株式会社 Jコスト研究所

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J-Cost Research Center

連載コラム『Jコスト改革の考え方』目次

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

ビジネス情報サイトJBpressにおいて、2008年から2013年までの間に合計104回のコラム 『本流トヨタ方式』 を連載していました。

現在連載中のコラム 『Jコスト改革の考え方』と併せて読んで頂くと、より深くJコストの考え方がご理解頂けるかと思います。是非、下記のリンクにアクセスしてみて下さい。

JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』

過去の所信表明





2018年4月

トヨタ式の『石の上にも3年』という考え方

毎年4月になると、希望に胸膨らませた新入社員が入社しますし、ベテラン社員も異動があります。この時上司や先輩から 『石の上にも3年』という言葉が掛けられます。多くの場合は『石の上のような堅くて冷たい場所でも、3年も辛抱すれば暖まり、居心地が良くなると言うから、ここの職場で多少気に入らないことがあっても、逆らわず、先輩のいう事を聞いて職場に溶け込みなさい・・・・』と言う意味に使われています。

50年前、トヨタに入社したときの先輩から指導は、真逆の意味でした。

「個人の基本的人権は侵すことお出来ない永久の権利として憲法で保障されているが、 民間会社は社会に貢献し続けなければ存在意味を持たない。組織はとかく易きに流れる。それ故、公正なルールのもと、ライバルと切磋琢磨することで、共に社会に貢献する存在であり続けられるのだ・・・・」

だから「進歩し続ける社会の中で、 半歩でも先を行かねば組織の存在価値はない・・・」と教えられ、現場実習ではトヨタ生産方式の『自働化』とは、「異常があったらラインを停めて直すこと・・・」更に進んで「異常を発見しやすくすること・・見える化」の実態を叩き込まれました。

この文脈で 「石の上にも3年」を解釈すると、「新しい職場に来れば、新しい発見がある。良いことだったらそれを受入、おかしいと思ったら納得できるまで何故?ナゼ?を追求せよ!」「朱に交われば赤くなる、の言葉のように、 時間とともにおかしいと感じなくなってしまう。」 というモノになります。

実際に入社教育で、「今のやり方のままで行くのであれば、高校卒を採用し、4年間会社の実務をしっかり教え込んだ方がスキルの高い人材に育つし、そう言う人財も採用している。会社の外で4年間過ごした大卒生を採用したのは、この会社を客観的に見て、より良い方向に軌道修正していく人財として採用したのだ・・・・」と言われました。

これと対になる言葉で 「3年したらサボれ」と先輩から指導を受けました。

その真意は、「赴任して、その職場の抱えている問題、成すべき課題がハッキリ見えるのは精々2年間だ! 見える2年間でその仕事を片付けよ!3年目からはその仕事は部下に任せて(部下に育成に重きを置く)、自分はもう一つ上の仕事(上司の補佐)に取りかかれ!」というモノでした。

1980年代豊田章一郎社長は 「勇気(College)!創造(Creation)!挑戦(Challenge)!」を掲げ、

1990年代奥田碩社長は 「トヨタの敵は(昨日の)トヨタ」「変わらない奴が一番悪い!」を掲げていました。

トヨタ在籍中は歴代の社長は社員一人一人が、自分の感性で自分のまわりを見直しておかしいと思ったら行動を起こせと呼びかけているのです。

この「変える」とか「挑戦」と言うことをトヨタ生産方式の中の『改善』と言う手法で説明しましょう。

先ず今やりかたはどうなって居るのか、しっかりと見直しことから始めます。調べてみると、現場だけでなく事務所の作業でも、人によってやり方はまちまちですし、同じ人をとっても、その時の気分で変わってきます。こんな状態ではその「出来映え」も、「所要時間」も出たとこ勝負で、とてもお金を貰ってやっているプロの仕事とは言え無いような現場にも出くわすことがあります。その中で一番良いと思われる作業方法を選び出し、それを『今のやり方』として固定します。

現状のやり方の中で、一番マシなものを選び、これをありのままを表したものとして『表準(おもて標準)作業』と言います。このやり方がベースになります。

この『表標準』をやり続けながら、更にやり易く、確実に仕上がるように新しい作業方法に挑戦して行くことを『改善』とか『変える』と言っているのです。

さて、新しい会社、新しい職場に来られて皆さま、 『石の上にも3年』と言う言葉をどう受け止めますか?

ミイラ取りがミイラになら無いように、御活躍を期待します。

2018年4月吉日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2018年3月

所長 季節のご挨拶

先月の平昌冬季オリンピックは、日本として始めて14個のメダルを取り、沸きました。唯々感激してテレビの前にクギ付けになって、見入っていました。TVでの解説などを見ているうち、『ものづくり現場』として学ばなければならない幾つかの事柄が見えてきました。その中で

『個々人の実力とチームとしての総力を如何に両立させるかの課題』

について皆さまと考えてみたいと思います。

オリンピックから離れて、読者の皆さまが日々気に掛けている作業現場の話に移りますが、私がこのテーマに最初に直面したのは、1980年、トヨタの製造課長に就任し、600人余の部下を束ねて成果を上げて行く重責を負ったときでした。と言うのは、『個人の能力向上』と、『チームとしての総力』とが、高いレベルを狙うほど融合が難しくなっていくという現象があるからなのです。

ここで、トヨタ自動車では、会社としてこれに関してどのような取り組みをしてきたのか紹介しましょう。『個々人の実力向上』(以下記号【P】)と、『チームとしての総力』(以下記号【T】)で表しますと、以下のような施策が打たれてきました。

【P】1950年代;『創意工夫提案制度』を現場に導入しました。

当時は現場には徒弟制度が残っていて、上司が部下の指導をして居て技能は伝わっていましたが、個人としての Identity を発揮してもらうために導入

【T】1960年代;乗用車の生産が本格化し、従業員数が急増し始めました。

上司に対して部下が急増したことになり、個々の問題に上司が関われ無くなる。この事から現場の部下同士がチームを作って、問題解決に当たると共に、部下同士のの連携すなわちチームワークが重要視視され現場での小集団活動として『QCサークル活動』を会社を挙げて活発化させたのでした。

