連載コラム『Jコスト改革の考え方』目次
JBpress連載コラム『本流トヨタ方式』
ビジネス情報サイトJBpressにおいて、2008年から2013年までの間に合計104回のコラム 『本流トヨタ方式』 を連載していました。
現在連載中のコラム 『Jコスト改革の考え方』と併せて読んで頂くと、より深くJコストの考え方がご理解頂けるかと思います。是非、下記のリンクにアクセスしてみて下さい。
過去の所信表明
2018年1月
代表新年の御挨拶
明けまして御目出度うございます。
今年が皆さまにとって幸多き年でありますように!
又、御社益々の御発展をお祈りいたします。
年頭に当たりまして以下私の念じていることを申し述べます。
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『自分の頭で考える年にしましょう』
第1章 覚めた目で日本の今を見回すと・・・
(1-1)日本中が『羊の群れ症候群』を患っているようです
中国の古典論語に 『由らしむべし、知らしむべからず』という言葉があります。 本来は 『民に法律を守れと言うには易しいがその理由を教えるのは難しい』と言う意味だったとのことですが、現在では 『国民に政策を信じさせ遵わせれば良いのであって、その真意を知ってもらう必要はない・・・・』という意味に使われています。
その為政者に呼応して国民に中では 『政府は国民のことを考えて政治をしてくれているから信用して,言うことを聞いていれば良い』『その政府に盾突き、文句を言うのは不届き者だ・・・』と言う風潮があります。
その証拠の一つが、民主主義の根幹の国民主権の行使である国会、地方議会や首長の選挙においては、諸外国に恥じるような投票率になって居ます。
話は飛びますが, 『羊』と言う動物は常に群がる性質があり,隣に羊が居れば此所が安心だと思い込みます。互いにそう思うので,群れている羊は動こうとしません。安心して何も考えずただ眼前の草を食い続けると言います。
それ故羊飼いは,賢い犬の知恵と勇気を使って,羊の群れを飼い主の思うように動かしているのだそうです。
羊の天敵であるオオカミは,リーダーの賢くて強力な指導力と,強いメンバーシップの下で獲物を探して山野を駆け巡り,獲物を見つけると阿吽の呼吸で役割を分担し,獲物を追い込み,餌食にします。
オオカミに比べると,獲物にされる羊の群れの何と愚かしいことか・・・。肉食獣から見れば 『羊の群れ』は獲物ですが,宗教家から見ると救うべき迷える民衆となるようです。とにかく,来し方,行く末を考えず,隣に仲間さえ居れば安心してひたすら眼前の草を食す羊の群れに似た民衆を 『羊の群れ症候群』と言っているようです。
そして今,私には日本国中がこの 『羊の群れ症候群』を患っているように思えてなりません。
(1-2)日本がドンドン追い越されて行く・・・
1978年,私は現地の自動車工場を調査の為に初めて東南アジア諸国を訪問しました。
独立国として戦禍を免れたタイ王国は別として,インドネシア,マレーシア,フィリッピンは太平洋戦争と,その後の独立戦争からの復興途上で,道路用の土地は広く取ってありましたが,いわゆる掘っ立て小屋が多くありました。中にはトヨタのロゴが付いた家があり,聞けば自動車用部品を送るのに使った梱包資材を流用しているのだとか・・・,そんな貧しい状態でした。

この写真は,昨年中国浙江省杭州のホテル26階から撮った街並みです。 文化資産としての旧市街地は一部に残すものの,区画整理をやり直し,高層ビル群に建て替えられています。

写真2は,東京スカイツリーから見た東側の地域です。荒川,中川,江戸川が見渡せる,いわゆる海抜ゼロメーター地域です。1970年代のままの街並みは,道幅は狭く,木造2階建てが多く,関東大震災時,東京大空襲では猛火に襲われ多数の犠牲者を出したと頃と同じ状態にあると言われています。
2011年の東日本大震災を機に,ここ30年以内に50%を越える確率で東海大地震や南海大地震が起きると警鐘が鳴らされ,あちこちに 『此所は海抜○○メートル』と言う表示が目に入るようになりましたが,2020年に東京オリンピック開催されるという決定されると,紙面から消えてしまったような気がしてなりません。
話題を変え,街並みから社会生活に目を向けると, 『報道の自由度ランキング』ではネットで調べると2007年の11位から下降を続け,2017年では何と,世界の主要7カ国(G7)では最下位,世界では72位まで下がっているとあります。
また,女性の社会進出を妨げる見えない障壁を表すと言う 『ガラスの天井指数』では,経済開発機構(OECD)加盟国29カ国中28位で,最下位は韓国となっています。因みに上位は北欧系が占めています。

写真3は昨年パネリストとして招かれた人材育成ホーラムでのショットです。赤い洋服の女性が主催社の社長で(彼女が起業したという・・・),関係する1,000社を集めて功労者を表彰している場面です。彼女の上手(向かって右側)にいる4人は,表彰された会社の経営者です。舞台上の5人の社長のうち,女性が3人いることになります。フロアーに居た参加者の半分は女性でした。これが世界の常識なのです。日本の男ばかりの社会が,如何に異常なモノであるのか・・・をご認識下さい。
(1-3)大学がドンドン途上国に抜かれていく・・・
1995年頃から初歩的ミスが原因で起きた大事故が目立つようになりました。
1999年9月30日東海村JOC臨界事故が,それを代表しています。これに対処すべく,国としては小渕内閣の下で 『ものづくり基本法』が制定され,経団連(豊田会長)も全面協力という形で 『ものづくり大学』を逐次全国に設置する計画でした。2000年12月に裏で政治家が絡んだ収賄事件が発覚し,残念ながら行田市の1校のみの設置に終わって仕舞いました。
私はトヨタからこの『ものつくり大学』に派遣され,開設から 『ものづくりの基礎』を, 『自作艇の競漕』という特異な授業を考え出し、6年間教えてきました。昨年10年ぶりにオープンキャンパスを訪問したら,すっかりアカデミックなたたずまいになり,先生方も入れ替わっていましたが, 『ものづくりに対する熱意と取り組み』の伝統は脈々と生きていました。この事を私は誇らしく思いました。
