブル時代に戻れる・・・・妄想に駆られてきた30年が平成であった言わざるを得ません。


その結果,国際的機関から以下の残念な評価を得ています。

  • 労働生産性 先進7カ国では最下位 OECD36カ国中21位(2017年)
  • 男女平等度ランキング,144カ国中114位(2017年)
  • 報道の自由度ランキングでは 180カ国中72位(2017年台湾韓国に抜かれる)

弊社の本業である『現場の維持・改善』でお話しすれば,労働生産性が低いことが気になります。詳しくは後半でお話ししますが,先ずは組織の一員として活躍している皆さまは,先に紹介した秋篠宮の御言葉を我が事として汲み取り,他社は?他国は?御自分のお仕事を客観的に見直すところからはじめ,年号が変わることを機に,働き方改革ではなく,業務そのものの改革に取り組むことをお薦めします。


【日本がじり貧になって言った理由・・・弊社の考え方】

1989年から2019年の30年間に世界のものづくりはどう変わったか,弊社の捉え方は,下記の【A】【B】を全世界で展開していったが,日本だけは不完全燃焼だったというものです。以下掻い摘まんで申し述べます。あくまでも私見であり,仮説に過ぎませんが・・・・


世界的な変革の一つは1980年の日米自動車戦争にあります。当時のレーガン大統領にとっては,1945年に徹底的に焼け野原にし,その後10年間進駐軍(英語ではOccupation Army)によって,徹底的な洗脳教育し,2度と米英に盾突かないようにした上で自治権を回復させてやった日本に,米国の基幹産業である自動車が責め立てられるのは何故か!? 徹底的に調査させ以下の二種類の経営手法が脚光を浴びたのでした。

【A】FORDが築いたコンベア化を更に発展させたトヨタ生産方式(TPS)

【B】米国のデミング博士が提唱したTQC


此処の手法のその後の展開を詳しく御説明します。


【A】トヨタ生産方式(TPS)から欧米人用の『Lean Production System』が生まれ全世界に伝播しました。GE社等が先頭を切って導入,中国では『精益改善』と呼ばれています。又,イスラエルのGoldratt博士がTPSからTOC(Theory Of Constraints)を考案し(1984年),更にこれを評価するThroughput会計を編み出しました。

世界の学者に取ってトヨタ生産方式は絶好の研究対象で,構成する要素がひとつ一つの手法として理論付けられ,ルーチン化され,世に広められました。

たとえば 「現場と一緒になって新車を開発していく活動」は『Concurrent Engineering 』として紹介され,「かんばん方式のEssence」は『SCM』となり,職場内のSystemを解析する「モノと情報に流れ図」が『Value Stream Map』となりました。「新車開発時事前検討を重視して,後から問題が出ないようにする手法」は『Front Loading』と紹介されています。トヨタ生産方式の2本の柱の一つ「自働化」はそのまま『JIDOUKA』そのうちの「改善は無限である」と言う部分が『6σ活動』とされ,「異常を顕在化(見える化)させる事」は『Visual Control』等々数多くあります。

トヨタ自体がトヨタ生産方式という暗黙知の塊を形式知に十分出来ないで居る内に,米国からこのような形式知化されて出版され,それが全世界に発信され,日本に逆輸入されているのです。

2000年代に入ると,上記手法を織り込んだERPが普及し更に最近では月額数万円でクラウド型のERPが普及しその中には,上記から派生した最新の改善手法が織り込まれ,全世界のものづくり関係者が使い始めていると言います。

一方日本では,生産管理を例に取れば,大学で一般教養を身につけただけの新人を工場の生産管理の現場に配属し,彼より4〜5年前に先輩に教わり,現在生産管理の実務をやっている人を職場先輩にして,その新人を教育して行く・・・・・・というプロセスを多くの企業では続けてきました。『何時までにどれだけの生産を現場にやらせるか』と言う工場の生産性を決めてしまう機能を,同業他社や世界の趨勢とはまったく無関係に,先輩から後輩への教育だけで済ませている会社が実に多いのです。

多くの企業のトップがこう言った内在する問題に気がつかず,我が社の方式が世界1であり,このまま進めるのが勝利の道と思い込んでいたのではないでしょうか?

何より残念なのは,トヨタが1937年創業で若い会社なので,明治時代に創業した大手から見ると『新参者』として扱われ,そこで生まれた上記の数々の手法を軽蔑し顧みられなかったことです。

トラブルを起こしている三菱,東芝,シャープ,神戸製鋼などはその典型だと思います。


【B】TQCについては,1980年米国が調査に来たときの日本の製造現場では,1960年後半から採用開始した普通高校卒の作業員が,持てる知的好奇心を発揮し『QCサークル活動』で現場改善に当たっていました。その結果,工場現場から自律的に安くて高品質の製品が出来てくるので,会社組織の運営主体である経営陣や管理者層は,経営戦略云々の難しいことを考え無くても,取引先との人間関係さえ良くすれば売れる状態にあり,交際費を使って接待に明け暮れていました。

この状態を確認した米国の調査団は,会社経営の専門技術は無く,もっぱら上司への気遣いと他社との人間関係づくりだけの管理者層こそが日本の弱点であるとして,米国企業の管理者教育に力を入れ,TQMと言う手法を確立し,更に米国としての褒賞として『マルコム-ボルドリッチ賞(The Malcolm Baldrige National Quality Award)』を制定したのでした。モトローラ社,ゼロックス社等がこれに呼応して業績を伸ばしたと言われて,これに刺激され米国の製造業は息を吹き返したとされています。

1999年欧米を視察したとき,TQMと言う管理手法で,TPSを進めている・・・という企業が多かったのが印象的でした。

間もなく日本にも紹介され,1995年トヨタにも導入され,物流管理部長としてTQMの洗礼を受けました。以下,体験をもとに展開法を説明します。


先ず期首に会社方針,部門方針を受けて以下の手順で実施項目を決めます。

  1. Mission-Statement (物流管理部長として今年のMissionは何かを具体的に表明)
  2. Performance-Measure(その成果の評価は何で,どのように測定するのか)
  3. Commitment (必達目標としての数値)
  4. Target    (出来ればここまで達成したいという目標値)

上司の物流担当役員との間で,上司の目指す方針展開との整合性を確認後,副社長出席の下で,報告会を行い最終承認となります。この時トヨタは,A3用紙1枚にまとめて10分以内で報告する事が求められていました。

期末になると,実施結果がCommitmentの数値の何処まで行ったかと,残されている課題等をA3一枚にまとめて上司に報告し,最後に期首と同じ副社長出席の会議で報告します。その成果が賞与に反映されます。

日産には1999年ゴーン改革の柱として導入され,先ずゴーン社長自らが上記(1)(2)(3)を掲げ,それを達成させる為の行動目標を各役員に割り付け・・・管理職全員に展開したことで,見事にV字改革を成し遂げられたとされています。ただCommitmentのフォローがきつく,管理職が疲弊していると言う噂がありました。

今日,企業に勤めている皆さまにお伺いすると,上記のようなTQMの説明は無く,昔はTQCと呼んでいたが,最近はTQMという呼び名に変わったのです・・・という御返事を頂くようになりました。

真面目に米国発のTQMを展開したのはトヨタと日産だったのでは・・・と心配になってきています。


結論として弊社は,平成の30年間で日本がじり貧になって行ったのは,上記【A】と【B】の展開が不十分であった為と考えて居ります。【A】の展開は弊社の生業とするところですので,少しでもお役に立ちたいと願っております。


2019年元旦
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知