【T】1970年代;大衆車ブームで、更なる急拡大が起きました。

新入社員や異動者が孤立しないように、話し合いの場を少しでももたせようと、『PT(Personal Touch)活動』を展開。会社の仲間と話し合うと申請すれば、チケットで構内の売店で菓子やパンが購入できるようになる。

このような状況下で、1980年、新天地に新工場を建設し、新型車を生産する製造課の課長として赴任し、既存の工場からの人材集めから始めたのでした。関係者の好意で人材は集まりましたが、どうやってチームワークを醸し出すのかが課長としての一番重要な仕事でした。

そしてこれは、オリンピック選手団の編成に重なるところがあります。

トヨタでの『個々人の実力とチームワーク』の話を続けます。

【P】1991年、海外進出が急増し、技能の教育訓練が手薄になって来ていることが顕在化、そこで『専門技能習得制度』が導入されました。

そこでは、初歩的なC級から超ベテランのS級まで、習得すべき技能と知識が整備されていて、現場で日常業務をこなしながら習得した技能と知識が、会社の期待値に到達しているか、各工場にある『訓練道場』で実技試験をし、不足分はその場で習得させる。知識は筆記試験をし、不足分は教育する・・・・これを全員に徹底することで、職場での技能レベルを維持しようとするモノでした。

当然のことながらこの仕組みは全世界に点在する工場に展開されますが、トヨタとしてのレベル合わせが必要となります。

【P】2003年海外事業体の監督者研修、技能訓練のための機関として、『グローバル生産推進センター(GPL)』を設置しました。

このようにして『個々人の能力向上』と『チームワークの醸成』の双方に施策が打たれてきたのでした。

会社方針としても、1992年に制定された『トヨタ基本理念』の第5章で

『労使相互信頼・責任を基本に個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる』

と謳っています。

その後、2001年に制定された『TOYOTAWAY 2001』では

『トヨタウェイの2つの柱は、「知恵と改善」と「人間性尊重」である。「知恵と改善」は、常に現状に満足することなく、より高い付加価値を求めて知恵を絞り続けること。そして「人間性尊重」は、あらゆるステークホルダーを尊重し、従業員の成長を会社の成果に結びつけることを意味している。』とあります。(トヨタHPより)

これを、職場内に展開すれば、 『従業員1人ひとりに対するRespect』と『Team-Workへの評価』になります。

ここまではトヨタのことを書きましたが、皆さまの会社でもほぼ同じ事をされていることと思います。そしてどの職場でも、部下を預かって実務を担当する管理者・監督者にとっては、日々の活動の中で、

  • 『部下1人ひとりの能力を如何にして向上させていくか』
  • 『組織としての成果を如何にして向上させるか』

の相性の良くない二つのテーマを追い求めていくことが課せられているのです。

管理者の皆さまは、そんな立場でスポーツ観戦をする事をお勧めします。そうすると監督や、選手の動きから、得点のありなしとは違った監督者のManagementのドラマを垣間見る事が出来ます。

さて、話を冬季オリンピックに戻して、一緒に考えてみましょう。

オリンピック選手団の団体競技の各競技の監督は、選手個人能力向上と、チームチームとしての成果が与えられたテーマとなります。

個人個人の実力を付けさえるには、個人の力を顕在化させ、 『徹底的に競わせれば良い…』と言うのは、誰でも考えつく方策です。そうするとどうなるか・・・・の典型例を見せてくれたのが『韓国女子』のパシュートでした。

実力のある選手は先頭を走り、力の弱い選手を置いてきぼりにする…。そして勝てないのは弱い選手がメンバーにいるからであると発言をする・・・・と言う絵に描いたような恥ずかしい結果がTVに映し出されてしまったのでした。

次のレースでは案の定、全員が遅い選手の速さで滑る・・・・これも、 『チームワークを大切にせよと』上司が怒鳴った時の典型例を『韓国チーム』が見せてくれたのでした。

チームワークとして完璧な試合展開したのは『日本団体女子パシュート』でした。世界のTopアスリートを並べ、 「1週間練習すれば日本に勝てる」と豪語していたオランダを、抜きつ抜かれつの接戦の末、オリンピックレコードを出して勝ったのでした。

TVのインタビューでは、日本の女子選手がレース中に何が起き、どう対処したのかを、自分の言葉で明確に話しています。準決勝のみを走った選手が「私が壁となって決勝戦の体力の温存してもらいたかった」等はその典型でした。それらの言葉の裏にあるのは、選手同士が互いの特性を理解し合っていて、自分が何をすればチームの勝利に結びつくか真剣に考え、そのためには他のメンバーをRespectしながら何をして欲しいか、トコトン話し尽くしてきて得られたという一体感が滲み出ていました。

監督のなすべきことは、客観的な事実(DATA)を与え、明確な目標を与え、どうしたらその目標を達成できるか、選手達に考えさせ、話し合わせて、皆で合意した結論に自信を持たせることだったようです。選手の個性も違うし状態は刻一刻と変化します。そこには一般解は存在しません。その場に合った特別解しかないのです。

チームワークの話ばかりしてきましたが、忘れてはならないのは、中心となった高木姉妹間の互いをライバルと見ての8年余に亘る切磋琢磨でした。その結果種目は違えど、それぞれ、金・銀メダルを授与される実力を身に付けてきたと言うことです。この個人の力あっててこそのチームワークの優勝だったのです。

私が恐れるのは、 『日本にはチームワークがあるから勝てるのだ』と言う早合点が広まらないかということです。全世界が日本のチームワークを研究してきますから、個人としてメダルを取れるレベルの選手を揃えないかぎり、連覇は難しくなることでしょう。

話を再び製造現場に戻しますと、皆さまの工場から生産される部品(商品)は、世界各国の市場で他社製品と競い合っています。言ってみれば、オリンピック競技場と同様に、多国の代表選手と金メダルを懸けて競争しているわけです。

今まで勝ち続けてきた御社の強みは何処にあるのでしょうか?その製品は御社の製造現場から生みだされています。その現場の強みは何処にあるのでしょうか?ズ〜ッと勝ち続けるには、どうすべきでしょうか?