この時の大学教育への問題意識は,世界トップの技術を持った町工場 『三鷹光機』の中村義一社長(当時)の入社試験にも展開されていました。課題として,紙で飛行機を作らせて,長く飛んだ順に成績を付けたと言うコトです。この試験で 東大の工学博士が[不採用]になったとして有名になりました。社長に直接お話を伺った事がありましたが,「狭い分野の中で研究を重ねてきた人は,プライドだけは高いが他分野の知識がなく, 『ものづくり』には向かない・・・」と言われ,意気投合した記憶があります。
私は,東南アジアにおける国別の工学部の実力の一つの尺度は 『ABUロボコン』の成績に表れると思っています。1991年から始まったテレビでお馴染みのNHK大学ロボコンは,日本の枠からはみ出し,2002年からはアジアー太平洋ロボコン大会となったのですが,今まで16回の優勝大学を国別で表せば残念ながら下記のようになります。
- ベトナム
- @BDLMO
- 中国
- EFGHJ
- 日本
- CK
- タイ
- AI
- マレーシア
- N
10年間も先行して来た日本勢が,開発途上国とされてきた国々に,特にベトナムに歯が立たない惨状を呈しています。20世紀は日本のものづくりは体をなしていたかも知れませんが,21世紀になるとこのありさまで,日本の工学部の実力は,学生だけでなく,教授陣も,支援体制も後れを取っていると考え,抜本対策を練る時期にあると思います。
(1-4)日本のものづくり産業が買い取られていく・・・
新聞紙上で見ると,20世紀日本を支えてきた大企業が21世紀になると力を弱めてしまい,中国や韓国等の軍門に降っていく記事が沢山載っています。
こうなってしまった推定要因は, 先回11月11日付けてお話ししました。
おさらいすれば,各社とも20世紀にはしっかりとした 『業務規定』を作成し,教育してきたはずですが,1995年頃から会社業務の本格的電算化が始まり,ERP化されたことによって,社員が守るべき 『業務規定』の大枠がコンピューターソフトの中に入ってしまい,社員はコンピューターの命じるままにキーボードを操作すれば,一通りのことは出来るようになって,そのことから, 『業務規定』について何も教えることなく,仕事に就かせてきたため,今では肝心の 『業務規定』の中身を語る人が居なくなってしまった・・・と考えるべき会社が多いのでは・・・と言うコトでした。
第2章 今年はどう取り組むべきか・・・
前の章で,一般論として日本国中に漂っている風潮を 『羊の群れ症候群』としてズルズルと世界の流れから取り残されて生きつつある現象を御説明してきました。ここまでお読み頂き,御社が 『羊の群れ症候群』のなっている可能性があるとお感じになったら,今年はどうすべきか?その取り組み方を考えてみましょう。
この典型的な症状は,自分の考えを持たないようにして,まわりに気を遣い,その空気に溶け込むことで,構成員の一員である自分を見いだし,安心することにあります。
かつて, 『サラリーマンの心得』として皮肉たっぷりに言われた言葉に
『遅れず,休まず,仕事せず』
と言うのがあります。組織の中で空気を読んで,目立たないようにして給料だけもらってくる・・・これがサラリーマンの生きる道・・・と信じて疑わない。これが典型的な症状です。
そしてこの考え方そのものが,日本の生産性を低下させている元凶の一つなのです。以下その病状にならないようにする処方箋を考えてみましょう。
(2-1)部下1人ひとりが自分の頭で考えるように仕向ける
そのためには,通称 『トヨタのA3』と呼ばれて居ますが,自分で調べ,考えたことをA3用紙1枚で報告させるようにすることです。その上で,出したと言う成果がただ偶然得られたものでは無く,理路整然とした分析と的確な行動によるモノで無ければ仕事として認めるわけにはいかないのです。
此所で思い出すのはイチローの言葉です。
『記者の皆さんは,ヒットが無いと調子が悪いと言いますが,私自身は@相手の配置を観察しセーフになる打球の軌跡を読むこと,A読んだ軌跡通りに打てる事を目標にしています。@とAが出来れば私の調子は良く,結果としてアウトだったら相手の守備を褒めるべきと考えています。』
と言う趣旨の発言でした。
記者のヒットか否かの管理は, 『結果の管理』と言い, 『運』任せです。一方イチローの管理は,@とAの技量を上げてヒットを増やすという 『プロセスの管理』で,これを続けることで成績の維持向上が期待できるのです。
トヨタ生産方式では 『品質は工程で作られる』とあるように,徹底して 『プロセス管理』を大事にします。そして会社が急成長した1970年代に当時の豊田英二社長の鶴の一声で, 『管理能力向上プログラム』として,部課長に対し,年度方針の展開結果を, 『A3 1枚でまとめ8分間で報告』させることにしたのでした。爾来,会議資料はすべてA3 1枚に纏めることが定着し,2000年に『ものつくり大学』に赴任するまで,私自身も報告書,会議資料はすべてA3で行っていました。
以下に御説明します様な手順を踏んで得た膨大な資料を, 『A3 1枚』に理路整然と纏めようとしてあがいている中から, 『幹と枝葉末端』,『原因と結果』,『目的と結果』を見極める『ちから』が付いてくるのです。この 『ちから』こそが『思考力』であり,『信念』であり,まさに追い求めている『管理能力』なのです。
(2-2)A3の書き方
色々な本が出ていますが,日本科学技術連盟のQCサークルの発表形式が一番手っ取り早く,参考になります。具体的に御説明しますと以下のようになります。
皆様は,PDCAで物事を考えるように指導されていると思いますが,今現在のやり方にどんな問題があって,それをどう変えていくかと言う取り組みでは,先ず CAがあり,その後本対策としてのPDCAと言う順序になります。以下具体的には
- C(Check)とは,
- 『現地・現物・実情・実態』を言います
- A(Action)とは,
- 『応急処置』,『当座の対応』を言います
- P(Plan)とは,
- System設計を含めた本対策を言います
- D(Do)とは,
- 本対策の計画的な展開を言います。
- C 1(実施結果のチェック)
- 効果の確認を言います
- A 1
- 残された課題と今後の展開を言います
(2-3)『現地・現物・実情・実態』の調査の仕方を説明します
- 現地;
- 実際に現象が起きた現場に行って,起きた時間の状況を把握
- 現物;
- 実際にそのモノを直接観察して真因を探る・・・
上記 『現地現物』は本人自らが自分の五感で確認することを意味します
- 実情;
- 自分の五感では感知できない事柄を当事者から聞き出すこと
現地の法律,習慣,宗教的タブー等々 - 実態;