3月9日からパラリンピックが始まります。此処では手の代わりや足の代わりをする機器が登場します。道具や設備を使って物を作る現場により近い競技になります。

『個々人の実力とチームとしての総力』をサブテーマにして観戦することをお薦めします。

2018年3月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2018年2月

代表の御挨拶

テレビ番組のNHKスペシャル『人体〜神秘の巨大ネットワーク〜』の既放送分が正月特番として再放送されました。

  • 2017年09月30日(再)『プロローグ;神秘の巨大ネットワーク』
  • 2017年10月01日(再)『“腎臓”が寿命を決める』
  • 2017年11月05日(再)『驚きのパワー!“脂肪と筋肉”が命を守る』
  • 2018年01月07日(新)『“骨”が出す!最高の若返り物質』
  • 2018年01月14日(新)『万病撃退“腸”が免疫の鍵だった』
  • 2018年02月04日(新)『“脳”すごいぞ!ひらめきと記憶の正体』

・・・と続きます。

博学のタモリとノーベル賞医学者山中伸弥教授との軽妙な司会で語られる内容は、従来信じられていた、脳が全身のControlをするという定説を根底から覆すものでした。

要点を言えば、従来の常識は、外界の変化は、視覚、嗅覚、聴覚など、いわゆる五感として捉えられ電気信号に変換され、神経細胞群構成されたネットワークを経由されて『脳』に届きます。届いた数多くの情報を『脳』は総合判断して行動を決め、神経細胞のネットワークを通じて各臓器に指令を出します。その結果、外敵から身を守る行動が出来る・・・・というモノでした。

神経細胞のネットワーク以外にも、血液の循環を使った情報システムがあることは従来から知られていました。その一例が、血液中の炭酸ガス濃度を『情報伝達物質』にしたSystemです。走ったり、重いものを持ち上げたりすると、筋肉がより多くの有酸素運動し、血液中の酸素をより多く消費し、代わりにより多くの炭酸ガスを出します。

その結果として血液中の炭酸ガス濃度が増します。するとこの炭酸ガスが『情報伝達物質』の役割を担い、心臓に働き掛けて脈拍を早くし、血管に働き掛けて内径を太くして血液が通り易くします。そして炭酸ガス濃度が正常に戻ると心拍数も血管の太さも正常に戻ります。この事はよく知られて居て、風呂の湯に炭酸ガスを溶かし込んでおけば、皮膚から体内に炭酸ガスが吸収され、それが情報伝達物質として働き、血行が良くなり、身体が温まり、疲れが取れる事が期待されます。それが温泉の効能であり、その応用が入浴剤となっているのでした。

ここで、人体に於ける血液の働きを考えてみましょう。血液量は体重の1/13と言われていますから、5〜6gとなります。心臓の一拍あたりの吐出量は50〜60ミリg、脈拍数は70〜80回/分と言われていますから、1分余で全血液が一巡りする計算になります。

今回、この番組で紹介されていることは、この1分余で一巡りする血液に各臓器が様々な『情報伝達物質』を放出する事で、臓器同士が連絡を取り合っていると言う新事実でした。

例えば、水分を取り過ぎたときは、血液量が増えていきますが、脈拍を速くさせるための炭酸ガス濃度は増えていませんから、心臓に負荷が掛かります。心臓が「しんどい」と言えば(『情報伝達物質』を放出すれば)、腎臓がその情報を受けて血液中の余分な水分を「尿」として取り除く・・・という具合です。

番組ではタイトルにあるように、脂肪、筋肉、骨、腸等を取り上げ、それぞれが何を検知してどんな情報伝達物質を出し、それをどの臓器が受け止め、どんな処置を始めるのか・・・それを極最近の医学では何処まで解明できているのかを説明しています。

其処で展開されている言わば組織論は、

【A】
外敵から身を守る行動や、獲物を捕まえる行動、国家で言えば外交問題、軍事問題については、『脳』が最上位に立ち、各臓器に神経細胞系の情報網で電気信号で命令を下し、各臓器はその命令に絶対服従する、従来考えられてきた仕組みはある・・・。

その一方で、

【B】
人体内で起きる問題、国家で言えば財務、厚生労働、等々の内政問題については、各臓器は平等の立場で役割分担をしており、血液中にある様々な『情報伝達物質』の濃度を変える事で情報を公開し共有化(見える化)し、その機能を担う臓器が乗り出して問題解決を図ると言う仕組みがある・・・・。

と言う事が分かり始めたと言うことでした。

更に、地球上に生命体が誕生したのは約40億年前で、その後進化を続け、多細胞生命が生まれたのは約14億年前と言われています。それ故生命の基本は個々の細胞に在るのだという事。そして生命進化の頂点にあるとされる人間も、1つの卵細胞が受精し、それが分化し成長して数百億個から数千億個からなる細胞で行き脳や骨などの臓器が作られるので、臓器同志は平等な立場で、役割分担していると見るべき、【B】は当然の姿と考えるべきだとの説明もありました。

この番組で語られた【B】の話に私は膝を打って合点しました。そしてこの仕組みこそが、『トヨタ生産方式』の基本的な考え方であるからです。

個人ベースで見れば、会社に中では役割分担として上司と部下の関係があります。しかし一歩会社から出れば、お互い平等な人間同士としてお付き合いします。この事を従業員に植え付けるためにも、トヨタでは様々なインフォーマルな集まりを奨励しました。その結果、会社では厳しい上司が、趣味の囲碁では、部下が師匠で上司が弟子という立場で厳しく指導されると言った場面はざらにありました。

組織的に見れば、技術部が設計した製品を、製造部門が製作しますが、上位にある技術部の命令を、下位にある製造部門が従うのではありません。各部署は対等で、組織としての役割分担にすぎないという考え方をしており、設計に問題があって歩留まりが悪かったり、不良が多かった場合は、会社を良くするために製造部門はビシビシと設計に情報を上げ、設計変更をさせる事は日常的に行われています。

これを生産管理と言う切り口で見れば、【A】は 中央集中管理型と言うべき方式で、【B】は 自律分散型と言うべき方式です。以下、自動車を例にとって説明します。

【A】では、

  1. 最終組立工場で生産する車両の生産計画
  2. その車両に取り付ける生産に使う部品の調達計画
  3. その車両に搭載する自社製のエンジン、ミッション等の生産計画
  4. そのエンジン、ミッション用の部品調達計画

これら全てを本社で計画し、社内及びサプライヤーに指示します。

しかし上記の(1)〜(4)はそれぞれ数日間の時間差があり、しかも、不良率や設備稼働率は予測しずらいこともあり、欠品にならないように余分に生産したり、時間的に余裕を持たせた計画にせざるを得ません。

何よりの害毒は、各工場の管理者は、本社から命じられる生産計画を何も考えずに実行する事に専念せざるを得ないことです。もし担当する工場の計画に異存があったとしても、その工場の計画を変更する事は、全部の計画に影響する恐れがあるため、言い出す勇気が萎えてしまうからです。その結果、製造課長は会社に来ても、Displayを覗き、本社から来た生産計画を確認して、職長に手渡すだけが自分の仕事と勘違いし、現場の実態に何ら関心を示さず数年間の任期を過ごす・・・・という人が多くなるのです。当然現場の活力は失せ、無為に時間が過ぎ、後継者の育成も覚束なくなっていく・・・・こんな現場になり易いのです。

【B】の場合は、トヨタを例に取れば、生産計画は、前記の(2)(3)(4)にはその月に生産する車種とその1日当たりの生産量が提示されます。日々生産は平準化して行われますが、日毎の変動は±10%の変動はあることを前提にして、1回分の納入数量の在庫を確保しておきます。(図1参照)

図1
図1

具体的な生産計画は(1)のみ立案され、ラインサイドにあるプレス品を使って指示された型式の車体を作ります。塗装工場では指示された色で仕上げ、組立工場ではラインサイドにある部品の中から指示された部品を選んで組み付けていきます。部品を使うとそれに対応した 『引き取りかんばん』が発行され、その分を次回の納入便でサプライヤーの完成品在庫の中からPickingして納入されます。サプライヤー在庫の減った分は 『仕掛かりかんばん』という形で次回納入便が来るまでに後補充生産する種類と量を指示します。

この様子は、先の人体の例で、『各工場』を『各臓器』に、『かんばん』を『情報伝達物質』に置き換え、『納入便』を『血流』に置き換えると、同じ仕組みであるとお分かり頂けると思います。

この仕組みでは、事前の生産計画はなく、使ったものを 『かんばん』と言う 『情報伝達物質』で量とTimingをControlしていますので、ある工場だけ独自の動きをしたいと考えた時は、 『かんばん』を増やし、自由度を増して置けば各工場は独自の動きが出来ます。

この特性を使えば、製造課長は随時自分の意志でラインの生産量を一時的に変更するような改善も出来ます。文字通り『自律分散』で、各課が自分の意志で思い切った改善をに取り組めるの仕組みになって居るのです。ここから自ずと各課の改善競争が始まり、それが原動力になって、職長間の知恵比べが始まり職場が活性化しますし、それらが集大成して工場全体が活気づいてくる事が期待できるのです。

『かんばん』は『情報伝達物質』の一形態に過ぎません。真の目的は『在庫後補充方式』にして、そこで使う『情報伝達物質』は各社の業態似合うものを考え出せば良いのです。

これを機会に、皆さまの会社の生産管理体制は、【A】型か【B】型か見直しして見て下さい。もし【A】型であれば、此処に書いた悪い部分がないかどうかご確認下さい。

2018年2月
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2018年1月

代表新年の御挨拶

明けまして御目出度うございます。
今年が皆さまにとって幸多き年でありますように!
又、御社益々の御発展をお祈りいたします。

年頭に当たりまして以下私の念じていることを申し述べます。

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『自分の頭で考える年にしましょう』

第1章 覚めた目で日本の今を見回すと・・・

(1-1)日本中が『羊の群れ症候群』を患っているようです

中国の古典論語に 『由らしむべし、知らしむべからず』という言葉があります。 本来は 『民に法律を守れと言うには易しいがその理由を教えるのは難しい』と言う意味だったとのことですが、現在では 『国民に政策を信じさせ遵わせれば良いのであって、その真意を知ってもらう必要はない・・・・』という意味に使われています。

その為政者に呼応して国民に中では 『政府は国民のことを考えて政治をしてくれているから信用して,言うことを聞いていれば良い』『その政府に盾突き、文句を言うのは不届き者だ・・・』と言う風潮があります。

その証拠の一つが、民主主義の根幹の国民主権の行使である国会、地方議会や首長の選挙においては、諸外国に恥じるような投票率になって居ます。

話は飛びますが, 『羊』と言う動物は常に群がる性質があり,隣に羊が居れば此所が安心だと思い込みます。互いにそう思うので,群れている羊は動こうとしません。安心して何も考えずただ眼前の草を食い続けると言います。

それ故羊飼いは,賢い犬の知恵と勇気を使って,羊の群れを飼い主の思うように動かしているのだそうです。

羊の天敵であるオオカミは,リーダーの賢くて強力な指導力と,強いメンバーシップの下で獲物を探して山野を駆け巡り,獲物を見つけると阿吽の呼吸で役割を分担し,獲物を追い込み,餌食にします。

オオカミに比べると,獲物にされる羊の群れの何と愚かしいことか・・・。肉食獣から見れば 『羊の群れ』は獲物ですが,宗教家から見ると救うべき迷える民衆となるようです。とにかく,来し方,行く末を考えず,隣に仲間さえ居れば安心してひたすら眼前の草を食す羊の群れに似た民衆を 『羊の群れ症候群』と言っているようです。

そして今,私には日本国中がこの 『羊の群れ症候群』を患っているように思えてなりません。

(1-2)日本がドンドン追い越されて行く・・・

1978年,私は現地の自動車工場を調査の為に初めて東南アジア諸国を訪問しました。

独立国として戦禍を免れたタイ王国は別として,インドネシア,マレーシア,フィリッピンは太平洋戦争と,その後の独立戦争からの復興途上で,道路用の土地は広く取ってありましたが,いわゆる掘っ立て小屋が多くありました。中にはトヨタのロゴが付いた家があり,聞けば自動車用部品を送るのに使った梱包資材を流用しているのだとか・・・,そんな貧しい状態でした。