- 上記 『現地・現物・実情』を総合判断して,何がどのように定常的に成されているのかを,今の実態を正確に把握すること
今の実態を是認すると, 『ミイラ取りがミイラになってしまう』事になります。今の実態を否定すれば,現場から 『分かってもらえない』と拒否されます。
それ故,ここでは是認でも否定でも無く 『把握』という言葉を使っています。
『把握』した上で,理想(あるべき姿)通りにすることを妨げている要因の内,自分達では変えられない要因と,変え得る要因(真因)を調べ上げます。
トヨタ生産方式では 『真因』と言いますが,TOCでは 『 Constraints』と言って,よく調べてみると『現場の思い込み』や『特定個人(黒幕)からの圧力』であって変更できる場合が多いのです。ですから, 『把握』した実態から合理的な判断でこれが真因では無いかと言う 『仮説』を導き出し,それをひとつ一つ検証していくことが問題解決に繋がるのです。
ここで言っている 『真因』がどんなモノであるかの例え話をします。

社員食堂の,にんじんジュースの味がおかしいと言う事件が起きました。レシピは2個のリンゴに対してにんじん1本の割合でミキサーに掛けて作っていました。担当者は変わったが,レシピ通りにやっていると言います。購買担当は,何時も新鮮なにんじんを仕入れていると言う・・・・何が真因か・・・?
そこで仮説を立てます。ジュースの味はリンゴとにんじんの比率と,ミキサーに掛ける時間が要因と考えられますが,工業製品は大きさは同じなのに,農産物は規格の幅が大きいのが普通です。大きさのバラツキが 『真因』であると仮説を立て,実態の把握に入りました。最初にレシピを作った人は,写真4にある5寸にんじんを使って,リンゴ2個とにんじん1本の比率を決めたと言う事でした。
ジュースを作る現場に行ったら,写真5のように種を蒔きっぱなしで間引きしてない栽培法でわざと小さいにんじんを多くした不揃いの3寸にんじんが準備されていました。
購買担当者に実情を聞くと,小さいにんじんをまるごと入れた洒落たスープ用に仕入れたモノで,大きめのモノはジュースにする言うことで不揃いのにんじんを仕入れて原価低減案を図っていると言う事でした。それで 『真因』はリンゴとにんじんの比率を 『重量比』にしてなかったことと,部署間の連絡不足でした。

このように真因の仮説を立てては検証し,実証されれば対策をして問題の根本解決を図っていくのです。
(2-4)『応急処置』,『当座の対応』とは
取り敢えず発生した不具合による被害を最小限にする処置で,品質不良であれば,人海戦術で不良品をはね出し手直しすることなど言います。あくまでもこのレベルは暫定対策に過ぎないと認識しなければいけません。
(2-5)Plan(本対策計画)とは
このような不具合が再発しないように,徹底的な真因追求と,本対策への道筋を,要員計画から予算計画まで入れた具体的なスケジュールを立て実施することを表します。
(2-6)Do(計画の実現状況)とは
Plan通りに遂行できたか否かを書きます。
(2-7)実施結果のチェック
計画を実施した結果。所定の効果を上げ得たか否かをエビデンスで実証します。
(2-8)残された問題と今後の展開とは
本対策で未だ不十分なところがあれば,その追加対策案を報告し,充分であれば,次に取り組むて課題を明らかにします。
(2-9)A3一枚でまとめる
上記をA3一枚でまとめることで,何が本筋で,何が枝葉末端かを見極める力,いわゆる管理能力を身につけさせて, 『羊の群れ症候群』から部下を快復させる事をお勧めします。
第3章 まず自社から日本再生をお始め下さい・・・
中国の古典大学に 『身修まってのち家ととのう。家ととのいてのち国治まる。』と言う有名な言葉があります。今風に言えば 『出来ることからコツコツと』という事でしょう。
日本国中を一度に変えることは出来ませんが,1社ずつ戦線に復帰していけば,世界最強のものづくり軍団の復興も夢ではありません。
そんな心意気で,2018年の新年を機に御社のご活躍と,飛躍をお祈り致します。
さてここからは余談になりますが,今回ご紹介しましたA3手法のうち 『現地・現物・実情・実態』の威力を, 一度お試し下さい。テーマは,昨年末マスコミを賑わしたいわゆる 『日馬富士暴行事件』が良いと思います。
と言うのは,皆様はほぼ同等にマスコミからの情報を得ているからです。
お試し頂くと,違った実態と真因の 『仮説』が浮かび上がって来ると思います。
これが皆様ご自身で考えて得られた,何人も犯すことにできない皆様の財産なのです。
ここに,マスコミの報道では欠けて居たり,故意に流さなかったと思われるエビデンスがありますので,参考までに加えさせて頂きます。
- E1;
- 相撲という特徴を捉えた,浄瑠璃,後に歌舞伎の定番となった
『双蝶々曲輪日記』の,「堀江角力小屋の場」の要約をネットでお読み下さい。
そこでの登場人物で大関濡れ髪長五郎を白鳳,素人相撲の離れ駒の長吉を貴の岩に当てはめてお読み下さい。 - E2;
- 白鳳から金星を奪った後で,仲間との飲み会で貴の岩が「これからは俺たちの世界だ」と言った耳にした白鳳が,2人のモンゴル系横綱を誘って,横綱3人組での飲み会に乗り出し,「おまえ最近,偉そうなことを言っているじゃないか」と部屋が違う(別の会社)力士に対し1次会で説教し,更に2次会で先輩に対する礼に欠けると言う理由で咎め,モンゴル語を交え延々とネチネチといじめ抜いての後の傷害沙汰と言う事。モンゴル語の分からない同席した日本人に何が起きているのか説明できない状況だったと言う事。
- E3;
- 千代の富士は,本場所では不利になりそうな力士に対しては,出稽古の場を使って,しかも横綱という立場を使い地獄の可愛がりをして,本場所での星を稼いだと言う評判が立っていたとの事。
- E4;
- 約半年前,モンゴル放送で白鳳と朝青龍との対談番組があり,モンゴルの諺,「施しをするなら知らない人より知っている人にやるべきだ」という言葉を確認し合っていたという報道があります。相撲言葉に言い換えれば,困ったときには星のやり取りをしましょうと同意義になる言葉である事。
- E5;
- 貴乃花親方は,横綱時代,大関若乃花と同点決戦を強いられ,実兄弟で優勝争いをするという前代未聞の厳しい場面を乗り越えてきています。それ故,他の部屋の力士との飲み会は厳禁していた事。
- E6;
- 現場に居合わせなかった貴乃花親方に再三再四協会が『事情聴取』を求めると言う事はナンセンス,示談書にサインせよと言う意味か?