写真1 杭州のホテル26階からの景色
写真1 上海のホテル26階からの景色

この写真は,昨年中国浙江省杭州のホテル26階から撮った街並みです。 文化資産としての旧市街地は一部に残すものの,区画整理をやり直し,高層ビル群に建て替えられています。

写真2 東京スカイツリーからの景色
写真2 東京スカイツリーからの景色

写真2は,東京スカイツリーから見た東側の地域です。荒川,中川,江戸川が見渡せる,いわゆる海抜ゼロメーター地域です。1970年代のままの街並みは,道幅は狭く,木造2階建てが多く,関東大震災時,東京大空襲では猛火に襲われ多数の犠牲者を出したと頃と同じ状態にあると言われています。

2011年の東日本大震災を機に,ここ30年以内に50%を越える確率で東海大地震や南海大地震が起きると警鐘が鳴らされ,あちこちに 『此所は海抜○○メートル』と言う表示が目に入るようになりましたが,2020年に東京オリンピック開催されるという決定されると,紙面から消えてしまったような気がしてなりません。

話題を変え,街並みから社会生活に目を向けると, 『報道の自由度ランキング』ではネットで調べると2007年の11位から下降を続け,2017年では何と,世界の主要7カ国(G7)では最下位,世界では72位まで下がっているとあります。

また,女性の社会進出を妨げる見えない障壁を表すと言う 『ガラスの天井指数』では,経済開発機構(OECD)加盟国29カ国中28位で,最下位は韓国となっています。因みに上位は北欧系が占めています。

写真3 中国での表彰式
写真3 中国での表彰式

写真3は昨年パネリストとして招かれた人材育成ホーラムでのショットです。赤い洋服の女性が主催社の社長で(彼女が起業したという・・・),関係する1,000社を集めて功労者を表彰している場面です。彼女の上手(向かって右側)にいる4人は,表彰された会社の経営者です。舞台上の5人の社長のうち,女性が3人いることになります。フロアーに居た参加者の半分は女性でした。これが世界の常識なのです。日本の男ばかりの社会が,如何に異常なモノであるのか・・・をご認識下さい。

(1-3)大学がドンドン途上国に抜かれていく・・・

1995年頃から初歩的ミスが原因で起きた大事故が目立つようになりました。

1999年9月30日東海村JOC臨界事故が,それを代表しています。これに対処すべく,国としては小渕内閣の下で 『ものづくり基本法』が制定され,経団連(豊田会長)も全面協力という形で 『ものづくり大学』を逐次全国に設置する計画でした。2000年12月に裏で政治家が絡んだ収賄事件が発覚し,残念ながら行田市の1校のみの設置に終わって仕舞いました。

私はトヨタからこの『ものつくり大学』に派遣され,開設から 『ものづくりの基礎』を, 『自作艇の競漕』という特異な授業を考え出し、6年間教えてきました。昨年10年ぶりにオープンキャンパスを訪問したら,すっかりアカデミックなたたずまいになり,先生方も入れ替わっていましたが, 『ものづくりに対する熱意と取り組み』の伝統は脈々と生きていました。この事を私は誇らしく思いました。

この時の大学教育への問題意識は,世界トップの技術を持った町工場 『三鷹光機』の中村義一社長(当時)の入社試験にも展開されていました。課題として,紙で飛行機を作らせて,長く飛んだ順に成績を付けたと言うコトです。この試験で 東大の工学博士が[不採用]になったとして有名になりました。社長に直接お話を伺った事がありましたが,「狭い分野の中で研究を重ねてきた人は,プライドだけは高いが他分野の知識がなく, 『ものづくり』には向かない・・・」と言われ,意気投合した記憶があります。

私は,東南アジアにおける国別の工学部の実力の一つの尺度は 『ABUロボコン』の成績に表れると思っています。1991年から始まったテレビでお馴染みのNHK大学ロボコンは,日本の枠からはみ出し,2002年からはアジアー太平洋ロボコン大会となったのですが,今まで16回の優勝大学を国別で表せば残念ながら下記のようになります。

ベトナム
@BDLMO
中国
EFGHJ
日本
CK
タイ
AI
マレーシア
N

10年間も先行して来た日本勢が,開発途上国とされてきた国々に,特にベトナムに歯が立たない惨状を呈しています。20世紀は日本のものづくりは体をなしていたかも知れませんが,21世紀になるとこのありさまで,日本の工学部の実力は,学生だけでなく,教授陣も,支援体制も後れを取っていると考え,抜本対策を練る時期にあると思います。

(1-4)日本のものづくり産業が買い取られていく・・・

新聞紙上で見ると,20世紀日本を支えてきた大企業が21世紀になると力を弱めてしまい,中国や韓国等の軍門に降っていく記事が沢山載っています。

こうなってしまった推定要因は, 先回11月11日付けてお話ししました。

おさらいすれば,各社とも20世紀にはしっかりとした 『業務規定』を作成し,教育してきたはずですが,1995年頃から会社業務の本格的電算化が始まり,ERP化されたことによって,社員が守るべき 『業務規定』の大枠がコンピューターソフトの中に入ってしまい,社員はコンピューターの命じるままにキーボードを操作すれば,一通りのことは出来るようになって,そのことから, 『業務規定』について何も教えることなく,仕事に就かせてきたため,今では肝心の 『業務規定』の中身を語る人が居なくなってしまった・・・と考えるべき会社が多いのでは・・・と言うコトでした。

第2章 今年はどう取り組むべきか・・・

前の章で,一般論として日本国中に漂っている風潮を 『羊の群れ症候群』としてズルズルと世界の流れから取り残されて生きつつある現象を御説明してきました。ここまでお読み頂き,御社が 『羊の群れ症候群』のなっている可能性があるとお感じになったら,今年はどうすべきか?その取り組み方を考えてみましょう。

この典型的な症状は,自分の考えを持たないようにして,まわりに気を遣い,その空気に溶け込むことで,構成員の一員である自分を見いだし,安心することにあります。

かつて, 『サラリーマンの心得』として皮肉たっぷりに言われた言葉に

『遅れず,休まず,仕事せず』

と言うのがあります。組織の中で空気を読んで,目立たないようにして給料だけもらってくる・・・これがサラリーマンの生きる道・・・と信じて疑わない。これが典型的な症状です。