以上のエビデンスを 『現地・現物・実情・実態』の手法で解析すると,決して口にすることが出来ないような 『実態』が存在し、それをめぐっての駆け引きであろうと仮説が成立します。実際はそれを検証していくのです。
トレーニングとしてお試し下さい。
最後になりましたが,本年も弊社お引き回しのことをお願い致します。
2018年元日
(株)Jコスト研究所 代表 田中正知
2017年11月
御社の『管理規定』や『業務分掌』はご健在でしょうか
<個人の持つ技能の伝承の危機を2007年問題として取り組んだが、会社組織の管理規定の伝承が手薄だったのではないか?>
このところ立て続けに、日本を代表する製造業で不祥事が報道されています。その主なモノは以下のようになります。
- 2017年
- @ 富士重工・日産自動車の検査員問題
A 神戸製鋼の品質データー改ざん - 2016年
- B 三菱自動車Catalog燃費詐称事件
- 2015年
- C 東芝-長期に亘る不適切会計
D 東洋ゴム試験データー詐称
E タカタ-エアバック不具合
多くの製造業関係者は、この報道を聞いて眉をひそめますが,内心では「我が社は大丈夫」とお思いのことでしょう。
ところが、トヨタでの現場歴30年その後コンサルタント歴20年の私には、俗に言う「50歩・100歩」で、上記企業は病状が急変し救急車の御世話になっただけで、日本国中が同じ病気に罹って居るように思えてなりません。そうでないことを祈りつつ、私の抱いている懸念を以下お話しします。
それは、2007年問題は、実は会社組織の規定類の伝承に影響しているのではと言う懸念です。
私の会社組織の規定類に関する原体験は約50年前のトヨタのデミング賞の審査時にありました。
当時、審査の先生方から上司が厳しい指導があり、それを受けて、上司は思い悩みながら、その指摘の意味することを理解し、具体的に何をどう直すべきか判断し、現場の管理体制をテキパキと再構築して行きました。
上司のお手伝いをしながら私が学んだのは、 『根拠を明らかにせよ』ということでした。
国家には、その国家の目指す方向を明確にした憲法があり、その下に民法、刑法、等々の法律があります。国家のあらゆるコトは、その法律に従って成されているわけです。そしてこれらの法律には必ず 『改正の手続き』が明記されているのです。
これを会社に置き換えれば、憲法に相当する 『創業の精神』とか 『社是』と言った経営哲学があり、従業員には 『就業規則』があります。会社を具体的に運営する為の 『組織図』があり、各組織の活動内容を規定した 『管理規定』と、組織でどのような分担で遂行するかを記した 『業務分掌』が整備されていなくてはならない事になります。
もう一つの側面は、今は何処の会社でもやられていると思いますが、 『方針管理』があります。これは、
会社方針 ⇒ 部門方針 ⇒ 工場方針 ⇒ 部方針 ⇒課方針 ⇒ 係方針
と、Topから末端まで同時展開されて、時々刻々と変化していく市場や社会情勢に的確に会社が自らを変えて適応していく活動を指します。前者が 『維持活動規定』で、後者は 『改革活動』に当たります。両者が混在することで、毎日の業務をこなしながら、会社は自己改革を進め、変化に対応していけるのです。
デミング賞審査の先生方が指摘したのは、現状を維持するための 『管理規定』・『業務分掌』と、自らを変えていく 『方針管理』に不備が多いと言うことだったのでした。
審査期間は僅か1年程度でしたが、工場挙げて抜けだらけであった工場の 『管理規定類』『業務分掌』を整備し、帳票類も定め徹底しました。当時は紙媒体であったので1年間で、日本工業規格(JIS)や労基法の等関連資料も含めると、事務所の壁一面が、それを保管する書棚になって行った記憶があります。
その活動の中で今でも鮮明に記憶している事を2例紹介しましょう。
品質管理台帳

毎日毎日、現場で生産している製品の品質特性の母集団が変化していないかを、ランダムに抽出したSample(通常4個)の測定値(計量値)のを基にして 『Xbar-R管理図』を作り、これで変化を監視しています。
これは、先月の実績から導かれた95%信頼の管理限界のUCL(上限)LCL(下限)を記した記録紙に今日の平均値を打点して異常の有無を確認していく・・・という管理なのです。
これは前月の品質レベルに対して今月も同じ品質レベルを維持しているか否かの統計的判定していることを意味していて、この管理方法では、先月の実績に対して 『日単位』や 『週単位』の比較的小さな周期の変化は掴めますが、設備の劣化などのように 『月単位』から 『年単位』に亘るジワジワと変わって行く変化は掴めません。それを掴むために、月々の管理のために算出された月々のUCL、LCLの推移をグラフにして、長周期変化を捉えることが必要・・・・これが 『品質管理台帳』なのでした。
私はこのデミング賞受賞準備の中で、品質管理とは何かを知ることが出来ました。
体温を例にとって御説明しましょう。一概に人の基礎体温は36℃〜37℃と言われていますが、実際は日々の変動より個人差の方が大きく、個人の日々のバラツキは0.2℃以内だと聞きます。
個人差が大きいので、たまたま36.5℃であったとしても、在る人にとっては微熱状態であるし、在る人にとっては低体温状態かも知れないのです。厳密な判定は、毎日測定し、昨日までの体温との差が統計的に有意で有るか否かの検定をしないと、異常か正常かが分からないのです。
因みに女性は、排卵後妊娠の準備のため基礎体温が0.3℃ほど上がることが知られています。それ故毎日基礎体温を測定し続ければ排卵日を知ることが出来るとされています。
会社の現場の状況も同じで、毎日ランダムにSamplingしていれば変化を掴むことが出来ますが、長周期に亘る変化は、月々のデーターを見比べて見るしかないのです。
話を神戸製鋼に戻せば、出荷鋼材の強度の 『品質管理台帳』を作成するという 『管理規定』が伝承されていれば、鋼材の強度の母集団を推定出来ますから、強度不足で不合格になる比率が月々計算できます。そうすれば、出荷品質としての 『合否』より前に、製造品質の変化で捉えることが出来るハズで、 『製造異常』として事業所内での大問題になっているはずです。