そしてこの考え方そのものが,日本の生産性を低下させている元凶の一つなのです。以下その病状にならないようにする処方箋を考えてみましょう。

(2-1)部下1人ひとりが自分の頭で考えるように仕向ける

そのためには,通称 『トヨタのA3』と呼ばれて居ますが,自分で調べ,考えたことをA3用紙1枚で報告させるようにすることです。その上で,出したと言う成果がただ偶然得られたものでは無く,理路整然とした分析と的確な行動によるモノで無ければ仕事として認めるわけにはいかないのです。

此所で思い出すのはイチローの言葉です。

『記者の皆さんは,ヒットが無いと調子が悪いと言いますが,私自身は@相手の配置を観察しセーフになる打球の軌跡を読むこと,A読んだ軌跡通りに打てる事を目標にしています。@とAが出来れば私の調子は良く,結果としてアウトだったら相手の守備を褒めるべきと考えています。』

と言う趣旨の発言でした。

記者のヒットか否かの管理は, 『結果の管理』と言い, 『運』任せです。一方イチローの管理は,@とAの技量を上げてヒットを増やすという 『プロセスの管理』で,これを続けることで成績の維持向上が期待できるのです。

トヨタ生産方式では 『品質は工程で作られる』とあるように,徹底して 『プロセス管理』を大事にします。そして会社が急成長した1970年代に当時の豊田英二社長の鶴の一声で, 『管理能力向上プログラム』として,部課長に対し,年度方針の展開結果を, 『A3 1枚でまとめ8分間で報告』させることにしたのでした。爾来,会議資料はすべてA3 1枚に纏めることが定着し,2000年に『ものつくり大学』に赴任するまで,私自身も報告書,会議資料はすべてA3で行っていました。

以下に御説明します様な手順を踏んで得た膨大な資料を, 『A3 1枚』に理路整然と纏めようとしてあがいている中から, 『幹と枝葉末端』,『原因と結果』,『目的と結果』を見極める『ちから』が付いてくるのです。この 『ちから』こそが『思考力』であり,『信念』であり,まさに追い求めている『管理能力』なのです。

(2-2)A3の書き方

色々な本が出ていますが,日本科学技術連盟のQCサークルの発表形式が一番手っ取り早く,参考になります。具体的に御説明しますと以下のようになります。

皆様は,PDCAで物事を考えるように指導されていると思いますが,今現在のやり方にどんな問題があって,それをどう変えていくかと言う取り組みでは,先ず CAがあり,その後本対策としてのPDCAと言う順序になります。以下具体的には

C(Check)とは,
『現地・現物・実情・実態』を言います
A(Action)とは,
『応急処置』,『当座の対応』を言います
P(Plan)とは,
System設計を含めた本対策を言います
D(Do)とは,
本対策の計画的な展開を言います。
1(実施結果のチェック)
効果の確認を言います
1
残された課題と今後の展開を言います
(2-3)『現地・現物・実情・実態』の調査の仕方を説明します
現地;
実際に現象が起きた現場に行って,起きた時間の状況を把握
現物;
実際にそのモノを直接観察して真因を探る・・・

上記 『現地現物』は本人自らが自分の五感で確認することを意味します

実情;
自分の五感では感知できない事柄を当事者から聞き出すこと
現地の法律,習慣,宗教的タブー等々
実態;
上記 『現地・現物・実情』を総合判断して,何がどのように定常的に成されているのかを,今の実態を正確に把握すること

今の実態を是認すると, 『ミイラ取りがミイラになってしまう』事になります。今の実態を否定すれば,現場から 『分かってもらえない』と拒否されます。

それ故,ここでは是認でも否定でも無く 『把握』という言葉を使っています。

『把握』した上で,理想(あるべき姿)通りにすることを妨げている要因の内,自分達では変えられない要因と,変え得る要因(真因)を調べ上げます。

トヨタ生産方式では 『真因』と言いますが,TOCでは 『 Constraints』と言って,よく調べてみると『現場の思い込み』や『特定個人(黒幕)からの圧力』であって変更できる場合が多いのです。ですから, 『把握』した実態から合理的な判断でこれが真因では無いかと言う 『仮説』を導き出し,それをひとつ一つ検証していくことが問題解決に繋がるのです。

ここで言っている 『真因』がどんなモノであるかの例え話をします。

写真4 6本の5寸にんじん
写真4 6本の5寸にんじん

社員食堂の,にんじんジュースの味がおかしいと言う事件が起きました。レシピは2個のリンゴに対してにんじん1本の割合でミキサーに掛けて作っていました。担当者は変わったが,レシピ通りにやっていると言います。購買担当は,何時も新鮮なにんじんを仕入れていると言う・・・・何が真因か・・・?

そこで仮説を立てます。ジュースの味はリンゴとにんじんの比率と,ミキサーに掛ける時間が要因と考えられますが,工業製品は大きさは同じなのに,農産物は規格の幅が大きいのが普通です。大きさのバラツキが 『真因』であると仮説を立て,実態の把握に入りました。最初にレシピを作った人は,写真4にある5寸にんじんを使って,リンゴ2個とにんじん1本の比率を決めたと言う事でした。

ジュースを作る現場に行ったら,写真5のように種を蒔きっぱなしで間引きしてない栽培法でわざと小さいにんじんを多くした不揃いの3寸にんじんが準備されていました。

購買担当者に実情を聞くと,小さいにんじんをまるごと入れた洒落たスープ用に仕入れたモノで,大きめのモノはジュースにする言うことで不揃いのにんじんを仕入れて原価低減案を図っていると言う事でした。それで 『真因』はリンゴとにんじんの比率を 『重量比』にしてなかったことと,部署間の連絡不足でした。

写真5 33本の3寸にんじん
写真5 33本の3寸にんじん

このように真因の仮説を立てては検証し,実証されれば対策をして問題の根本解決を図っていくのです。

(2-4)『応急処置』,『当座の対応』とは

取り敢えず発生した不具合による被害を最小限にする処置で,品質不良であれば,人海戦術で不良品をはね出し手直しすることなど言います。あくまでもこのレベルは暫定対策に過ぎないと認識しなければいけません。