つまり特定の個人が悪かったことは当然ですが、会社組織としての 『品質管理規定』が社内で伝承されていれば、このような事態はあり得ないのです。
このように、ルールを決めそれを書類に残して置き、人が替わっても同じルールを適応する事を 『法治主義』と言います。
この対極にあるのが 『人治主義』です。
『法治主義』と『人治主義』

ここ5年ほど、毎月のように中国企業の改善手伝いをしていますが、訪れた中国資本の工場は、才覚のある人物が作った私企業で、本人が董事長という職に就き、全てが彼の一言で決まっていきます。ここまで急成長する過程では必要であったことと思いますし、これから新市場に進出するときには、その意志決定の速さは強力な武器となります。
しかし、その一人さえ説得すれば道が開けるとなると、忖度して気を引くなど 『頭を使わず気を遣う』部下が増えてきます。諫言が横行し、部下同士が裏に回って足の引っ張り合いをして、統治そのものが崩壊していく・・・これが中国5千年の歴史ですが、皇帝から董事長まで同じ現象が見受けられます。
中国のことだと安心は出来ません。
日本でも、間もなく開かれる臨時国会のメインテーマの一つが 『モリカケ忖度問題』でしょうし、法案を理路整然と説明出来ない大臣の問題になりそうです。
如何に 『法治主義』を目指し、 『法体系を』を整備しても、伝承がうまく行かなければたちまち、国家でも忖度が横行する 『人治主義』に替わってしまうのです。
われわれ私企業は特に、1990年代のバブルの崩壊(中国の竹のカーテンが開いたことによる・・・)で採算が悪化し採用を控えた為の世代断絶、急激な業務のITC化、急速な海外展開などの劇変の中主要業務がDisplayとKeyboardになってしまい、規定類に目もくれなくなり、社内でも 対面し口頭で意思疎通する場面が激減してきていることも無関係ではないと思います。

11月には来年度の会社方針として新たなるテーマを探す時期と思います。それに向けて、自社の業務は 『人治主義』か 『法治主義』かを見極め、 『規定類の再整備』を来年度方針に散り組むか否かの御検討の時期と思います。
2017年9月
信州の山里で育った私は,登山と言えば野良仕事の延長でしかありませんでした。
あこがれは海であり,船でした。仲間とディンギー(小型ヨット)を製作したり,クルーザー(大形ヨット)にクルーとして参加し,外洋レースに参加して事もありました。
足腰が弱くなった最近は,客船に乗ってのクルージングに関心が移り,夫婦で楽しんでいます。そんな関係で,今回は,乗船したクルージング船のお話をお伝えします。
巨大クルージング船は自工程完結の塊だった
この6月『東地中海クルーズ』に参加しました。船はMSC社の『ポエジア』(写真@)9.2万トン,乗客定員3,223人,乗組員1,039人でした。

全長294b,全幅32.2bという巨大船なのに,回転,横移動が自在で,自力で接岸・離岸して居ました。船が大きすぎてタグボートの馬力では役に立たないとかで,近くで監視するのみでした。航行は正に 『自工程完結』でした。
世間一般の旅客列車も旅客機も往復した後,車庫に入るなどして清掃・設備点検しますが,この客船は数年間に亘って港から港へと航行を続けていて,清掃・設備点検は航行しながら自力で行うとのことです。
一般的に遠洋航海する船は,漁船から超大型船にいたるまで,洋上で自力で修理する力を持っていなければならないとされ,故障すればエンジンのピストン交換まで出来る能力を持っていると云います。
しかし貨物船と違って この巨大な客船は安全に航行させるだけでは駄目で,1,600余の客室を持ち,3,200人余の乗客の満足を得ながら航行しなくてはなりません。
毎日乗客の使ったシーツやタオルの取り換え・洗濯,客室の清掃,食事の準備,客を飽きさせないための芸人達のエンターテイメント等々に,1,000人余の乗組員が24時間体制で臨んでおりました。
彼等の仕事振りの一端は,全長何千メートルもある木製の手摺りに見て取れました。写真Aにあるすべすべの美しい木目を持った手摺りは,甲板に立って美しい景色を見る時に誰もが手に触れるのですが,船の何処でもその美しさは変わりませんでした。

その秘密は,毎日毎日数十メートルずつサンドペパーを掛け,塗り直し,写真Bにあるように養生をして『ペンキ塗り立て』の表示をしていたのでした。その気になってみると,床も,壁も,毎日少しずつ絶え間なく塗り替えていました。

ある日,港に停泊中写真Cにあるように救命艇を海上に降ろし試運転していました。翌日,大型船が接岸できない観光地なので,自船の救命艇をテンダー(通い船)に使っていました。
万一の場合の救命艇を日常的に使うことで,乗客には安心感を与え,経費節減と一石二鳥の運用に感心しました。

このように,この巨大船の運用は外部に頼ることなく,あらゆる事を日常スケジュールに入れ込み,自分達だけで成し遂げているように見えました。正に 『自工程完結』の塊でした。
この船の 『自工程完結』を工場管理に置き換えて見ると示唆するモノが多くあります。
自動車メーカーは,1月,5月,8月にある約10日間の休みを使って外部メーカーを入れ,新型車立ち上げのための設備改装を行っていました。其れが定例化すると,本来は日常でやるべき設備点検や炉の清掃,床の改修なども,自分たちでやると労務費として計上されるので,見かけの生産性向上を狙って外註に出し,経費として計上するようになっていきました。
一般に 町工場などでは,工具を整備し,材料を準備し,正否安全の要領書を工場側で準備して,アルバイトを頼みます。工場側で準備する部分にものづくりのノウハウがあり,この状態でアルバイトを何年やってもノウハウはほとんど伝わりません。
先に自動車会社の例を挙げましたが,1990年頃のいわゆるバブルの崩壊と言われた頃からこの傾向が顕著になり,爾来約20余年,現在の大企業のほとんどの工場では,町工場側で準備している項目を外註に出し,アルバイトにやらせている単純作業を正社員にやらせてしまっています。その結果,アルバイト的な仕事しか出来ない社員が大半になり,御社のものづくりのノウハウを継承していて,外註のやった仕事に駄目出しできる人材は,定年間際の一部の人達の中にしかいなくなっている恐れがあります。
御社の工場では如何でしょうか?
ここでお話しした,この船の 『自工程完結』ぶりは参考になると思います。
2017年8月
『現地現物』の私的『原体験』
今回は 『現地現物』の私が経験した 『原体験』をお話しします。
今年は2017年、私がトヨタに入社したのが1967年ですので正に50年過ぎたことになりますが、トヨタで過ごした33年間、ものつくり大学での7年間、その後コンサル会社を興しての10年間の活動を支えてくれた一つの柱は、今からお話しします 『現地現物』の 『原体験』によるものでした。
『原体験』その1
入社教育後行われた2ヶ月間の『現場応援』
新入社員教育でも2週間×4職場の 『現場実習』がありましたが、それはあくまでも現場作業の体験が狙いで、作業量は1人工分の一部に過ぎませんでした。
しかし、 『現場応援』は1人工としてカウントされた要員ですから、その本質は全く違っていて、一刻も早く一人前にして仕事をしてもらわなければなりません。それは正に 『期間工』として採用された人がトヨタの現場でどう扱われて、どう一人前に育てられるかの 『体験コース』でもあったわけです。この時の体験が、私のライン作業に対す考え方の基礎になりました。
その時に学んだことの幾つかを紹介しましょう。
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『コンベア作業』は下りのエスカレーターで2階に上がろうとしているようなもので、昇っても、昇っても、階段は降りてくる繰り返しで、変化が欲しくなります。
部品箱が空になり、入れ替えるのが楽しみになります。
単一車種生産より 『多車種混流生産』の方が変化があって楽しいのです。 - 部品とボデーの精度が合わず、調整しながら取り付けなければならない時、リズムが乱されるので腹が立ちます。
- 作業の中に課題を見つけ、工夫しながら作業をするとゲームのようになり楽しくなります。 『KAIZEN』の意味が分かってきます。
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『難しい作業』ほど、やり甲斐が出て来るし、来るのが待ち遠しくなるります。
他人の出来ない作業が出来る事が何よりのプライドになります。 - SPS(部品セット供給)は自由が奪われるので、 『ありがた迷惑』、時間をもらって自分でPickingした方が楽しいし、作業姿勢の変化が付けられて身体に優しい。
- 作業中にLeaderが廻ってきて声を掛けてくれるのが嬉しかったし、気分転換してこいと言って、5分間ぐらいずつ1日数回作業を代わってくれるのが特に嬉しい。
- 締め付け工具の操作に慣れて、ベテランと遜色ない速さで作業が出来るようになった事や、締め付け音を聞いて正否が判別できるようになった事が大きな財産となりました。
これらが身についたお陰で、私自身が設計と作業性について談判できるようになりましたし、現場の仲間として受け入れられるようもなりました。
私のこの経験から、工科系大学出身者を1人前の技術者に育てるためには、ある期間を限って 『一工員として現場体験させること』をお薦めします。
『原体験』その2
『管理能力向上プログラム』の代筆経験
当時のトヨタを社内体制から見ると、1965年デミング賞、1970年デミング賞実施賞を受け、強化を図りましたが、約10年経過した1979年には、受賞当時の部課長が定年を迎え、 『管理能力の劣化』が懸念されるようになりました。
その一方でトヨタを取り巻く環境は、
1970年まで1ドル360円でしたが、1971年のニクソンショックを経て1978年には1ドル176円に急騰してしまっていました。
1973年に起きた第1次石油ショックで原油価格は約20倍にも高騰し、その後下がってきたものの1979年には第2次石油ショックが起きます。又1980年からは本格的な排気ガス規制も始まる・・・という極めて厳しい情勢を迎えていました。
これに対処すべく、1979年1月から部次長を対象として 『管理能力向上プログラム』が開始されました。
具体的には 『工場長方針』を受けて定めた 『各部長方針』の中の最重点項目を取り上げ、その具体的な 『展開状況』 『進捗状況』を 『A3用紙』1枚に纏め、 8分間で理路整然と分かり易く 『役員』に説明せよ・・・というものでした。
上司であるM部長は当時係長であった私にこれをマル投げしてくれました。
字が上手な部下と2人で苦心惨憺して手書きで完成させ、レクチャーして発表会場に送り込みました。発表の場でM部長が受けた『御指導』は増幅してお叱りの言葉としてM部長から告げられ『出来の悪い部下を持つと苦労する』と嫌みまで言われましたが、係長の分際で部長教育をして頂いた事は、私にとっては大変貴重な体験でした。
『現場応援』と 『管理能力向上プログラム』の 『原体験』が 『現地現物』即ち 『現場』に出掛け 『現物』を観察し、 何故?何故?・・・としつこく追求し 『真因』を探り当て対策するという 『行動規範』を作る基になったと考えています。
改善のお手伝いをしている中国企業の話
ここからは毎月1週間ほど改善のお手伝いをしている中国企業の話です。
現場は最新の設備が設置してあり、欧米Makerの基幹システムが導入され、Officeでは事務職員がDisplayとKeyboardを前に黙々と働いていました。ところが現場には在庫の山があり、一方では欠品があり、とても有名な基幹システムの成果とは思えないので、得意の 何故?何故?を中国人にぶつけました。
その結果、驚くべき事に、誰も基幹システムのLogicを知らず、部品が納入されてもその日のうちに入力すれば良いと考え、帰り間際に纏めて入力していました。Supplierへの納入指示は、設計変更があって生産計画から全て再計算して手入力する製品群があり、2〜3日遅れて発注している部品もありました。