(2-5)Plan(本対策計画)とは

このような不具合が再発しないように,徹底的な真因追求と,本対策への道筋を,要員計画から予算計画まで入れた具体的なスケジュールを立て実施することを表します。

(2-6)Do(計画の実現状況)とは

Plan通りに遂行できたか否かを書きます。

(2-7)実施結果のチェック

計画を実施した結果。所定の効果を上げ得たか否かをエビデンスで実証します。

(2-8)残された問題と今後の展開とは

本対策で未だ不十分なところがあれば,その追加対策案を報告し,充分であれば,次に取り組むて課題を明らかにします。

(2-9)A3一枚でまとめる

上記をA3一枚でまとめることで,何が本筋で,何が枝葉末端かを見極める力,いわゆる管理能力を身につけさせて, 『羊の群れ症候群』から部下を快復させる事をお勧めします。

第3章 まず自社から日本再生をお始め下さい・・・

中国の古典大学に 『身修まってのち家ととのう。家ととのいてのち国治まる。』と言う有名な言葉があります。今風に言えば 『出来ることからコツコツと』という事でしょう。

日本国中を一度に変えることは出来ませんが,1社ずつ戦線に復帰していけば,世界最強のものづくり軍団の復興も夢ではありません。

そんな心意気で,2018年の新年を機に御社のご活躍と,飛躍をお祈り致します。


さてここからは余談になりますが,今回ご紹介しましたA3手法のうち 『現地・現物・実情・実態』の威力を, 一度お試し下さい。テーマは,昨年末マスコミを賑わしたいわゆる 『日馬富士暴行事件』が良いと思います。

と言うのは,皆様はほぼ同等にマスコミからの情報を得ているからです。

お試し頂くと,違った実態と真因の 『仮説』が浮かび上がって来ると思います。

これが皆様ご自身で考えて得られた,何人も犯すことにできない皆様の財産なのです。

ここに,マスコミの報道では欠けて居たり,故意に流さなかったと思われるエビデンスがありますので,参考までに加えさせて頂きます。

E1;
相撲という特徴を捉えた,浄瑠璃,後に歌舞伎の定番となった 『双蝶々曲輪日記』の,「堀江角力小屋の場」の要約をネットでお読み下さい。
そこでの登場人物で大関濡れ髪長五郎を白鳳,素人相撲の離れ駒の長吉を貴の岩に当てはめてお読み下さい。
E2;
白鳳から金星を奪った後で,仲間との飲み会で貴の岩が「これからは俺たちの世界だ」と言った耳にした白鳳が,2人のモンゴル系横綱を誘って,横綱3人組での飲み会に乗り出し,「おまえ最近,偉そうなことを言っているじゃないか」と部屋が違う(別の会社)力士に対し1次会で説教し,更に2次会で先輩に対する礼に欠けると言う理由で咎め,モンゴル語を交え延々とネチネチといじめ抜いての後の傷害沙汰と言う事。モンゴル語の分からない同席した日本人に何が起きているのか説明できない状況だったと言う事。
E3;
千代の富士は,本場所では不利になりそうな力士に対しては,出稽古の場を使って,しかも横綱という立場を使い地獄の可愛がりをして,本場所での星を稼いだと言う評判が立っていたとの事。
E4;
約半年前,モンゴル放送で白鳳と朝青龍との対談番組があり,モンゴルの諺,「施しをするなら知らない人より知っている人にやるべきだ」という言葉を確認し合っていたという報道があります。相撲言葉に言い換えれば,困ったときには星のやり取りをしましょうと同意義になる言葉である事。
E5;
貴乃花親方は,横綱時代,大関若乃花と同点決戦を強いられ,実兄弟で優勝争いをするという前代未聞の厳しい場面を乗り越えてきています。それ故,他の部屋の力士との飲み会は厳禁していた事。
E6;
現場に居合わせなかった貴乃花親方に再三再四協会が『事情聴取』を求めると言う事はナンセンス,示談書にサインせよと言う意味か?

以上のエビデンスを 『現地・現物・実情・実態』の手法で解析すると,決して口にすることが出来ないような 『実態』が存在し、それをめぐっての駆け引きであろうと仮説が成立します。実際はそれを検証していくのです。

トレーニングとしてお試し下さい。

最後になりましたが,本年も弊社お引き回しのことをお願い致します。

2018年元日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知



2017年11月

御社の『管理規定』や『業務分掌』はご健在でしょうか

<個人の持つ技能の伝承の危機を2007年問題として取り組んだが、会社組織の管理規定の伝承が手薄だったのではないか?>

このところ立て続けに、日本を代表する製造業で不祥事が報道されています。その主なモノは以下のようになります。

2017年
@ 富士重工・日産自動車の検査員問題
A 神戸製鋼の品質データー改ざん
2016年
B 三菱自動車Catalog燃費詐称事件
2015年
C 東芝-長期に亘る不適切会計
D 東洋ゴム試験データー詐称
E タカタ-エアバック不具合

多くの製造業関係者は、この報道を聞いて眉をひそめますが,内心では「我が社は大丈夫」とお思いのことでしょう。

ところが、トヨタでの現場歴30年その後コンサルタント歴20年の私には、俗に言う「50歩・100歩」で、上記企業は病状が急変し救急車の御世話になっただけで、日本国中が同じ病気に罹って居るように思えてなりません。そうでないことを祈りつつ、私の抱いている懸念を以下お話しします。

それは、2007年問題は、実は会社組織の規定類の伝承に影響しているのではと言う懸念です。

私の会社組織の規定類に関する原体験は約50年前のトヨタのデミング賞の審査時にありました。

当時、審査の先生方から上司が厳しい指導があり、それを受けて、上司は思い悩みながら、その指摘の意味することを理解し、具体的に何をどう直すべきか判断し、現場の管理体制をテキパキと再構築して行きました。

上司のお手伝いをしながら私が学んだのは、 『根拠を明らかにせよ』ということでした。

国家には、その国家の目指す方向を明確にした憲法があり、その下に民法、刑法、等々の法律があります。国家のあらゆるコトは、その法律に従って成されているわけです。そしてこれらの法律には必ず 『改正の手続き』が明記されているのです。