中には経営者の親戚だと言って、Keyboardもろくに打てないような人がおり、仕事が遅いどころか、遅れても平気で帰ってしまう始末・・・・でした。
ところで、皆さまの会社は上記の中国の例を他山の石としてご確認をお勧めします。
8月と言えば、本年度の新入社員が入社教育を終え職場配属になる時期でもあります。
製造現場に作業員として配属になる場合の職場教育は、適性検査や、工具取扱の基礎訓練、作業訓練、作業要領書による 『やらねばならない事』『やってはならない事』等を叩き込まれて仕事に就きます。
私の知るかぎり、製造工場ではあるレベルで実施されています。

その一方で、殆どの大卒者は事務所にいて、DisplayとKeyboardを相手にしての作業になりますが、御社の大卒新入社員の場合はどんな基礎教育がなされるのでしょうか。
Keyboard操作の基礎訓練は・・・、Computer Literacy はどう把握していますか?基幹システムのLogicは教え込んでいますか・・・・
Displayに表示されているデータは何処でどのようにして計測し、どのようにして入力された、いつのデーターなのでしょうか?
新入社教育のみならず、現在各部書でDisplayとKeyboardでやっている仕事の総点検と、業務分掌の見直しをお薦めします。
特にものづくりの基本中に基本 『生産計画』はどのような基本データーをもとに、誰が、どのようなLogicで立案して、どんな手続きで決定され、どのような速さで展開しているのか?
幾つかの会社で調査しましたが、多くは ノンキャリ社員の勘でやられていました。
2017年7月
今こそ『現地現物』に立ち返るべし
今,日本国中が将棋界の奇跡,藤井聡太4段の快進撃に沸き返っています。
29連勝と言う空前の記録を作り,7月2日には30連勝なるか・・・・将棋ファンのみならず全国民が固唾を呑んで見守って居ます。これを受けてテレビ各局は競って藤井四段のこれまで成長してきた経緯や,日常の努力などの話題を取り上げ,将棋界を代表するような皆様が解説しています。私も引き込まれて見ていました。
テレビを見ながら私は知人から聞いた 『人類は【A】,【B】の二つの能力を身につけることで今日の繁栄を手に入れた』と言う知人の話を思い出しました。以下その受け売りを含めて,今,日本で起きている事への私の懸念をお話ししたいと思います。
【A】人間と人間を繋ぐ能力
先ずその一つであるCommunicationについては,数十万年前の旧石器時代迄遡ります。 この頃人類は幾つかの家族同居の形で洞窟に住んでいた事が分かっています。群れをなして生活し,自分達より強い獲物を狩るためにはかなり高度な意思伝達が必要になります。当時は乏しい語彙と,顔の表情や身振り手振りでお互いの気持や考えを伝え合っていたと考えられています。この状態が数十万年続いたので,表情やしぐさで相手の気持ちを推し測ると言う人類共有の能力を身につけたのでした。
その後各地に散り,独自の言語や風習を身につけていき,集落から国家という大規模な集団を営むようになって行きますが,祖先から引き継いだこの能力があるので,言葉の壁を越えて,演劇が鑑賞され,外国映画が上映されるのだと言います・・・・・・・・・。
【B】人間と自然界を繋ぐ能力
自然界を観察し,獲物を見つける能力,食べ頃の果実を探し当てる能力などを指し,この能力のお陰で人類は生存し続けました。更に進んで動物を飼い慣らして家畜とし,稔っても種子を飛び散らさない植物を発見し,それを栽培する事で大量の穀物を手に入れ,更に布を織り,衣服を作り,家屋を作りました。
やがて太陽や星の動きから?を作り,?に合わせて集落全員で農作業をすることで効率を上げドンドン豊になって行き,人類は文明を作り上げて来たのでした。
この【A】,【B】の能力は誰もが持っていますが,社会の進化に伴い分業化されていき,【A】の優れた人は人々を束ねる仕事である『士』『商』に就き,【B】に秀でた人は自然界の恵を人々が必要とする商品に変えて提供する,『農』『工』を担うようになって行きました。
この分担が定着し,更に細分化・専門化が進むと【A】と【B】の気質も以下のように分かれていきました。
【A】を得意とする人間群(社会科学的)の特徴
会社勤めの殆どの人がこの分類に入りますが,眼前にある『情報』や『学説』の正否よりも,回りの人間関係に一番の関心を持ち,中に溶け込み,同質化することに腐心します。更に能力のある人達は,その人間関係の中でLeader Shipを握るようになり,更にその人間関係を操る事に喜びを感じるようになります。
結果,自社を如何に成長させるかと言ったことより,社内の人間関係に強い関心を持ち,どの派閥に属していた方が有利か,誰のいう事を聞くべきかなどを嗅ぎ分ける事に腐心します。能力のある人は社内に然るべき人脈を構築します。
特に長けた人は社外にも太い人脈を作り上げて居ます。そして一旦社内で解決すべき課題が発生したときには,その人脈を活かして素速く解決してしまいます。それが社内で揺るぎない評価を得,出世街道を上り詰めやがてTopになる場合が多いようです。客観的にも現状維持にはこれは必要なことです。
しかし,その解決法は 『既存の自社の枠組み』の中で行われることなので,市場とのズレから来る問題には,逆に,事態を悪化させてしまいます。
一刻を争う応急処置は 『既存の自社の枠組み』の中で行うとしても,本対策案作成時には 『現地現物』に徹して【B】の人間を使って自社の仕事の進め方と現状の市場との関係を厳しく点検し,半歩先んじて市場をリードできているか否かを確認するところから始めなければ成りません。
この点検を怠ると会社は ガラパゴス化されていきます。
【B】を得意とする人間群(自然科学的)の特徴