これを会社に置き換えれば、憲法に相当する 『創業の精神』とか 『社是』と言った経営哲学があり、従業員には 『就業規則』があります。会社を具体的に運営する為の 『組織図』があり、各組織の活動内容を規定した 『管理規定』と、組織でどのような分担で遂行するかを記した 『業務分掌』が整備されていなくてはならない事になります。

もう一つの側面は、今は何処の会社でもやられていると思いますが、 『方針管理』があります。これは、

会社方針 ⇒ 部門方針 ⇒ 工場方針 ⇒ 部方針 ⇒課方針 ⇒ 係方針

と、Topから末端まで同時展開されて、時々刻々と変化していく市場や社会情勢に的確に会社が自らを変えて適応していく活動を指します。前者が 『維持活動規定』で、後者は 『改革活動』に当たります。両者が混在することで、毎日の業務をこなしながら、会社は自己改革を進め、変化に対応していけるのです。

デミング賞審査の先生方が指摘したのは、現状を維持するための 『管理規定』・『業務分掌』と、自らを変えていく 『方針管理』に不備が多いと言うことだったのでした。

審査期間は僅か1年程度でしたが、工場挙げて抜けだらけであった工場の 『管理規定類』『業務分掌』を整備し、帳票類も定め徹底しました。当時は紙媒体であったので1年間で、日本工業規格(JIS)や労基法の等関連資料も含めると、事務所の壁一面が、それを保管する書棚になって行った記憶があります。

その活動の中で今でも鮮明に記憶している事を2例紹介しましょう。

品質管理台帳

組み立ての様子

毎日毎日、現場で生産している製品の品質特性の母集団が変化していないかを、ランダムに抽出したSample(通常4個)の測定値(計量値)のを基にして 『Xbar-R管理図』を作り、これで変化を監視しています。

これは、先月の実績から導かれた95%信頼の管理限界のUCL(上限)LCL(下限)を記した記録紙に今日の平均値を打点して異常の有無を確認していく・・・という管理なのです。

これは前月の品質レベルに対して今月も同じ品質レベルを維持しているか否かの統計的判定していることを意味していて、この管理方法では、先月の実績に対して 『日単位』『週単位』の比較的小さな周期の変化は掴めますが、設備の劣化などのように 『月単位』から 『年単位』に亘るジワジワと変わって行く変化は掴めません。それを掴むために、月々の管理のために算出された月々のUCL、LCLの推移をグラフにして、長周期変化を捉えることが必要・・・・これが 『品質管理台帳』なのでした。

私はこのデミング賞受賞準備の中で、品質管理とは何かを知ることが出来ました。

体温を例にとって御説明しましょう。一概に人の基礎体温は36℃〜37℃と言われていますが、実際は日々の変動より個人差の方が大きく、個人の日々のバラツキは0.2℃以内だと聞きます。

個人差が大きいので、たまたま36.5℃であったとしても、在る人にとっては微熱状態であるし、在る人にとっては低体温状態かも知れないのです。厳密な判定は、毎日測定し、昨日までの体温との差が統計的に有意で有るか否かの検定をしないと、異常か正常かが分からないのです。

因みに女性は、排卵後妊娠の準備のため基礎体温が0.3℃ほど上がることが知られています。それ故毎日基礎体温を測定し続ければ排卵日を知ることが出来るとされています。

会社の現場の状況も同じで、毎日ランダムにSamplingしていれば変化を掴むことが出来ますが、長周期に亘る変化は、月々のデーターを見比べて見るしかないのです。

話を神戸製鋼に戻せば、出荷鋼材の強度の 『品質管理台帳』を作成するという 『管理規定』が伝承されていれば、鋼材の強度の母集団を推定出来ますから、強度不足で不合格になる比率が月々計算できます。そうすれば、出荷品質としての 『合否』より前に、製造品質の変化で捉えることが出来るハズで、 『製造異常』として事業所内での大問題になっているはずです。

つまり特定の個人が悪かったことは当然ですが、会社組織としての 『品質管理規定』が社内で伝承されていれば、このような事態はあり得ないのです。

このように、ルールを決めそれを書類に残して置き、人が替わっても同じルールを適応する事を 『法治主義』と言います。

この対極にあるのが 『人治主義』です。

『法治主義』と『人治主義』

高層ビル

ここ5年ほど、毎月のように中国企業の改善手伝いをしていますが、訪れた中国資本の工場は、才覚のある人物が作った私企業で、本人が董事長という職に就き、全てが彼の一言で決まっていきます。ここまで急成長する過程では必要であったことと思いますし、これから新市場に進出するときには、その意志決定の速さは強力な武器となります。

しかし、その一人さえ説得すれば道が開けるとなると、忖度して気を引くなど 『頭を使わず気を遣う』部下が増えてきます。諫言が横行し、部下同士が裏に回って足の引っ張り合いをして、統治そのものが崩壊していく・・・これが中国5千年の歴史ですが、皇帝から董事長まで同じ現象が見受けられます。

中国のことだと安心は出来ません。

日本でも、間もなく開かれる臨時国会のメインテーマの一つが 『モリカケ忖度問題』でしょうし、法案を理路整然と説明出来ない大臣の問題になりそうです。

如何に 『法治主義』を目指し、 『法体系を』を整備しても、伝承がうまく行かなければたちまち、国家でも忖度が横行する 『人治主義』に替わってしまうのです。

われわれ私企業は特に、1990年代のバブルの崩壊(中国の竹のカーテンが開いたことによる・・・)で採算が悪化し採用を控えた為の世代断絶、急激な業務のITC化、急速な海外展開などの劇変の中主要業務がDisplayとKeyboardになってしまい、規定類に目もくれなくなり、社内でも 対面し口頭で意思疎通する場面が激減してきていることも無関係ではないと思います。

コンピューター

11月には来年度の会社方針として新たなるテーマを探す時期と思います。それに向けて、自社の業務は 『人治主義』『法治主義』かを見極め、 『規定類の再整備』を来年度方針に散り組むか否かの御検討の時期と思います。