人間関係よりも自然現象に強い関心を持ち,眼前にある『情報』や『定説』の正否を気にします。それを確かめようとして一人で観察したり,考え込んだりする性癖があり,これを『変人』とか『奇人』として軽蔑されたりします。
又『他人の心』や『その場の雰囲気』を察することが苦手なので『KY(空気が読めない)』として馬鹿にされたりします。しかし自然現象に対する感性は鋭く,会社において異常を発見して事故を未然に防いだり,品質不良の真因を解明したりするのはこの人達なのです。
更に能力に長けた人は市場の変化をCatchして、 『新商品』を産み出したり,自社の業績を観察して 『経営課題』を顕在化させるなど,会社存続のための最も大切な部分を担う人材として必要な人材なのです。
人物像が想像出来ない方はテレビドラマの『相棒』の 杉下右京や,『科捜研の女』の 榊マリコをご覧ください。両名がそのキャラを良く表現しています。
ここからは,この文脈上で,企業の改革・改善業務に携わっている専門家としての立場から,ここ4〜5年ものづくり現場で私が感じ始めた心配事を御説明します。
【A】が最近抱え込んだ問題
少子化の為,子供達が群れになって遊ぶ中での下級生へのいたわりや,LeaderShipを発揮しての競い合うのを磨く場がなくなり,面と向かって議論し言い負かす機会も消えました。
更にスマホの普及で,隣り合って座っても共にスマホをのぞき込み,ゲームをするか,遠くの同年のメル友と絵文字の通信をする・・・という生活になってしまっています。顔を合わせて交わす会話は「えっ!うそ!ほんと!すげ〜!」で代表されるような語彙の少ない会話。これが10余年前大学で教員をしていた頃の学生達のコミュニケションに対する実感でした。
この学生達の世代が今,会社の実務を担う30代として働いているのです。
【B】が最近抱え込んだ問題
自然界との接点を担う【B】は,もっと大変な事になっています。子育て中の世代は都会暮らしのため,その子供達が大自然を自分の五感で感じる機会が少なくなってしまいました。学校教材の文章や画像で学ぶしかありません。
1990年代になるとインターネットが普及し,検索すればどのような情報も入手出来,項目数は膨大になりましたが,内容は文字と画像には変わりなく,拙いことに誰でも投稿出来るため,『群盲象を評す』と言う印度の寓話通りの情報が溢れているのも事実です。
その一方で,Computerのいわゆる2000年問題が顕在化し,これを乗り越えるために各企業は社内の基幹システムを更新したと言われています。その結果,会社内では営業からの注文情報を入力さえすれば,Computerが「材料発注」「生産指示」「納品指示」等迄やってくれるので, 『現地現物』による確認は全く不要で,各部書はその 「指示」に従って作業すれば良い・・・という状況が20年近く続いていると言う事になります。
社員の年齢から見ると,課長層の中堅以下新入社員に至るまで,入社以来,Display上のComputerからの指示を見て,Keyboardを叩いて回答するという作業しか教えられず,どんなLogicで動いているのか,現場がどうなって居るのか,どんな時間差なのか 『現地現物』で確認できないまま作業している・・・と言う実態があるのです。
以上が,かねてから抱いていた私の懸念です。
最近,この「懸念」が現実となってきました。
マスコミ報道を私流に解釈すれば, 東芝がおかしくなったのは,米国の原発建設会社の 『現地現物』による調査をせず, Display(Computerが出した結論)で判断して買収し,その後もDisplayとKey-boardで対応してきたためで,もっと言えば【A】の人材ばかりで 『現地現物』の出来る【B】の人材がいなかった為と理解出来ます。
タカタの倒産も同様で,ワンマン経営だったと聞いていますが,真因追求し,市場の動きを見極め,場合によってはクビを覚悟で社長を説得する【B】の人材がいなかった為であると言えます。
三菱のMRJの開発遅れも,開発現場で真摯「妙手」を追い求める【B】の人材の絶対量が不足しているためと聞いています。
そんな懸念を抱いていたときに見たのが,
中学生である藤井四段の目を見張る活躍でした!
将棋の世界は,抽象化されて独自のルールがあるモノの,一種の数学であり,正に【B】の世界です。この活躍に刺激されて,小中学生が挑戦し始めたと言います。大変嬉しいいことです。
卓球の世界でも同じく中学生の張本選手が世界の強豪を相手に大活躍をしている様子です。卓球は相手の動きを瞬時に読み,数手先の体勢の乱れを誘う知的スポーツで在ると聞きました。
正に【B】の世界です。彼等が刺激になって【B】の人材が輩出することを願うばかりです。
最後に皆さまにお願いしたいこと・・・
小中学生の諸君は,
人間関係を気にせず,藤井四段や張本選手が頑張っているように, どんな分野でも良いから 『成りたい自分の未来像』を目指してがんばってください。
それが自分を変え,周りを変えていくし,社会が求める人材になって行けます。
何よりもその過程が,皆さんの 『充実した人生』そのものなのです。
現に会社に勤めていて,私の懸念に同感する皆様は,
Displayから離れて現場に行き,関わっている製品を手に取って先ずその質感を味わってください。
次に,Key-boardを叩いて出した現場への指示は,何処に出され,実際にはどんな作業が始まり,どう終わり,終わったらどんな形でそれがSystemに入力されるのか, 『現地現物』で調べ,自社に中で御自分が何をやっているのか・・・を確認して下さい。
それが終わったら,このホームページに連載されている 『Jコスト改革の考え方』 シリーズをお読み下さい。読み終わると,あなたに 『生き甲斐,働き甲斐』を与えてくれる道が見えてくることでしょう。